眼球付属器

ocular adnexa  

眉毛,眼瞼,結膜,涙器,眼筋,眼窩が眼球付属器である.

D. 外 眼 筋  

図01

眼球には4本の直筋と2本の斜筋が付着し,眼球運動を行う.
これら 6本を外眼筋 extraocular muscles という.

図02

ただし,四直筋+斜筋+挙筋外眼筋との説明もある

四直筋の強膜付着(Tillaux螺旋

図03 図04

[右眼] 眼窩内での眼筋走行のようすは上のようである [左眼]

● 外眼筋の作用方向(図は CLINICAL NEUROSCIENCE 1995(10) より引用)

図05

眼球運動は,合成ベクトルで作用する.視軸と眼窩軸はそれぞれ角度があり,眼筋も眼球に斜めに付く.よって必ず回旋運動が加わる.水平方向であっても,例えば内転が内直筋のみの動作ではない.

般的には,例えば「内下方視は上斜筋が作用する」のであるが,この詳しい理解は 2年次以降に必要となる.

● 眼球運動
単眼性の運動と両眼性の運動とがある.

単眼の運動をduction ひき運動といい,①上下 pitch ,②水平 yaw ,③回旋 roll ,がある.

①眼球を上へ向ける運動が「上転supraduction」,下方へは「下転infraduction」である.座標(Fick座標系)では,水平軸(X)まわりの動きを指す.
②外への動きは「外転abduction」,内側へは「内転adduction」という.垂直軸(Z)まわりの動きである.
③前後軸(Y)まわりの動きを回旋 tortion という.実際のイメジは垂直線(ここではZ)が傾斜することになり,耳側に傾斜するときは「外方回旋」,鼻側に傾斜すれば「内方回旋」である.教科書によっては輪部12時が反時計周りになるか時計回りに動くか,と説明している. 図06

両眼(共同)運動はversion むき運動またはgaze 注視という.
たとえば右むき(右方視)では,右眼は「外転」し左眼は「内転」するような運動である.

また,両眼の「内転」または「外転」をvergence よせ運動という.
通常,内よせは輻湊 convergence といい,近見時に必要である.遠見時には開散 divergence(外よせ)により視軸を平行に戻す.
(これ以上の,平行を超えて開散させる状態は異常である.)

垂直軸と水平軸は Listing面にあり,それらと直行する前後軸を合わせて Fick座標系ということである.
眼球の動きは,実際は眼窩内で位置が動いている.例えば上転時には()前方へ,下転時には()後方へ移動  translation する.これらの「ゆらぎ」は実用上無視して差し支えないということで「球」として回転運動 rotation の仮想中心が,回旋点である.
照準線を元に実験的に計算された平均値は角膜頂点から 13.5 mm とされている.

・頭部を垂直にし水平正面・無限を見据えた状態では,視軸(Y)は平行で,左右眼の垂直軸(Z)は垂直(重力の方向)・平行で,左右眼を結ぶ角膜中心(あるいはX)は水平となる.すなわち primary position である.

・「上下転」あるいは「内外転」が secondary position である.これらは随意運動であるが,随意運動で回旋はできない.

・定義的には 注視線 が回旋点を通る.

外眼筋の運動方向と支配神経
運動方向 支配神経 付着距離
内直筋 内転 動眼神経 5 mm
下直筋 下転・外方回旋・内転 動眼神経 6 mm
上直筋 上転・内方回旋・内転 動眼神経 8 mm
下斜筋 上転・外方回旋・外転 動眼神経
上斜筋 下転・内方回旋・外転 滑車神経
外直筋 外転 外転神経 7 mm

● 支配神経

ⅰ)動眼神経()
ⅱ)滑車神経()
ⅲ)外転神経()

この 3 種の脳神経は,いずれも上眼窩裂を通って眼窩に入る.

図07 図08

筋はからだの各部を動かすために,同の骨の 2 点に張っていることはなく,必ずつの骨から起こって他の骨に付いている.
筋の両端の内で収縮のときに固定されているかまたは動きの少ない方を『起始 origin 』といい,他方を『付着 insertion(または停止)』という.
体幹に近い方の端すなわち近位端 proximal は起始,反対の遠位端 distal は付着,と決まっている.

確認

総腱輪 annulus tendineus communis(Zinn )

総腱輪 annular ligament of Zinn は眼窩骨膜の変形したもので,眼窩先端部 orbital apex に位置する.
外眼筋のうち四直筋と上斜筋は,総腱輪が起始部となる.
上眼瞼挙筋[動眼神経 oculomoter(上枝)支配]も総腱輪を起始部と(して,発生上も外眼筋  のうちの動眼神経支配筋  と共通)する.
眼球を包むように付着する四直筋(と,上斜筋・眼瞼挙筋)の形態から,筋円錐 muscle cone という.

総腱輪は視神経管と上眼窩裂に通じる.

E. 眼 窩  cavitas orbitalis / orbit / eye socket

眼窩 orbital cavity は,眼球と外眼筋,神経,血管,涙腺などを眼窩脂肪織のクッションで支持・固定・保護する骨性構造物で,容積は成人で 30 cc ほどである.
眼窩の最奥が先端部 apex である.主要な神経・血管を通し(下記),病理障害を発する場の

図09

Ⅰ) 眼窩骨壁

眼窩を模式化すると底を前方へ向けた,四角錐と見做すことができる.
眼窩壁は 7 種類の骨で構成される.
前頭骨,頬骨,篩骨,蝶形骨,涙骨,上顎骨,口蓋骨,である.

 上壁(天井):前頭骨
         → 頭蓋腔,前頭洞に接す
 外壁    :前頭骨・頬骨・蝶形骨
 眼窩底():頬骨・上顎骨・口蓋骨
         → 上顎洞に接す
 内壁    :前頭骨・涙骨・上顎骨・篩骨・蝶形骨
         → 鼻腔,篩骨洞,蝶形骨洞に接す
図10 図11
図12

上顎洞は下直筋と下斜筋,篩骨洞は内直筋,前頭洞は上直筋と滑車付近の上斜筋に隣接する.

Ⅱ) 眼窩軸と眼球軸

眼窩開口は外向きになっており,外壁は互いに 90 ° ほど開いている.鼻側内面(内壁)は左右でほぼ平行で,視軸は基本的に平行・正面むきである.眼窩軸はそれぞれ 23 ° ほどである.これにより左右の眼窩()は約 45 ° となる.眼筋も眼球に斜めに付く.

図13

付着角度と作用ベクトルの詳しい理解は 2 年次以降に必要となり,ここでは省略.

例えば,図は右眼の上から見た
 SO:上斜筋
 SR:上直筋
を示し,それぞれ,
決められた固有の角度で眼球に付着する.

図14

図15

Ⅲ) 神経・血管の通路

眼窩内と頭蓋内と交通する神経・血管が通過するのは,眼窩先端部の
a:視神経管,b:上眼窩裂,c:下眼窩裂,である.

  1. 視神経管 optic canal/視神経孔 optic foramen は,
    視神経・眼動脈を通す.

  2. 上眼窩裂 superior orbital fissure は,
    動眼神経・滑車神経・外転神経・
    叉神経第(眼神経)・交感神経・上眼静脈・下眼静脈を通す.
    ( 眼神経の枝が 前頭神経,鼻毛様神経,涙腺神経.

  3. 下眼窩裂 inferior orbital fissure は,
    叉神経第(上顎神経)(眼窩下神経)・下眼静脈を通す.

これらは個人差 variation が大きいと言われるようであるが・・・
図16
確認は各自が調査してみてください【第十一章】血管

Ⅳ) 眼窩内容

眼球,視神経・視神経鞘,眼窩脂肪組織,外眼筋・眼瞼挙筋,総腱輪.
涙腺,涙

Ⅴ) 眼球の保持

眼窩内外で,眼筋の作動,眼球や眼瞼の位置を適正に抑えている機構がある.

①テノン Tenon's capsule と制御靱帯 check ligament

眼球は,上強膜の外側を結合組織が包んでいる.テノン(眼球被膜)である.外眼筋付着部より前部では強膜と強固に結合し,円蓋部にも向かう.部は鞘状の外眼筋の筋膜に続き,部は眼窩骨の骨膜に続く制御靱帯となる.
鼻側(内側 medial )は内直筋(の筋膜)から内側眼瞼靱帯へつながり,涙骨から篩骨に付く.
耳側(外側 lateral )は外直筋から外側眼瞼靱帯へつづき,頬骨に付く.

このことから,眼球は眼窩内でハンモック状に吊られていることがわかる( suspensory ligament )

図17 図18

(実際のクッションは眼窩脂肪か )

図19

②上眼瞼挙筋と上横走靱帯

上眼瞼挙筋 levator は総腱輪から起こり,多数の腱膜 aponeurosis に分かれて瞼板の前面と眼輪筋まわりに付着する.
この腱膜の部は,内側 medial が滑車部に外側 lateral が涙腺部に付き,先端の腱膜を吊った形になっている.上横走靱帯 superior transverse ligament(Whitnall)である.両先端の腱膜は眼窩隔膜と共に内外側眼瞼靱帯へ付く.したがって上横走靱帯と眼窩隔膜とも連続した構造ではあるが,上横走靱帯は挙筋付属で作用方向を変える滑車 pulley機能とする記述が多いようである.
腱膜から分かれ,腱膜の後ろと円蓋部結膜の間を瞼板上縁に向かうのが上瞼板筋(Müller)である.上横走靱帯が起始部に相当し,宙ぶらりんにならないように固定する.部は円蓋部結膜に付く(Tenon の延長)

図20

Lockwood靱帯

下直筋と下斜筋の筋膜が合体して Tenon下部に続き,下円蓋から下瞼板に広がる筋膜が Lockwood靱帯である.外側は外側眼瞼靱帯につき,Whitnall靱帯と挙筋腱膜へ直結する線維もある.内側は内側眼瞼靱帯から制御靱帯や挙筋腱膜につく.
下斜筋の作用を補助し,下方視のときに下眼瞼をずらしている.

現在では,後方組織と組み合わせて suspensory ligament と解釈するのが般的のようである.

眼窩隔膜と内外側眼瞼靱帯

眼窩隔膜 orbital septum は眼窩縁と瞼板をつなぐ結合織のシトである.眼瞼を前葉・後葉に分ける.上眼瞼内では,眼輪筋の奥で上眼瞼挙筋の腱膜と体化している.
上下の眼窩隔膜が合流して内側および外側眼瞼靭帯となり,眼輪筋も付いて眼瞼を支持する.

図21

眼窩隔膜は眼窩内脂肪織がはみ出さないように蓋をしていることから,眼窩隔膜より深部が眼窩領域といえる.

(続きはこちら)

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視軸と照準線  【return

眼球の参照軸には, 注視線(fixation axis), 視軸(visual axis), 照準線(line of sight), 光軸(optic axis), 瞳孔中心線(papillary axis)などがある( 眼光学で)
解剖学的には般に,眼球の前極と後極を通る軸すなわち眼軸(geometrical axis)が使われる.
眼球の光学系は角膜と水晶体の2つのレンズ系の組み合わせ,ということであるが,角膜や水晶体のレンズ系は共通な光軸(共軸光学系coaxial optical systemcentered optical system )ではなく, また,さらに複雑な要素として水晶体は屈折率分布型レンズ(光や音波が水晶体内を直進する保証はない・・・のだそうだ)ということで,眼の光軸は厳密に規定できないとのことである.


2010