血 管神 経

vascular systemnervous system

1)血管系
  ・動脈系
  ・静脈系
  ・血液網膜関門
2)神経系

血管のこと

図01

§.動脈系

眼科領域に関わるのは,内頸動脈から分かれた眼動脈 ophthalmic artery とその分枝がほぼ中心であるが,顔面すなわち眼瞼涙嚢部には外頸動脈の枝との吻合がみられる.

A.心臓からの経路はおよそ次の如くである.

1)大動脈 aorta
動脈系の基本となる大動脈は左心室から起こり,僅かに上行し(上行大動脈)てから後方に曲がって脊柱の左側に至る(大動脈弓).ついで脊柱の前左側に沿って下がり,下行大動脈となる.
 ●上行大動脈 ascending aorta:左心室の大動脈口から始まり腕頭動脈を出すまでの短い部分.
 ●大動脈弓 aortic arch:上行大動脈に続く部分で,下行大動脈に接続する.縦隔上部に含まれる大動脈.
 ●枝として:
 ①腕頭動脈 brachiocephalic trunk : ()総頸動脈と鎖骨下動脈の枝を出す.
 ②左総頸動脈 left common carotid artery
 ③左鎖骨下動脈 left subclavian artery
 ④椎骨動脈 vertebral artery

図02

2)総頸動脈 common carotid artery
右総頸動脈は腕頭動脈から,左総頸動脈は大動脈弓から直接出る.頸動脈角にて外頸動脈と内頸動脈の2枝に分かれる.

3)椎骨動脈 vertebral artery
鎖骨下動脈から出る.椎骨の横突孔を通って上行し大後頭孔から頭蓋内に入る.延髄と橋の移行部で左右が合流し脳底動脈となり,脳幹と小脳を栄養する.その先は,後大脳動脈として後頭葉に分布する.後交通動脈によって中大脳動脈と連絡する.

4)内頸動脈 internal carotid artery
総頸動脈から分かれて上行し,頭蓋底の頸動脈管を通って頭蓋腔内に入る.海綿静脈洞に包まれながら前進し,U状にカーブしながら脳硬膜を貫いて主として中大脳動脈へ続く.
眼動脈・前大脳動脈を分岐する.眼動脈は視神経管に向かう.左右の前大脳動脈は前交通動脈によって連絡する.

5)Willis動脈輪
左右の内頸動脈と脳底動脈は前後の交通動脈によって互いに連絡する.Willis動脈輪である.

左前大脳動脈 ↔ 前交通動脈 ↔ 右前大脳動脈
 
中大脳動脈 ← 内頸動脈 内頸動脈 → 中大脳動脈
 
後交通動脈  ↔  脳底動脈  ↔  後交通動脈
図03 図04
頸動脈造影について

図05

交通枝の存在は,循環障害を起きにくくしている.眼動脈も部が顔面皮膚に向かい上顎動脈(外頸動脈系)とのかすかな連絡がある.(両側の)内頸動脈が詰まっても脳底動脈でカバーできたり,眼動脈経由で外頸動脈が血流を確保する.ただし,脳実質への分布(穿通枝)は終動脈であり,これによる循環障害が「脳梗塞」となる.視放線領域に潅流する血管は,中大脳動脈・後大脳動脈である.

方で,Willis動脈輪は脳動脈瘤の好発部位で,内頸動脈,前交通動脈,中大脳動脈,・・の順となっている.
例えば,内頸動脈-後交通動脈分岐部(IC-PC)動脈瘤では動眼神経を圧迫することが多く,末梢性神経障害をきたすことになる.

6)内頸動脈と視神経視交叉の位置関係

7)眼動脈 ophthalmic artery
視神経とともに 視神経管 を通って眼窩に入り,眼窩の内容(眼球・涙腺など)を栄養する.

B.眼動脈の枝

眼球の動脈系は眼動脈による.次の枝がある.

図07 図06

1)網膜中心動脈 central retinal artery
網膜中心動脈CRAは眼球のうしろから約1520 mm 離れたところで,視神経に外側から入り込む.視神経乳頭面まで経路の途中では大きな分枝はなく,視神経内を栄養する毛細血管の枝を出す.乳頭部ではほぼ上下に分岐し,さらに耳側鼻側へ分岐しつつ網膜の表面に分布し,視神経乳頭表面を含む網膜内層(脳層)を栄養する.

【第五章】網膜血管

2)後毛様()動脈PCAs
眼球後部の視神経周囲で鼻側群と耳側群に分かれて強膜を貫通し,ぶどう膜へ分布する.20本ほどあるらしい.

図08

①短後毛様動脈 short posterior ciliary arteries
短後毛様動脈は脈絡膜に分布し,網膜外層(神経上皮層視細胞+網膜色素上皮細胞)を栄養する.
乳頭周囲では強膜内に動脈輪(Zinn-Haller)を形成し,篩状板とその前部を栄養する.

②長後毛様動脈 long posterior ciliary arteries
眼球後部で眼内へ入った後ほぼ 39時の位置で赤道を越えて前進する 2本は,毛様体・虹彩へ分布する.

3)前毛様()動脈ACAs
前毛様()動脈は4直筋に沿う.途中で前結膜血管を分岐し,筋付着部から眼内へ入る.
外直筋部は1本,その他の直筋には各2本ずつ計7本あり,毛様体・虹彩へ分布する.

【第三章】ぶどう膜血管

4)その他
涙腺動脈,前篩骨動脈,眼窩上動脈,内外の眼瞼動脈,鼻背動脈,前頭動脈,眼角動脈 ・・・

C.外頸動脈

眼瞼・眼周囲で外頸動脈系は大体が眼動脈の終枝と合流している(吻合という)

図09

§.静脈系

図10

心臓への経路はおよそ次の如くである.

A.眼球の静脈系は基本的に2系統である.
網膜の環流は網膜中心静脈で,ぶどう膜の環流は渦静脈で行う.

1)網膜中心静脈 central retinal vein
網膜の血流を受ける.乳頭部で1本に集合し,網膜中心動脈と並走して篩板を通過する.視神経内での並走部は,外膜を共有することは網膜面での形態と同じである.視神経を出る部は網膜中心動脈とは違う場所らしい
視神経を出ると,上眼静脈に合流する.

2)渦静脈かじょうみゃく vortex veins/venae vortecosae
ぶどう膜の血流は渦静脈に集合する.模式的には各象限ごとに1本計4本あり,赤道部で強膜から眼外へ出る.上半象限からの渦静脈は上眼静脈に,下の象限からの渦静脈は下眼静脈に合流する.

3)前毛様体静脈 anterior ciliary veins
輪部では複雑な静脈系の吻合がある.強膜血管叢 scleral plexus である.房水 aqueous vein を排水するためである.眼静脈へ合流する.

4)眼静脈 ophthalmic vein

上眼静脈 vena ophthalmica superior
上眼静脈 superior ophthalmic vein は眼動脈に沿って走る.すなわち内眼角でおこり,この部で顔面静脈や眼角静脈と吻合し,眼窩上壁を内側に沿って走行する.上強膜静脈 episcleral vein を含め,おおよそ眼動脈の分布域からの静脈を集める.上眼窩裂を通って頭蓋腔に入り海綿静脈洞に注ぐ.
②下眼静脈 vena ophthalmica inferior
下眼静脈 inferior ophthalmic vein は眼窩底の近傍で細い静脈が集まってできる.大部分が眼窩底で下直筋の上面を後方に走行し,上眼静脈に合流したのち海綿静脈洞へ入るか,あるいは上眼窩裂から海綿静脈洞へ直接に接続する.下眼静脈は前方では顔面静脈と,下方では下眼窩裂を通過し翼突筋静脈叢と交通している.

B.そのた

● 眼角静脈 angular vein (vena angularis )
 眼角での顔面静脈起始に相当し,滑車上静脈と眼窩上静脈が合流してつくられ内頸静脈へ注ぐ(海綿静脈洞は通らない)部は鼻前頭静脈を介して上眼静脈とつながる(これにより顔面(特に内眼角や鼻背)の炎症が眼角静脈経由で眼窩から脳へと移り,髄膜炎などを起こすことがある)

C.海綿静脈洞 cavernous sinus

硬膜静脈洞.脳の静脈血は大脳の静脈に集められ,各所の硬膜静脈洞からS状静脈洞を介して内頸静脈に注ぐ.海綿静脈洞は蝶形骨体の両側にある.左右の海綿静脈洞は海綿間静脈洞で交通する.上下錐体静脈洞を経て内頸静脈に続く.

図11 図12

内部に内頸動脈のほか,動眼神経,滑車神経,1眼神経,2上顎神経,外転神経を入れる.

図13 図14

D.心臓まで

1)内頸静脈 internal jugular vein
S状静脈洞の続きとして頸静脈孔に始まり、胸鎖関節の後方で鎖骨下静脈と合し腕頭静脈となる.
ほとんど全ての頭頸部の血液を集める静脈で,総頸動脈の潅流領域にほぼ相当する.
(内頸動脈外頸動脈 内頸静脈)

2)腕頭静脈 brachiocephalic vein
内頸静脈と鎖骨下静脈が合して腕頭静脈ができる.
左右の腕頭静脈が合して上大静脈 superior vena cava となり右心房に注ぐ.

§.血液‐眼 関門  blood-ocular barrier

図15

神経の恒常性を保つため,血中の物質が拡散するのを制限し,神経を保護する柵機能.血液から周囲組織への拡散を阻止しているバリアが内方透過性機能であり,周囲組織から血液中に吸収する機構が外方透過性機能である.後者は active transport により前者の 30倍とのことである.眼内の関門(barrier)には,
 血液房水関門 blood-aqueous barrier
 血液網膜関門 blood-retinal barrier とがある.

1)血液房水関門 blood-aqueous barrier

図16

血液房水関門(または血液房水柵)は毛様体無色素上皮細胞と虹彩血管内皮細胞があたる.

①毛様体の血管は有窓血管であり,血漿成分は毛様体実質中に出ている.無色素上皮細胞の tight junction が barrier機能を果たすため,房水中の血漿タンパクはアルブミンが主で,かつ血中の 1200~300 ほどである.
アスコルビン酸,部の電解質イオンは能動輸送が行なわれている.

②虹彩の血管には窓構造(fenestration)がなく,内皮細胞には tight junction がみられることから,ここに関門 barrier機能があることがわかる.

2)血液網膜関門 blood-retinal barrier

図17

網膜への血管系は 2 系統‥‥‥網膜循環と脈絡膜循環‥であることから,おのおのに関門がある.
血液網膜関門(または血液網膜柵)は網膜血管内皮細胞と網膜色素上皮細胞があたる.

①内血液網膜関門:網膜毛細血管内皮細胞の柵機能である.Müller細胞や周皮細胞も barrier の役に加わる.

②外血液網膜関門:網膜色素上皮細胞の柵機能のこと.Bruch膜は barrier の構成要素ではあるが,最終的には色素上皮細胞の tight junction でブロックする.
脈絡毛細血管板は有窓血管であり,大きな血漿タンパク分子でも脈絡膜内を自由に移動しているとしてよい.

3) tight junction

関門は,細胞同士の細胞接着装置 tight junction によって,主に構造的・物理的に物質通過を抑えている.
物質の通過は分子量の大きさで制限され,脂質溶解性に比例する.電荷イオンも通過しにくい.
水,O2CO2 は自由に移行するが,NaK,ブドウ糖(glucose)は移行速度が遅い.ClCa2+,高分子のタンパクや脂質,リン酸などは通過しない.
(なお,アミノ酸やグルコースは血液脳関門に存在する輸送担体によって輸送される.血液関門は,電気的なバリアや代謝関門,トランスポーターや代謝酵素など異物解毒機構によって構成される,よりダイナミックな障壁である.)

ちなみに,全身的には血液脳関門 blood-brain barrier の方が有名である.

・血液脳関門 blood-brain barrier は,毛細血管内皮細胞と星状膠細胞の機能による.すなわち,脳や脊髄の毛細血管には細胞間の閉鎖帯があり,さらに外側を星状細胞の終足(突起)が巻き付き,毛細血管外にでる物質を制限している.網膜では毛細血管内皮細胞と同等である.
さらに,脳細動脈では周囲に 間藤まとう細胞 (FGP細胞.fluorescent granular perithelial cells:蛍光性顆粒周囲細胞)というマクロファージ系細胞のネットワークがあり,ブロックをしている.また,間藤細胞は脳の異物処理をも行っている.

・血液髄液関門 blood-cerebrospinal fluid(CSF)barrier は,脈絡叢上衣細胞の機能による.すなわち,脈絡叢の毛細血管は有窓性毛細血管であるため,低分子量の物質は選択性なく毛細血管内皮を通りぬける.ところが脈絡叢上衣細胞 epithelium of choroid plexus には閉鎖帯があり物質輸送を阻止し,上衣細胞の細胞質を通りぬける物質のみが脳脊髄液に出されることになる.網膜に対する関門機構の点では,脈絡膜と網膜色素上皮との関係になぞらえることが出来る.脈絡叢上衣細胞は脳脊髄液を分泌するが,この点では房水に類似する.

●そのたの血液臓器関門
血液空気関門blood air barrier,血液胸腺関門,血液胆汁関門blood biliary barrier,血液尿関門blood urine barrier,血液精巣関門blood testis barrier,血液胎盤関門あるいは血液胎仔関門blood fetal barrier,etc

フルオレセイン-Na
血液網膜関門の臨床的機能評価にはフルオレセイン-Naを用いる,いわゆる螢光眼底造影検査がある.眼底の血管造影つまりフルオレセイン溶液を造影剤に用い,静脈注射されたフルオレセインの特性である螢光を観察する仕掛けである.正常ではフルオレセインは網膜血管外へ,あるいは脈絡膜から網膜側へ網膜色素上皮をぬけて移動することはない(脈絡膜実質内では自由に移動しているとされる)
病的状態のとき,網膜血管からのあるいは網膜色素上皮からの漏出として観察される.これが血液網膜関門の破綻として理解されている透過性亢進の所見である.
なお,フルオレセインは生体不活性で無害,腎から尿中へ排泄される.

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神経のこと

全身の神経は大きく中枢神経と末梢神経に分ける.中枢神経は脳・延髄・脊髄をひとまとまりとしたもので,末梢神経はそこから出ていくものである.脳神経・脊髄神経はおおよそ末梢神経である.なお希突起膠細胞を髄鞘 myelin とする視神経は中枢神経に属し再生しない.Schwann細胞を髄鞘とする末梢神経は再生可能となっている.

§.脳神経系

脳神経は頭蓋から出てくる神経で,由来や働きによって 3 群に分ける.
1群は,頭にだけある特殊な感覚器の神経で,嗅覚を伝える嗅神経 (),視覚を伝える視神経 (),聴覚と平衡覚を伝える内耳神経 ()がこれにあたる.
2群は,魚の鰓弓の神経にあたるもので,ごく初期のヒト胎児の頸の横に魚の鰓に似た切れ込みと膨らみがみえる.この膨らみを鰓弓といい,脊椎動物が魚から四足動物に進化した名残りと考えられる.この鰓弓の神経にあたるのが,叉神経 (),顔面神経 (),舌咽神経 (),迷走神経 ()である.副神経 ()部も鰓弓神経に含まれる.
3群は,脊髄神経にあたるもので,残りの脳神経がこれに含まれる.外眼筋を支配する動眼神経 (),滑車神経 (),外転神経 ()と,舌の筋を支配する舌下神経 ()である.

次の機能を単独あるいは組み合わせて持つ.
 ●運動性成分
  ①体性運動性:体節から発達した筋肉を動かす
  ②鰓運動性 :鰓弓から発達した筋肉を動かす
  ③内臓運動性:内分泌腺や内臓平滑筋を動かす
 ●感覚性成分
  ①内臓感覚性:内臓の感覚
  ②一般知覚性:触覚・温痛覚・・などの知覚
  ③特殊感覚性:嗅覚・視覚・味覚・聴覚・平衡感覚

1.視神経  [Ⅱ] optic nerve

視神経とは,・・・・
 ・『視覚を伝える第脳神経』,というバクゼンとした表現のほか
 ・巨視解剖 macroanatony的には『眼球のうしろから視交叉まで』,とか
 ・組織解剖 microanatomy的には『神経節細胞の軸索突起(神経線維)で外側膝状体まで』, ・・・
というような説明ができる.

視覚線維のほか,瞳孔線維,運動(空間定位)線維などを含んでいる.

図18 図19 図20

具体的には 【第九章】視神経・視覚路

2.動眼神経   [Ⅲ] oculomotor nerve

動眼神経は外眼筋に分布する神経の内で最も大きいもので,体性運動性線維と内蔵運動性線維を含む.
体性運動性線維は上眼瞼挙筋,上直筋,内直筋,下直筋,下斜筋を支配する.
内蔵運動性線維(副交感神経線維)は,虹彩・毛様体に分布する.

a)体性遠心性線維の起始核は上丘の高さの中脳被蓋の背側,内側縦束MLFの上で中脳水道のすぐ前方にあり,第耳前体節に由来する眼筋を支配する.各筋を支配する亜核の複合体と考えられている.内直筋・上直筋・下直筋・下斜筋を支配するのが動眼神経主核で,背側にある動眼神経副核(Edinger-Westphal)に始まる内臓性遠心性線維(副交感性線維)は,内眼筋を支配する.
各線維は合流して前方にのび,中脳において赤核の内側縁を通り大脳脚の内側部の脚間窩(内側溝),中脳の下端で脳幹を出る.後交連動脈の下方を走りトルコ鞍の後床突起のところまで達し,海綿静脈洞にはいる.

海綿静脈洞で若干の交感神経線維が加わり,上眼窩裂・総腱輪の中を通って眼窩へ入る.
b)上枝と下枝に分かれる.
上枝は視神経と眼動脈の外側を走り上直筋上眼瞼挙筋に分布する.
下枝は上枝よりも太く,内直筋下直筋下斜筋に分布する.
c)下枝からの副交感節前線維が毛様体神経節に入る.ここからの節後線維は短毛様体神経 short ciliary nerves として眼球内に入り,毛様体筋(95%)と瞳孔括約筋(5%)を支配する. 図21

次動眼神経核
動眼神経核のごく近傍にあるつの神経核すなわち,後交連核 nucleus of posterior commissure ,カハル間質核 interstitial nucleus of Cajal ,ダークシュビッチ Darkschewitsch 核,の総称である.さらに遠くにある,内側縦束吻側間質核 rostral interstitial nucleus of medial longitudinal fasciculus (riMLF)を含めることがある.
これらの核から出る線維は後交連を通って正中線で交叉し,動眼神経核・滑車神経核・前庭神経内側核などとシナプス結合する.大脳皮質(視覚野,前頭眼野)や上丘から視覚入力を受け,水平及び垂直方向の眼球運動に関与しているようである.
最近では垂直眼球運動中枢として,特に riMLF が注目されている.

★臨床的側面
上直筋は対側動眼神経核からの交叉性支配を,内直筋・下直筋・下斜筋と副交感線維は同側支配を受ける.
上眼瞼挙筋は中央尾状核による両側支配となる.

図22

3.滑車神経   [Ⅳ] trochlear nerve

滑車神経は上斜筋を支配する.

耳前体節由来の眼筋を支配する神経で,体性運動性線維のみを含む.
滑車神経核は下丘の最尾側端の高さの中脳橋移行部,内側縦束MLFの背側,中脳水道のすぐ腹側にある.
その軸索は蓋板の背側に向かい,中脳水道の背側(前髄帆)で交叉(滑車神経交叉 decussation of trochlear nerve )してから下丘の直後で上髄帆の外側縁から出る.脳幹背側面から出る唯の神経で,最も細少でもあり,頭蓋内走行が長い.脳幹を出た線維は大脳脚(中脳橋移行部)を迂回し外側方に走り,海綿静脈洞に入り若干の交感神経性線維が加わる.
上眼窩裂から上眼瞼挙筋の起始部の上で眼窩に入り,内側方向に進み上斜筋に内側から分布する. 図23

★臨床的側面
上斜筋は対側滑車神経核からの交叉性支配を受ける.

4.叉神経   [Ⅴ] trigeminal nerve

叉神経第(眼神経)で角膜・結膜・上眼瞼の知覚を,叉神経第(上顎神経)で下眼瞼の知覚を伝える.

脳神経中最大のもので,第鰓弓由来の神経である.
眼球のほか,頭部および顔面の大部分の皮膚と,鼻腔・口腔の粘膜,脳硬膜などからの知覚線維(般体性求心性)が中心になっている.そのほか,深頭筋・咀嚼筋・顎舌骨筋・顎腹筋前腹への運動線維(特殊体性遠心性)を含む.

叉神経核は橋の中央で菱脳中にある.神経線維は知覚根・運動根・中間根で形成され,橋の外側中央から出る.知覚根は側頭骨錐体部上で叉神経節(半月神経節 semilunar ganglion)を作る.
ここから ①眼神経(V1),②上顎神経(V2),③下顎神経(V3),の 3 枝に分かれる.

)眼神経:叉神経第枝.
眼球(結膜,角膜,強膜,ぶどう膜)と眼筋・眼窩内・前頭部・鼻腔の部の知覚に関与する(結膜・強角膜は体性感覚の痛覚,ぶどう膜は内臓痛覚,眼筋は深部感覚).海綿静脈洞を通り,上眼窩裂で次の支流神経が合流する.
・前頭神経:前頭部・結膜・上眼瞼などの知覚を受ける(眼窩上神経と滑車上神経が合流したもの)
・涙腺神経:涙腺・外眼角付近の結膜・上眼瞼などの知覚を受ける.顔面神経からの副交感神経が加わり涙腺に分布する(分泌神経)
・鼻毛様体神経:
  ⅰ)毛様体神経節と連絡し,分岐した短毛様体神経が眼球内へ入り脈絡膜の知覚を受ける.
    知覚枝は毛様体神経節を通過するだけ(シナプスは無い)
    動眼神経からの副交感神経線維を含む.
  ⅱ)長毛様体神経が分岐し,長後毛様動脈に沿って角膜をふくむ前眼部に分布し知覚を受ける.
    瞳孔散大筋への交感神経線維を含む.
  ⅲ)そのた

)上顎神経:叉神経第枝.
正円孔から頭蓋外へ出る(枝下顎神経が出るのは卵円孔)
・眼窩下神経.下眼窩裂を通り,下眼瞼そのたに分布.
・頬骨神経.涙腺神経に交通枝があり顔面神経経由の副交感線維が通る.

★臨床的側面
右図のように,分布の境界が明確なのは顔面正面である.
角膜反射は,第枝  顔面神経により両側性に眼輪筋が収縮する(瞬目反射)

図24 図25

5.外転神経   [Ⅵ] abducent nerve

外転神経は外直筋を支配する.

耳前体節由来の眼筋を支配する神経で純粋な体性運動神経である.
外転神経核は橋・顔面神経丘・第四脳室底の深部にある.神経核の軸索は前方に伸び,錐体の少し外側で橋の下端,橋と延髄の境界部で細かい神経束として脳幹を出る.橋と斜台の間のくも膜下腔内を長く走り斜台の中央の高さで硬膜を抜け,海綿静脈洞の中へ走り,そこでは内頸動脈の外側,叉神経節(~第枝眼神経)の内側に位置する.
海綿静脈洞の中では,内頸動脈の交感神経叢からの何本かの線維が加わる.外転神経路は,脳神経中もっとも長い.
上眼窩裂・総腱輪の中を通って眼窩に入り,外直筋に内側から分布する.

★臨床的側面
外転神経核の内側には内側縦束が,腹側には傍正中部橋網様体(PPRF)がある. 外直筋は同側外転神経核からの同側支配を受ける.
外転神経核は同側の運動ニューロンだけでなく,対側動眼神経核の内直筋副核に連絡する核間ニューロンを含む.これにより,神経核障害では同側への注視麻痺が起こる.

6.顔面神経   [Ⅶ] facial nerve

顔面神経は眼輪筋を中心に表情筋の運動を支配する.
副交感神経線維は涙腺に分布する.

顔面神経は 4 種類の成分を抱えた複雑な第鰓弓を支配する混合神経で,①外耳皮膚の感覚,②味覚の部,③顔面筋の部,④分泌腺,の成分がある.顔面神経は,特殊内臓遠心性(鰓運動性)線維から成る主部(狭義の顔面神経)と,副交感神経線維と感覚性(味覚)線維とからなる小部すなわち中間神経が区別される.

a)顔面神経核(運動核、主核)
顔面神経核は橋‐延髄移行部(第四脳室底,橋網様体内側部で上オリーブ核のすぐ背側方)に位置する.顔面神経核を出た線維はまず第四脳室底に向かい,次いで外転神経核のまわりをまわり(顔面神経内膝 internal genu )橋の下縁で脳幹から現れる.次いで顔面神経と中間神経は内耳道 internal auditory meatus に入り,側頭骨顔面神経管 facial canal を通り,茎乳突孔 stylomastoid foramen を出る.
 ⅰ)顔面神経運動核は眼輪筋,前頭筋,皺眉筋などを支配する.

b)中間神経
中間神経の構成要素は,副交感根と感覚根である.
 ⅰ)中間神経の遠心性線維
遠心性線維は上唾液核(あるいは涙腺核.延髄網様体吻側レベルの外側部に存在する境界不鮮明な細胞集団)から起こる.これらの副交感性線維には顎下神経節を通るもの(唾液腺に向かう)と翼口蓋神経節を通るもの(涙腺に向かう)がある.
  中間神経  大錐体神経  翼口蓋神経節(シナプス結合)  涙腺神経(叉神経) 涙腺
  (翼口蓋神経節から出る節後線維は血管運動神経と分泌神経で,腺の分泌を促進する.
 ⅱ)中間神経の求心性線維
求心性線維の細胞体は膝神経節にあり,般知覚性線維と特殊感覚性線維がある.
外耳の知覚と味覚に関係する.(舌の般知覚はV3下顎神経による)

★臨床的側面
①顔の上半分の筋(眼の周り)を支配する顔面神経核の上半部は,大脳皮質から両側性に支配されている.
下部表情筋(口の周り)は対側性の支配となる.

②瞬目反射
眼輪筋の収縮反射.
視神経を介する光刺激,叉神経V1を介する角膜刺激,聴神経を介する音刺激などで反応する.

7.毛様体神経節    ciliary ganglion

毛様体神経節は眼動脈の外側方で,視神経と外直筋のあいだに存在する.
主役の副交感神経節前線維は Edinger-Westphalから起こり,動眼神経の下斜筋への枝と緒に走る.
交感神経は第12胸髄に発し,上顎神経節でニューロンを代え節後線維は内頸動脈壁の神経叢を通り毛様体神経節に達する.
 
1)毛様体神経節短根
毛様体神経節でシナプスする副交感神経線維で,動眼神経由来の成分.短毛様体神経として眼内へ入り,瞳孔括約筋 5%と毛様体筋 95%を支配する.この神経によって縮瞳と調節が起こる.
2)毛様体神経節中根
毛様体神経節をシナプス結合せずに通過する交感神経節後線維は,長毛様体神経と部は短毛様体神経に加わり眼球に達する.瞳孔散大筋支配のほか血管運動神経線維を含む.
3)毛様体神経節長根
角膜・虹彩・脈絡膜などからの知覚線維.
これらは長毛様体神経から毛様体神経節を通過して鼻毛様体神経に加わる.これは叉神経第枝・眼神経へつながる.

神経節からは上記の各種の線維(中心は副交感線維)を含む短毛様体神経(には種々の線維が含まれている)が46本(か,もうちょっと ),長毛様体神経が2本出て,ぶどう膜へ分布する.

図26
図27 図28

§.自律神経系

図29

意識的・随意的な制御を受けない,生体の恒常性の維持を行う.植物神経系あるいは不随意神経系ともいう.⇔ 体性神経系
中枢から出た軸索は効果器に至る間にシナプスを形成し線維を替える.シナプス部分が神経節となる.
中枢神経系内から神経節までが節前ニューロン,神経節内に細胞体があるものが節後ニューロンで,それらの軸索がそれぞれ節前線維,節後線維である.

交感神経系 sympathetic nerve system

交感神経系を制御する高次中枢は視床下部である.橋‐腰髄に発する.神経幹によって上下に連絡する.

眼科領域の支配部位
頸膨大部の尾側レベルC7-T1(または胸髄上部C8-T2)の Budge毛様脊髄中枢交感神経細胞から起こる節前線維は交感神経管を上行して
・星状神経節 (頸胸神経節下頸神経節と第胸神経節が癒合したもので第七頸椎の高さにある それぞれが独立していることもある)
・中頸神経節 (第六頸椎の高さにある小さい神経節で 無いこともある)
・上頸神経節 superior cervical ganglion(頸椎(軸椎)と第頸椎の間の高さにある)に達し,内頸動脈経由で海綿静脈洞に入り,眼動脈と共に視神経管から眼窩内へ入る.
(叉神経第枝あるいは鼻毛様体神経と共に上眼窩裂を通る」というのは,ヒトでははっきりしないらしい)

眼窩内では毛様体神経節へ入り(線維を換えずに),長毛様体神経 long ciliary nerves で眼球へ入る経路が中心である.虹彩(瞳孔散大筋)・毛様体筋,他のぶどう膜血管へ分布する.短毛様体神経として虹彩と毛様体に分布する線維もある.

部は眼動脈経由で眼瞼(上下の瞼板筋)・涙腺に分布する.

図30

神経伝達物質
節前線維と節後線維の間はアセチルコリンを放出しニコチン受容体に作用する.
節後線維と効果器の間は原則としてノルアドレナリンを,汗腺,体幹の血管,立毛筋ではアセチルコリンを分泌する.アドレナリン作動性線維(adrenergic fiber)はアドレナリン受容体に結合する.α受容体とβ受容体と呼ぶ 2つのサブタイプがあり,さらにα1α2β1β2に分類されている.

α1作用血管平滑筋の収縮,瞳孔散大筋の収縮.
α2作用交感神経シグナル伝達抑制(ノルアドレナリン放出の抑制),房水産生抑制,房水流出促進
β1作用心機能亢進,房水産生促進
β2作用平滑筋(血管・気管支)の弛緩・拡張,遠方視の毛様体筋弛緩
β3

作用
瞳孔散大筋・・・
α1作用収縮(散瞳)
毛様体縦走筋
  (Brücke)
・・・
β2作用収縮
 (毛様体は円周が大きくなる すなわち遠方視に作用
瞼板筋
  (Müller)
・・・
α1作用収縮
 (瞼裂開大 上下瞼板筋とも)
ぶどう膜血管 ・・・
α1作用収縮
 (高血圧時の脈絡膜の負荷を減らす
β2作用拡張
涙 腺 ・・・
α1作用分泌抑制
結膜血管 ・・・
α1作用血管収縮
房 水 ・・・
α1作用産生促進,
α2作用産生抑制,流出促進
 β 作用産生促進,流出促進

副交感神経系 parasympathetic nerve system

脳幹および仙髄に発する.脳幹からは次の各経路を経由する.

眼科領域の支配部位
1)動眼神経( Edinger-Westphal核から発進する線維)が主で,毛様体神経節でシナプスを形成し,短毛様体神経 short ciliary nerves として虹彩(瞳孔括約筋)と毛様体に分布する.
2)顔面神経経由の線維は,翼口蓋神経節 pterygopalatine ganglion → 叉神経枝 zygomatic nerve → 頬骨神経 zygomatico-temporal nerve → 交通枝 → 涙腺神経 lacrimal nerve から涙腺に分布する(右図 青線)
頸動脈叢 carotid plexus へつながる枝があり,短後毛様動脈 short posterior ciliary arteries と共にぶどう膜血管に分布する.
3)そのた,舌咽神経,迷走神経のなかに神経線維を交える.

神経伝達物質
伝達形式は,節前線維・節後線維ともにアセチルコリンを分泌する.節前線維はニコチン受容体に作用する.節後線維はムスカリン受容体(M1,M2,M3 ..)に結合する.コリン作動性線維(cholinergic fiber)である.

作用:
瞳孔括約筋 ・・・ 収縮(縮瞳)
瞳孔散大筋 ・・・ 弛緩(縮瞳)
毛様体輪状筋
  ( Müller )
・・・ 収縮
(毛様体は円周が小さくなる),すなわち近方視に作用
涙 腺 ・・・ 分泌促進
ぶどう膜血管 ・・・ 拡張
房 水 ・・・ 流出促進

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§.神経生理の概要

細胞膜電位とNa-Kポンプ
般に細胞膜を境として,細胞の内側は-(マイナス)に外側は+(プラス)となっている.分極している,という.
細胞の環境は内液の K,外液の NaCa2+Clの濃度勾配がある.Na-Kポンプとよばれる能動輸送系により,外に Na,内に Kのイオン勾配が維持されている.すなわち,Na濃度は 内<外,K濃度は 内>外,となっている.静止時には細胞膜のイオンチャネルの K透過性により Kが外に流出し,細胞膜をはさんで外部に対して細胞内がマイナス負になっている.これが膜電位である(負の分極が生じている,という).静止膜電位は,(細胞外をゼロ電位として)通常-70mV-60mVに保たれている.

●脱分極(depolarization):膜電位が上がること.膜電位を上げるのに影響するイオンは般に NaCa2+

●過分極(hyperpolarization):膜電位が下がること.膜電位を下げるのに影響するイオンは般に KCl

●活動電位(action potentials):脱分極の連の反応で,プラス方向に電位が変化することで,脱分極による細胞の興奮がある定の大きさ(閾値)を越えるとインパルス(スパイク電位)と呼ぶ活動電位が発生する.
細胞内電位が閾値を越えるとまず電位依存性Na チャネルが開き,Na イオンが流れこんで内向き電流が発生しその結果細胞が大きく脱分極する.膜を流れる電流によって零電位を越えて+側に振れる(オーバーシュート)のが活動電位である.Na チャネルはまもなく不活性化し,それと同時にK チャネルが開く.Kイオンの濃度は細胞内の方が高いため,Kイオンが細胞外に流出すると外向き電流が生じる.つまりこの外向き電流はNa の内向き電流を打ち消して膜電位を平衡電位に引き戻す.
ただし,網膜の神経については緩電位によって信号の伝達処理が行われている.活動電位が発生するのは神経節細胞である.

●緩電位(graded potentials):インパルス(スパイク電位)によらない伝達.細胞膜の電位変化のこと.

神経細胞(ニューロン neuron ノイロン)神経系を構成する基本単位.

図31

1個の細胞体 cell body とそこからのびる多数の樹状突起 dendrites ,さらに1本の長い軸索 axon から構成されている.軸索により他のニューロンへ情報を発信し,樹状突起・細胞体には他のニューロン軸索からの信号をうける接合部がある.シナプスである.1つのニューロンは数百から数千にのぼるシナプスを受け,数多く集まって神経系を形作っており,複雑な回路網を形成している.

●軸索(axon)信号の出力線.
細胞骨格があり細胞質を軸索の先端まで輸送している(軸索流).軸索流が止まると神経は機能しない.

●シナプス(synapse):軸索の終端で他のニューロンの細胞体や樹状突起に接する部分である.シナプスでは受容器電位とシナプス電位が関与する.
軸索終端には神経伝達物質を含んだ小胞が存在し、インパルスが到達するとこれらの小胞が細胞膜と融合して、シナプス間隙に神経伝達物質を放出する。その神経伝達物質は後シナプス膜にある受容体に捕らえられ,性質によりニューロンの膜電位を浅く(脱分極:ゼロに近づける)したり,深く(過分極)したりする.
シナプスには脱分極をさせる興奮性シナプス,過分極させるような抑制性シナプス,その他に興奮性シナプスの直前で抑制するシナプス前抑制の3つのタイプがある.ニューロンはこのような異なったタイプの信号を受け取るが,その応答としていずれか1つのシナプスの入力だけで活動する場合(論理和回路),2つ以上の興奮性入力が重なってはじめて活動する場合(論理積回路),抑制入力で活動する場合(否定回路)があり,論理演算の機能を持つ.

シナプスでは興奮は方向にしか伝えられない.従って全身の末梢の感覚を中枢方向へ伝える「求心性神経線維(感覚神経線維)」と中枢からの信号を末梢へ伝える「遠心性神経線維」とがある.遠心性神経線維のうち脊髄の前角から出て筋線維を支配するものが,運動神経線維である.

○髄鞘(myelin):軸索を取り巻く細胞.信号線を覆う絶縁体のイメージ.細胞の継ぎ目部分でのみ活動電位が跳びとびに発生し,これにより高速かつ無減衰で信号が伝導される.視神経線維(神経節細胞の軸索)は眼内で無髄であり眼外で有髄となる.
  中枢神経ではオリゴデンドログリア oligodendroglia(希突起膠細胞)で形成される.
  末梢神経系では Schwann シュワン細胞.

グリア細胞( glia 神経膠細胞)
視覚などの神経機能はない(活動電位は発しない)が,ネットワークを支えるもの.
Müller細胞網膜の主要グリア.核はおもに内顆粒層に存在.網膜の支柱的役割.
・星状膠細胞(アストロサイト astrocyteastroglia)網膜血管周囲に存在するグリア.アクアポリンを通して血管と神経間で水分子をコントロール,すなわち血液脳関門の部となる.炎症の際にはサイトカインやケモカインを分泌(過剰に活性化すると神経傷害性に作用する)
・希突起膠細胞(オリゴデンドログリア oligodendroglia)髄鞘を形成する.
・小膠細胞(microglia)中枢神経系の免疫担当細胞(貪食など)

神経伝達物質神経ホルモン
a.末梢神経系の化学伝達物質
 ① アセチルコリン自律神経節前線維末端(ニコチン作用),副交感神経節後線維末端(ムスカリン作用),運動神経末端(ニコチン作用)
 ② ノルアドレナリン交感神経節後線維末端
b.中枢神経系内の化学伝達物質
 ① カテコールアミン興奮性伝達物質
 ② アセチルコリン,セロトニン,ヒスタミン
 ③ グルタミン酸興奮性伝達物質
 ④ グリシン,γ‐アミノ酪酸(GABA)抑制性伝達物質
 ⑤ P物質(サブスタンスP)痛覚に関係

●カテコールアミン
アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミンの総称.化学的にはカテコール核にアミノ基が結合している形により,カテコールアミンというアルカロイドの種.生体アミンでアミノ酸の1種のL‐チロシンが神経細胞に取り込まれ,L‐ドーパ → ドーパミン → ノルアドレナリン(ノルエピネフリン) → アドレナリン(エピネフリン)と変化する.血液脳関門は通過しない.興奮性伝達物質で,端的にはノルアドレナリンは神経伝達物質として脳内と交感神経の末端から分泌され,副腎髄質でアドレナリンに変換・分泌され全身に作用する.
交感神経刺激薬はアドレナリン(α ,β刺激)の眼圧下降作用を,フェニレフリン(α1刺激)は散瞳・血管収縮作用を,ナファゾリン(α1刺激)は血管収縮作用を用いる.
交感神経遮断はαβの種々の抑制薬があり,眼では眼圧下降作用を期待している.

●アセチルコリン
興奮性伝達物質.運動神経の伝達物質であるほか,交感神経節前線維,副交感神経節前節後線維の伝達物質でもある.交感・副交感神経の節前線維と運動神経はニコチン受容体で,副交感神経節後線維はムスカリン受容体で作動する.アセチルコリンはコリンエステラーゼにより不活性化される.
・ムスカリン:毒キノコに含まれるアルカロイドの種.副交感刺激作用がある.ムスカリン性アセチルコリン受容体のagonist」と表現する.副交感神経作用物質のなかで最初に研究された.中毒時には解毒剤としてアトロピンを用いる.
・ニコチン:タバコの葉に含まれるアルカロイドの種.神経節刺激作用がある.ニコチン性アセチルコリン受容体のagonist」と表現する.agonistには体外物質というような意味がある.
・アルカロイド:窒素原子を含むアミノ基によりアルカリ性を示す,植物または動物由来の天然有機化合物の総称.生理活性物質というカテゴリーになる.塩基性でないものも存在する.

●副交感神経刺激薬をコリン作動薬という.アセチルコリン(ムスカリン様作用が中心)を投与すると眼では縮瞳し眼圧が低下する(流出抵抗).毛様体や結膜が充血する.臨床的にはピロカルピンやカルバコールが使われる.アセチルコリンに代わって筋受容器を直接刺激する.コリンエステラーゼ阻害薬は間接型副交感神経刺激となる.フィゾスチグミンやネオスチグミンなどである.
副交感神経遮断薬は抗コリン作用といい,アセチルコリンと競合しムスカリン受容体を遮断する.アトロピンやトロピカミドなどである.眼では散瞳し眼圧が上昇する(流出抵抗).流出抵抗増加について,実際には眼圧への影響はわずかであり,開放隅角緑内障での散瞳は禁忌事項ではない.散瞳によるリスクは狭隅角~閉塞隅角において問題となる.

神経筋接合部でコリン作動を遮断すると筋弛緩となる.抗コリン作用のである.

aquaporin(アクアポリン)
細胞膜にある水チャンネルを担う膜タンパク.アクアポリンファミリーは体内臓器に広く分布する.水以外にイオンチャンネル,細胞接着,細胞遊走などに関わる.
AQP0は先天白内障に,AQP5はSjögren症候群に伴うドライアイに関与する.
AQP4は脳内・視交叉付近・脊髄に分布し,AQP4に対する自己抗体はDavic型視神経脊髄炎の原因となっている.

 ヒトの脳は,大脳,間脳,中脳,橋,延髄,小脳で構成される.

⓪ 脳の表面 には脳軟膜が付き,脳くも膜脳硬膜で包まれる.

① 左右の大脳半球は脳梁などでつながれている.

図32 図33

図34

② 間脳 は,視床,視床下部,視床上部などの部位である.
視床は外部の世界を監視する役割,ということで末梢からの感覚情報や小脳・脳幹網様体で処理された情報を高次に伝える,視床枕・内側膝状体・外側膝状体がある.すべての感覚の伝導路は視床を通り,情報中継のほか統合処理にも関わる.

視床下部は体内部の状態を調整し恒常性を維持する役割,ということで下垂体を中心に内分泌の制御をし,自律神経系の最高中枢でもある。
視床上部には松果体がある.
視床や第脳室の病変は容易に中脳に影響し,上方注視麻痺や輻湊眼振,内斜視(偽性外転神経麻痺)を来たす.

下垂体を収納している蝶形骨部がトルコ鞍 sella turcica である.

③ 中脳 は,中脳水道より背側の中脳蓋・四丘体(上丘と下丘)の部位である.
図35 中脳水道より腹側を大脳脚(広義)cerebral peduncle といい,中脳被蓋 tegmentum と大脳脚(狭義)cerebral crus からなる.
動眼神経核と垂直性眼球運動の脳幹中枢の大部分が存在する.上丘の高さで動眼神経が,下丘の高さで滑車神経が出る.
中脳の障害(梗塞や出血)により,眼瞼下垂や瞳孔異常を含む動眼神経麻痺や,上方注視麻痺,下方注視麻痺をきたす.

④ 橋【きょう】pons は,中脳と延髄のあいだの橋渡しで,神経核や大脳・小脳・脊髄間をつなぐ神経伝導路が通過する.
内側縦束 medial longitudinal fasciculus(MLF)がある.
外転神経・叉神経が出る.延髄との移行部で顔面神経・聴神経が出る.

⑤ 脳幹網様体は被蓋の中心部で,明瞭な神経核や神経路以外の構造物で交錯する神経線維や神経細胞の集団でできている.そのうち神経細胞群だけを指すときにはこれをとくに網様核と呼ぶ.大脳皮質の前頭眼野・後頭眼野などからの入力をうけ,眼球運動神経核に伝える経路となる.

網様体は様々な形と大きさのニューロンを含むが,その集合状態は般に疎で,通過する神経線維群も大部分が散在性であり,密な線維束を形成していない.網様体領域のニューロンの樹状突起は束をなして網状に配列しており,種々の神経線維群がその間隙を走っている.網様体の周囲には,脳神経や中継核のほか,脳幹の長上行性線維系(例えば,内側毛帯)や長下行性線維系が走っている.

網様体は,尾方レベルでは脊髄の中間帯(intermediate zone)に連続し,上方へは視床の髄板内核(intralaminar nucleus)や腹側視床(subthalamus)の不確帯(zona incerta)などに連続する.

☆傍正中橋網様体 paramedian pontine reticular formation(PPRF)は外転神経核に近接しており,また中脳の動眼神経核のすぐそばで水平注視あるいは水平共同運動(むき運動)に関わる中間中枢. PPRF と動眼神経核・滑車神経核・外転神経核を連結するのがMLF .

☆赤核 nucleus ruber ,red nucleus
上丘の高さにある卵円形の赤みを帯びた神経核.本来は網様体に属する構造物であるが,周囲を線維で明瞭に区切られることや血管が豊富なため赤色を呈することより,独立した神経核として扱われる.
また,動眼神経が赤核の内側縁を通過することが臨床的に重要である. 図36

橋の障害は,
・側方注視麻痺,あるいはPPRF症候群病巣側への運動障害.輻湊は可能.
・核間麻痺,あるいはMLF症候群患側の内転障害.輻湊は可能.
・one-and-a-half 症候群患側の外転内転障害と対側眼の内転障害(MLF障害+PPRF障害)
・内斜視外転神経麻痺による
・外斜視橋性外斜視
・上方注視麻痺,下方注視麻痺,
など

⑥ 延髄
延髄の障害は,
Wallenberg症候群閉瞼時の眼球病側偏位(ocular lateropulsion)と病側の小脳失調,対側の感覚障害

⑦ 間脳,中脳,橋,延髄を合わせて脳幹という.

⑧ 前庭核
半規管からの平衡感覚情報を受ける.
出力は内側縦束MLFへ送られ,空間内で方向性を保つ.特に上行線維はⅢ,Ⅳ,Ⅵへ接続し,頭が動いている間に外眼筋を調整し対象物に視線を固定する.

⑨ 小脳
 ・・・・


2012 

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