飛蚊症 myodesopsiafloatersflying flies

光視症 photopsialighting flashes

飛蚊ひぶん

眼前に虫が飛ぶ,糸くずが漂う,髪の毛が下がる,水玉状のツブがみえるといった症状で,硝子体内の変化によるものである.飛蚊症を起こす硝子体の状態が硝子体混濁である.網膜自体の病変や,白内障角膜病変で飛蚊症は起きない.

光視症

光がないところで眼内に閃光を感じるもので,「光が走る」,目から「ホシ」が出る,あるいは「火の玉のようなものが見える」といった症状である.
閉瞼していても生じ,網膜への機械的刺激(視細胞の自生放電)による末梢性と,脳の器質的病変による中枢性がある.

飛蚊症

飛蚊症は硝子体混濁による.

硝子体混濁が眼底に影をつくることで自覚症が生じる.硝子体の粘性のため浮遊しているように感じる.
視力への影響は,薄いカゲ状(紗が掛かる様,など)のものから暗黒になる程の濃い混濁(硝子体出血)まで幅広い.通常の飛蚊症は,青空や白壁を背景にして明所(縮瞳した状態)で自覚されやすいため,眼底検査のため散瞳した場合や暗い検査室内では症状が不明確となる.
眼前に影が見えるとの訴えに関しては,本症と中心・傍中心暗点とを鑑別する必要がある.飛蚊症は眼球運動にやや遅れて動き,眼球運動の静止後も慣性が残りしばらく漂う動きが続くのに対して,中心暗点は常に視野の中での位置は固定しており,眼球運動に完全に同期して動く.

①飛蚊症 ②飛蚊症

■原因(生理的  病理的

硝子体混濁は,硝子体線維の変化(要は加齢変性)や炎症細胞(要はぶどう膜炎)・硝子体出血などが原因となる.

生理的 physiological というのは,硝子体の構造自体に原因があるもので,グリアや発生上の遺残組織などである.広い意味では加齢変化を含み,硝子体の融解(液化)による収縮(syneresis)した硝子体線維の混濁物に因る.加齢により飛蚊症を来たすパターンは後部硝子体(剥)離に伴うもので,視神経乳頭部に付着していた硝子体が輪状の混濁(Weiss ring緑矢印)となって浮遊しているものが典型である.これらの場合,通常は病的なものとは見做さないものである.
③後部硝子体剥離

病的 pathological なものには,裂孔原性硝子体出血,糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症に合併する硝子体出血,ぶどう膜炎による硝子体混濁などがあり,これらは原因を検索する必要があるとともに速やかな治療が必要である.
硝子体出血やぶどう膜炎では視力低下を伴い,日によって症状が変動することが多い.変視症があれば黄斑部網膜に何らかの異常を生じており,ぶどう膜炎による黄斑浮腫や黄斑部に及びはじめた裂孔原性網膜離を,視野障害があれば同様に裂孔原性網膜離やある種の眼底出血などを疑う必要がある.また,全身疾患として糖尿病があれば増殖型糖尿病網膜症に続発した硝子体出血を疑う.

ある研究では,病院受診の飛蚊症の原因は,
後部硝子体離(65%)>網膜裂孔(7%)>裂孔原性網膜離(3%)>硝子体出血(3%)>ぶどう膜炎(1%)>原因不明を含むその他(21%),であった.
このうちレーザー光凝固を含む外科的処置を要したのは,10%強であった.

★上で挙げたような硝子体出血がはっきりしない飛蚊症がある.網膜出血,特に静脈閉塞の発症時に自覚されるようである.やはり,血球が散らばるのであろうか.

(これらは,眼底検査を行うことで原因が明らかとなる.というか,原因検索のために眼底検査を行う.視力低下を起こすような濃い混濁は,飛蚊症と呼べる常識的な程度を超えているが,硝子体混濁飛蚊症であることに変わりはない.)

硝子体 解剖臨床

■発症には急性発症と慢性発症を区別する.

  1. 急性発症

    発症時を記憶していることが多い.多くは後部硝子体が引き金となる.
    (50歳以上の飛蚊症発症は,まず後部硝子体離と考えてよいと云われる.30%は光視症を同時に自覚する)
    併発症のない後部硝子体離はおよそ80%ほどと言われ,生理的飛蚊症に含める.
    合併所見としては網膜裂孔形成と硝子体出血が重要である.出血は網膜の損傷(通常は裂孔が形成される)あるいは新生血管の破綻による.
    後部硝子体離の際の網膜裂孔形成は10~15%程とされる.光視症を伴う飛蚊症は,裂孔形成の危険性が倍以上と考えられている.このような経緯で形成される裂孔の33%が網膜離へ進行するというデータがある.
    硝子体出血は裂孔ができるとき網膜血管も緒に切れるためで,さらに高率に網膜離を示唆すると言われる.

  2. 慢性発症

    時期がはっきりしないか10代頃から自覚しているもの.多くは硝子体線維構造の原発性変化(発生上の遺残組織や後部硝子体皮質前ポケット;つまり,個体差が大きい)であり,すなわち病的意味のないものが生理的飛蚊症である.このような状況でも,硝子体混濁と云っている.後部硝子体離とは無関係である.

☆ぶどう膜炎は,急性発作(例えばBehçet病)では時間の単位で,慢性の経過(例えばサルコイドーシス)では数か月以上の単位で硝子体混濁が生じる.

☆飛蚊症では,左右眼のどちらか,自覚した日時がはっきりとしているか,自覚症状が日によって変化するか,視力低下,変視症,視野欠損など他の症状も自覚しているかなどを確認する.また,高血圧や糖尿病などの全身疾患があるかも問診する.

光視症

①左右眼いずれかがはっきりしており,閃光が周辺視野に自覚される場合は末梢性と考えて検査を進める.
末梢性の光視症は網膜の機械的な刺激によるものであり,網膜を牽引しているかあるいは網膜を叩いている状態と考える.
後部硝子体離に伴う飛蚊症では30%で光視症も自覚するといわれ,病的な硝子体網膜癒着の部位での硝子体牽引を疑う.したがって,網膜裂孔や網膜離の有無を確認する必要がある.発見しにくい硝子体網膜癒着が存在している可能性や網膜裂孔の発生を考慮して,数週後に再検査する.光視は耳側視野に生じることが多い.機械的刺激が作用している筈の部位とは無関係とされ,裂孔形成の位置を推定することはできないとのことである.

また,ぶどう膜炎では視細胞が刺激されて光視症を自覚することがあるという.

②左右眼いずれかがはっきりせず,閃光が視野の中心付近に自覚される場合は中枢性(視覚陽性現象)を考える.
閃輝暗点を含めることがあるが片頭痛年齢より高齢にシフトし,後頭葉の動静脈奇形や動脈瘤を疑う.

☆光視症では,左右眼のどちらか,自覚した日時,光の方向または形状,自覚症状の反復性と症状が発現するときの精神的・肉体的条件,症状の持続時間を問診するとともに,他の自覚症状として飛蚊症,頭痛,視野欠損などがあるかなどを確認する.

図04閃輝暗点

閃輝暗点 scintillating scotoma

中枢性光視症の代表的疾患として閃輝暗点がある(閃輝暗点と診断できた時点で,光視症とは言わない).
問診で,視野の中心付近にギザギザした歯車状の閃光が出現し,拡大しながら10~20分閃光が持続し,閃光が消えて数分以内に拍動性の片頭痛が起こり,ときに流涙や悪心嘔吐などの自律神経症状を伴うことが確認できれば,閃輝暗点の診断は容易である.基本的に両眼半盲性の症状であるが,片眼の現象と表現され易い.ギザギザの部分は光った状態で何色かに着色され,中心部は閃光に被われるか画像がフェードされるようである.

図05閃輝暗点

片頭痛との関連

片頭痛 classic migraine の眼症状の典型が閃輝暗点である.片頭痛の病態としては,「頭蓋内血管周囲の神経が敏感になり感作された状態(sensitization)」と考えられている.ここにセロトニンの動向が関わる.閃輝暗点は2大別され,きらきらした光線を感じるのが陽性徴候で,視覚消失があれば陰性徴候とする.通常は実性暗点として自覚し,後頭葉視覚野の刺激症状(視覚陽性現象)と考えられている.
同様の細動脈性攣縮が網膜内に起こることがある(網膜性片頭痛).これは単眼の視覚障害を伴う片頭痛であるが,機能の脱落(視覚陰性現象)を示す一過性黒内障や視神経疾患を除外する必要がある.

頭痛 ・・ この字はさいきん見かけませんな

☆頭痛って?(頭痛の分類はこちら
この中で閃輝暗点は,視覚性前兆といい「前兆のある片頭痛 migraine with aura 」に位置づけられている.
また群発頭痛は,副交感神経を介して縮瞳や結膜充血を起こすことで注意が必要である.
眼筋麻痺性片頭痛は,頭部神経痛および中枢性顔面痛の群のカテゴリーと考えられている.

 内視現象 entopic phenomenon
外界からの光が結像の過程で修飾変調され異様に見えるとか,光がないにもかかわらず光が見えたりする現象を総称する.
透光体での光の散乱吸収,黄斑色素による短波長光の吸収,網膜の機械的刺激,視細胞のノイズなどにより,自然な状態で起こる場合と特定の状況で発生する場合がある.

a.飛蚊
b.ブルーフィールド内視現象
 明るい均一な面を見たとき,特に青色光は網膜血管の赤血球に吸収され白血球を通過した光が輝点として動く.
c.網膜血管の陰影(Purkinje)
 暗所で強膜を強力に照明すると,血管陰影が見える.
 (眼科診察室では,細隙灯顕微鏡検査時に被検者が実感する.)
d.phosphene フォスフェン
 眼球を圧迫すると発する閃きを特にフォスフェンという.暗視野では眼球の動きによって閃光を感じる.
 輪のように見え,毛様体部分あるいは視神経乳頭部での現象・・・らしい?
 眼から火がでるとか「ホシ」が飛ぶという感覚は光視症に通ずる,がしかし一応,光視症とは区別して解釈する ??
 digito-ocular sign of Franceschetti指眼現象)というのも・・・
e.Haidinger brushes ハイジンガーブラシ
 偏光光に因る,青色と黄色のパターン.
f.Maxwell斑
g.虹視症(暈輪)
h.網膜ノイズ
 最高感度近辺で自覚される背景ノイズ.
i.その他
 急激な運動のあとなどで視野のなかに多数の小輝点の点滅が生じることがある.

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2011