第47回日本アレルギー学会総会会長からのご挨拶

第47回日本アレルギー学会総会会長 眞野健次

 アレルギー疾患は世界的にみても増加傾向にあり、アレルギー疾患に対する国民の関心は極めて大きい。Cocaによって提唱されたアトピーという概念が遺伝的要因を含んでいるように、アレルギー疾患の発症には遺伝的因子の関与が重要と考えられる。過去、多くの研究者がこの問題に取り組んできたが、そのアプローチの方法が難しく自然はなかなかそのベールをとろうとしない。しかし近年の分子生物学や遺伝子工学の発達と知識の集積は指数関数的な勢いで進みつつある。このまま進めば、そのメカニズムが明かにされるのもそう遠くはないかも知れない。
一方、アレルギー疾患がこの30〜40年間に著増したとしても、遺伝子そのものが短期間に変化したということも考え難い。やはり後天的な環境要因がその発症に大きく影響しているのであろう。そのようなわけで今回の総会の主題として「アレルギー疾患における遺伝と環境」というテーマを取り上げた。英国のオックスフォード大学のHopkin教授に百日咳ワクチンとアトピー疾患の関係を、米国のクレイトン大学のTownley教授に気道過敏性の family study について、Johns Hopkins 大学のShau-ku Huang先生には分子遺伝学的アプローチの方法についてご講演をして頂く予定である。
 またシンポジウムでは遺伝子の面からと環境因子の面からと二つの方向からアレルギー疾患にアプローチして頂いた。アレルギー疾患は何故増えたか?というテーマは主として環境因子の問題を取り上げたものである。このテーマは既に約10年前に本学会で取り上げられたことがあるが、今回この10年間の知見の集積を再びここで発表して頂く予定である。
またTh1,Th2という分け方とアレルギーの関係も興味ある問題でアンケート調査でも希望の多いテーマであった。これについては東京大学医科学研究所の成内秀雄教授にご講演をお願いした。分子生物学の発達によって、転写因子がアレルギー疾患の発症に関与するそのメカニズムも次第に明かにされつつあり、今後発展の期待される分野である。
遺伝的なテーマ以外にも重要と思われるテーマについて多くのシンポジウム(イブニングシンポジウム)を組んだ。シンポジウムのテーマによっては国内だけではデータが不足になる恐れがある場合は、司会の先生のご意見に従って外国の著名な研究者にもシンポジストととして加わって頂いた。またこの方達にはそれぞれの専門分野に関して教育講演をお願いした。
ランチョンセミナーは基礎から臨床まで、できるだけポピュラーなテーマを取り上げ、その分野の専門の先生方に解説して頂くことにした。
 できるだけ多くの方に参加して頂くため、国内のシンポジストの発表機会は一人一回を原則とさせて頂いた。そのためかなりの数の方にシンポジストを降りて頂き、一部不公平な場合も生じ、各方面にご迷惑をおかけし、大変ご不満があったと思うがどうかご容赦願いたい。秋の総会は例年10月下旬から11月上旬にかけて開かれるのが通例となっているが、今年は10月19日より一週間、メキシコのカンクーンで国際アレルギー学会が開催されるため、これとの重複を避けるために止むを得ず10月上旬に開催することにしたのでその点ご了解して頂きたい。
 アレルギー疾患はわが国のみらず世界的レベルでみても増加傾向が続いており、アレルギー疾患に関する医療の進歩への国民の期待は大きく、日本アレルギー学会の果たすべき役割は極めて大きいと考えられる。本総会に一人でも多くの方に参加して頂き、本総会が会員の方のお役に立つことができ、また少しでも医療の進歩に寄与することができれば主催者として幸甚である。

  平成9年8月吉日

         



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