- 1.胆石症とは
- 食べ物が胃から腸へ消化するあいだに、肝臓でつくられた胆汁という黄色い消化液の一種が、胆管を通って十二指腸に放出されます。この胆汁が、胃液や腸液とともに食べ物を消化して便をつくります(便の黄色い色は、もともと胆汁の色です)。この胆汁によって、「胆石」という石ができてしまうことがあり、時に上腹部やみぞおち、右の脇腹などに痛みを生じたり、さまざまな症状を引き起こします。胆石症とは、これら胆石による病気の総称です。
胆石は、主に胆汁が濃縮される胆嚢(胆嚢結石)と胆汁の流れ道(胆管結石)、肝臓のなか(肝内結石)などにできます。胆嚢結石は、白色調のコレステロールによる結石が多く、ときには何十個もできることがあります。胆管結石は、黒色調のビリルビン結石が多く、小さな結石でも、たった1個でも、激しい症状を引き起こすことがあります(図1・2)。


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- 2.胆石症の主な症状
- 代表的な症状は、右上腹部痛、発熱、吐気、黄疸です。しかし、胆石を持っていても、8割前後の人は症状の自覚がありません。急性症状としては、突然の激しい上腹部痛(疝痛発作)があります。脂っこい食事や暴飲暴食、過労、体調不良が引き金になる場合もあります。普段から“胃が痛い、胃腸の調子が悪い”と見過ごされることもあります。
慢性症状では、以前から何となくお腹(上腹部)の調子が悪い、特に、脂っこいものや生卵をたべた後などに、上腹部痛や吐き気、食欲不振等が生じやすい傾向があります。ところが、なかでも、胆石が胆道に詰まり、急性炎症や細菌感染を起こした場合には、発熱、黄疸、肝機能障害なども生じ、急性胆嚢炎、胆管炎、急性膵炎や敗血症などの重篤な状態になることもあるので注意が必要です。
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- 3.胆石症の検査法(腹部超音波(エコー)検査)と診断法
- 胆石の場所や個数、胆嚢胆管の状態(炎症の程度、病気の進行度、他の臓器への影響など)を、外来でも観察できます。腹部の上を滑らせるように数分間観察し、検査による苦痛は殆ど有りません(図3)。そのほか、X線撮影、血液検査、X線断層撮影(CT)、点滴静注、胆道造影(DIC-CT:図4)などが行われます。


また、詳しい検査が必要な場合は、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影:図5)、MRCP(磁気共鳴胆管膵管造影:図6)なども行われることがあります。


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- 4.胆石症の治療法
- 1)胆嚢結石の治療法
激しい腹痛症状には、鎮痛剤や胆嚢の緊張をゆるめる薬剤を用います。細菌感染が起こっている場合は、抗生物質なども用いられます。しかし、根本的な原因である胆石が残っている場合は再発の危険があります。石を放置すると疝痛発作が再発したり、不快症状がしつこく続く場合もあり、また、場合により、癌の危険性が高まる、といった医学的な知見もあります。
- (1)結石溶解療法
- コレステロール結石の場合、結石が溶解する期待がもてる場合があります。ただ、結石の数や大きさにより、効果がでるまでに長い年数がかかったり、再発したりする場合もあり、長期的に服用しなければならないこともあります。
- (2)胆嚢摘出手術
- 胆石を胆嚢とともに摘出する胆嚢摘出術が広く行われてれています。最近では、腹部に約1cmの切開を数カ所あけ、カメラ(内視鏡)をいれて手術する「腹腔鏡手術」が行われ、現在、日本では胆石症に対する胆嚢摘出術のうち、約8~9割が腹腔鏡下におこなわれています。困難な場合は、開腹術に移行することもあります。腹腔鏡下胆嚢摘出術は、開腹の場合に比べ、傷が小さく痛みも軽く患者さんの負担は軽いともいわれますが、炎症や病態に応じて困難な場合もあり、どちらが適しているかは医学的な判断が必要ですので、担当医へ気軽にご相談ください。



- 2)胆管結石の治療
胆管結石は、胆汁の流れを阻害し肝臓や膵臓にまで影響がおよぶことがあり、おもに経口内視鏡的胆道処置(ERCP:内視鏡的逆行性胆管膵管造影)が行われます。十二指腸にある胆管の出口を風船で拡張したり(内視鏡的胆道バルーン拡張術:EPBD,EBD 図11)、電気で切開したり(内視鏡的十二指腸乳頭筋切開術:EST 図12)、石を取り出しやすくしたり、再発を防いだりもします。鉗子という細い器具を十二指腸から胆管に挿入し、バスケットなどで結石を破砕したり(図13)、小さなバルーンなどで採石する処置(図14)も行われます。




胆管結石によって胆管に細菌や膿がたまった場合は、チューブを胆管内に留置して、鼻や小腸へ誘導する手技(内視鏡的経鼻的胆道減黄ドレナージ:ENBD、内視鏡的逆行性胆道減黄ドレナージ:ERBD)を結石除去に先立って行なうこともあります。
内視鏡的に処置が困難な場合(胃の手術後や胆管へ処置具が入らない場合など)は、おなかの皮膚から肝臓を経由して直接胆管へ針を刺し(経皮経肝的胆道ドレナージ:PTCD)、バスケットや内視鏡を入れて処置する方法(経皮経管的胆道スコープ:PTCS)も行われます。
いずれも麻酔がかかっているうちに行い、患者さんの負担を最小限にする努力をしています。
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- ●きずの小さな腹腔鏡手術の工夫―“アンダー1インチ法”による腹腔鏡下胆嚢摘出術
- 当科では、低侵襲性の観点から、小さな傷による安全でひとに優しい手術を心がけています。現在、当科で行っている“アンダー1インチ法”は、直径2mm、3mmの細径鉗子と5mmの細径内視鏡を組み合わせ、3箇所(3ポート法)で合計1インチ(約2.5cm)以下の傷で腹腔鏡下に胆嚢摘出術を行う手術法です。炎症や手術歴のない場合などに適応が限られますが、手術に際しては適応条件やメリット、デメリットもありますので、担当医にご相談ください(図10)。

おなかの傷は3箇所のみで、①2mm②5mm③10mmの合計1インチ(約2.5cm)以下。炎症や手術歴のない場合などに適応が限られますが、手術に際しては担当医にご相談ください。
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