
Emergency Nursing 1997;連載「学会発表の Know How」
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コンピューターを使ったスライド作り [2] 近い将来、スライドを使って研究発表をすることはなくなるかも知れません。この10年間のコンピューター技術の進歩、特にマルチメディア技術の進歩は目覚ましいものがあります。それにもまして大きな変革はInternetの普及です。今や情報は地理的な距離を越え世界中のどこにあっても伝えることができるのです。「学会」や「研究会」が学問の情報交換を目的とするなら、わざわざ何処かの都市に集まる必要もなくなって来ます。Internet上で学会を開けば、口演などと異なり画像も動画も音声も利用したプレゼンテーションが可能となりますし聴衆は世界中にいるのです。更にすべてが電子情報として残り、何時でも見たり引用することができるのです。それでは「コンピューターを使ったスライド作り」は無駄なのでしょうか。どのような伝達手段であっても画像により主張すべき内容を分りやすく表現する手段としてのスライド作成法は変わらないでしょう。特にここで紹介するようなコンピューターによる画像処理の基本は医師にとっても看護婦にとっても必須の技能となることでしょう。今回は、スライド作りの具体的なポイントをDeltaGraph Pro 3.5J(Delta Point Inc.)を使って解説することにします。 V.【スライド作りのポイント】
文字は「書体」と「大きさ」で形が決まります。かつてパソコンでは文字は16(即ち16×16の点の集まり)で表されていましたが、現在ではTrue Type Fontと言って大きさに関わらずギザギザのない書体が主流となっています。漢字でもっとも読み易い書体は「太ゴシック体」か「教科書体」だと言われています。要するに線の太い字でないと読みにくいのです。「明朝体」は、印刷物としては読み易く美しい書体ですが、スライドとして画像に表現すると決して読み易い書体とは言えません。画像としての文字では「可読性」が最も重要になります。視力検査の表を見ても分るように、同じ太さの線で形作られた「ゴシック調」の書体が「可読性」が高いのです。しかし、「明朝体」が絶対だめだと言うわけではありません。工夫次第では、強調文字や太文字などの修飾文字を使いアクセントを加えたり、逆に文字として目立たせないことを利用する使い方もできます。
口演の一番最初に使われるスライドで、口演のタイトルと演者名、施設名などが提示されます。最初に聴衆を引きつけ、これから話す内容に注目させることが目的ですから、文字はむしろデザインの一部といえるでしょう。外国人の講演では、よく自分の町の風景や病院の写真などが使われますが、日本の学会でももう少しユーモアのあるスライドを出す心の余裕が欲しいものです。[カラー図-3]
DGPを新たに起動するか、メニューバーの「ファイル」から「新規」を選ぶと新しいデータビューが現れ益す[図-5]。一番下のナビゲーションバーからグラフビューをクリックすると[図-6]のようなグラフビューが現れます。背景を編集するには、メニューバーの「ページ」から「レイアウト適用」を選ぶと「レイアウト」と書かれた小さなウィンドウが現れます[図-6]。「基本レイアウト」と書かれたところをクリックするとプルダウンメニューが現れますから一番下の「共通の背景」を選びます。「レイアウト」ウィンドウの中央をダブルクリックするとグラフビューが背景の編集に変わります。×印が引かれていますが、これはあらかじめ白に塗られた四角い「図形」部品なのです。この四角い「図形」部品をツールボックスのポインターツールで選びます。画面四隅にオブジェクトハンドルと言う四角い印が現れ、部品が選択されたことを示します。この四角い「図形」の「面」に色を付けます。ツールボックスの「面」の「前景色」の枠を選ぶと「前景色」と書かれたカラーパレットが出てきます。黒(一番上の左)を選びます。グラフビューの中の四角は上が黒く下に行くにしたがって白くなるブレンドで塗りつぶされます。今度は「面」の「背景色」の枠を選び青の一番濃い(右)の色を選択します。グラフビューの中の四角は上が黒く下が濃い青のブレンドに変わります。背景には他の部品(文字や図形)を加えることもできますが、まずは背景の設定はこれで終わります。ナビゲーションバーにある「共通の背景」をクリックしプルダウンメニューから「ページ#1」を選びます。
文字を使ったスライドはすべてこの要領で作ることができます.
一般的なグラフのスライドに含まれるべき各要素を[図-8]に示します。無論、グラフには棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなどいろいろな種類があります。しかし、グラフのスライド全般に共通した注意点もいくつかあります。
どのスライドにも共通して言えることですが、スライドの上部中央には必ずタイトルを入れ、このスライドは何を説明するために提示したかが分かるようにすべきです。タイトルの文字も太く読み易い書体を選びます。
DGPでは数値データをもとに自動的にグラフが描かれます。もとになる数値データはデータビューの「データページ」と言う表に入力します。ナビゲーションバーにある「データビュー」のアイコンをクリックすると、白紙の表が現れます。これが「データページ」で、グラフに対応する数値を入力します。数値の並び方とグラフの関係は、グラフの種類によって異なりますが、棒グラフでは各列(上下)が一つの項目になり、行(横)が上から下に向かって横軸に当たります。[図-9]のように表の中に項目名と数値を入力してみて下さい。
写真をコンピューターに取り込む方法は幾つかあります。プリントされた写真はスキャナーと言う機器で取り込むことができます。スキャナーは10万円以下でも購入可能です。一方、ネガフィルムを取り込むためにはフィルムスキャナーと呼ばれる機器が必要です。レントゲンフィルムの取り込みにはいくつかの方法があります。小さな画像(CTやMRI)などでは、スキャナーに透過原稿ユニットと言う付属品を取りつけることでプリントされた写真と同様に取り込むことができます。大きなレントゲンフィルムではレントゲンスキャナー(100万円以上)と言う専用のフィルムスキャナーもあります。安価に取り込むには、写真で撮ってネガフィルムなりプリント写真にしてから取り込むか、最近ではデジタルカメラ(〜15万円)で撮影して取り込む方法もあります。 こうして取り込まれた画像は、基本的には「ピクチャー系」の「図形」部品としてDGPに取り込むことができます。DGPではメニューバーの「ファイル」にある「インポート」から PICTファイル、TIFFファイル、JPEGファイルと言った標準的なピクチャー系の画像を取り組むことができ、大きさも自由に変えられます。
レントゲンスライドを作るに当たっては、次の点に注意する必要があります。まず、プライバシー保護の点から患者氏名は隠さなければなりません。スライドのレントゲン像では微妙な変化まで表現するのは難しく、短い映写時間で細部まで読影してもらうことを期待するのは無理ですから、特に着目すべき部分には矢印をつけるなど工夫が必要です。スライドの下(あるいは上)にタイトルや検査データなどを加えるとスライドの目的が理解し易くなります。[カラー図-1-d]
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