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2. 熱傷深度とその鑑別法が説明できる

【皮膚の解剖】

  皮膚は表皮(epidermis)真皮(dermis)より成り立っている。熱傷は皮膚の損傷であるから深度(深さ)は表皮及び真皮の何処まで損傷が及んでいるかで分類されている。

 例えば、皮膚の厚さが平均1mmとしても、体重70kgの成人では体表面積はおよそ1.8m^2であるから、

0.1cm × 18,000cm^2 = 1.8L ≒1.8kg

と言うことになり、皮膚を一つの臓器と考えると如何に大きな臓器であるかが分る。

【熱傷深度の表記】

 熱傷深度(深さ)の表現は、日本熱傷学会で次のように分類されている。この分類は、解剖・組織学的な分類であるが、臨床症状とも良く一致する。

  1. I度熱傷(EB:epidermal burn)
     表皮(角質層)のみの損傷
  2. II度熱傷
     真皮に及ぶ損傷
    1. 浅達性II度熱傷(SDB:superficail dermal burn)
       真皮の表層部(有棘層・基底層)に留まる損傷
    2. 深達性II度熱傷(DDB:deep dermal burn)
       真皮の深層部(乳頭層・乳頭下層)に達する損傷
  3. III度熱傷(DB:deep burn)
     表皮と真皮全層の損傷

【熱傷深度の鑑別法と症状・経過】

 熱傷深度の分類と所見、治癒期間などをまとめると次のようになる。簡単に言えば、疼痛がなければIII度(DB)で、水疱があればII度、発赤だけならI度である。

分類 所 見 症 状 治癒期間
I度(ED) 紅斑・発赤
(血管拡張・充血)
熱感・疼痛 数日
浅II度(SDB) 水疱・糜爛
(血管透過性亢進・滲出)
疼痛・灼熱感・知覚鈍麻 約10日
深II度(DDB) 約3週間
III度(DB) 羊皮紙様
(血管途絶・凝固壊死)
無痛性 治癒せず・瘢痕拘縮

 I度は誰でもが経験する「日焼け」が身近な例である。お湯を掛けて水疱が出来るのはIIs(SDB)で、火炎による熱傷で白くなるのはIII度である。
 III度では、知覚神経も損傷されるために疼痛がなく、皮膚の全組織が損傷されているために治癒しない。周辺より瘢痕拘縮として縮小するのみである。IId(DDB)では、治癒まで3〜4週間を要し、この間に感染が起こり真皮成分が壊死してしまいIII度となってしまう。治癒しても肥厚性瘢痕となる。
 皮膚は真皮成分と表皮成分があって初めて治癒する。真皮層の損傷が大きいと、一部が線維芽細胞の増生により無構造な真皮様組織である肉芽組織に置き替わりその上に表皮が再生して肥厚性瘢痕として治癒する。


[ REFERENCES ]
 日本熱傷学会用語委員会編:熱傷の分類と深度, 熱傷用語集,p.51,1985.

 最新の熱傷臨床ーその理論と実際ー. 平山峻,島崎 修次編. 克誠堂出版株式会社,東京,p.89,1994.

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鈴木 宏昌 (dangan@ppp.bekkoame.or.jp)
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