目次

タイトルをクリックすると、コクランライブラリーについての各内容にジャンプします。

  1. コクラン共同計画とは

  2. コクラン共同計画のロゴマーク

  3. Archiebald Cochraneとはどんな人物?

  4. システマティック・レビューとは

  5. コクランライブラリーとは

  6. コクランライブラリー入手方法

  7. 文献

  8. 実際の検索方法

  9. コクランライブラリーに接続 /英語 [学内専用サービス→OVIDデータベース内からお使いください]

  10. コクラン共同計画 アブストラクト無料提供サービス/英語 コクランレビューの抄録を無料で提供しています

  11. JANCOC 1998年第4版のコクランレビューの抄録・日本語版を無料で提供しています

  12. JANCOCホームページ

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 1.コクラン共同計画

 コクラン共同計画(The Cochran Collaboration)は、1992年にイギリスの国民保健サービス(National Health Service: NHS)の一環として始まり、現在、世界的に急速に展開している治療、予防に関する医療テクノロジーアセスメントのプロジェクトである。無作為化比較試験(randomized controlled trial: RCT)を中心に、世界中のclinical trialのシステマティック・レビュー(sytematic review; 収集し、質評価を行い、統計学的に統合する)を行い、その結果を、医療関係者や医療政策決定者、さらには消費者に届け、合理的な意思決定に供することを目的としている。Evidence-based medicine (EBM)の情報インフラストラクチャーと呼ばれている。

 その特徴は、

  • 医学情報の爆発的増大(information explosion)に対する意思決定支援システム。Systematic Reviewの反意語は、unsystematic review, information review。

  • 対象とする領域は、すべての治療・予防などの多岐にわたっており、とてつもなく広く、ヒトゲノム計画にも例えられる。

  • 最新の情報システムを駆使しており、また展開が早い。種々の情報が、インターネット、CD-ROMなどにより入手できる。迅速でかつ、英語での理解を望まれる方は、カナダのコクランセンターにあるCanadian serverに直接アクセスされることをおすすめする。(http://hiru.mcmaster.ca/cochrane)

  • NHSの一環として始まったが、参加している人は世界中に及び、ボランタリー・スピリットで働いていることが多い。

  • 社会的受容は、各国の医療サービス・システムの形態に依存することが多い。

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 2.コクラン共同計画のロゴマーク
 コクラン共同研究のロゴは、7つの無作為化比較試験(Randomized Controlled Trials: RCTs)をもとに行われた系統的レビュー(Systematic review)を図式化したものである。
  • 7本の水平線は、各RCTの結果を示し(線分が長さが短いほど、その結果が確実であることを意味する)、

  • 菱形は、それら全試験を総合した結果を示す。

  • 中央の垂線は、比較する2つの治療法が同等の効果をもつ場合の位置を示しており、

  • 水平線が垂直線と交わる場合は、問題の治療法と比較の対照になっている他の治療との間に差がないことを示している。

  • 菱形の位置が垂直の左にあることは、全てのRCTを総合した結果、新しい治療法が優れていることを、

  • 菱形の位置が垂直の右にあれば、新治療法が劣ることを示す。

 ロゴの原型となったこの図は、早産の恐れのある妊婦を対象として行った、短期間でしかも安価な副腎皮質ホルモンの治療(RCTs)に関する系統的レビューの結果を示す。最初のRCTは、1972年に発表されたが、その後10年間に行われたこの点に関するすべての治療を系統的にレビューし、要約したものである。上記の説明にしたがって、この図をみると、副腎皮質ホルモンの使用が未熟児合併症で死亡する児のリスクを明らかに減少させていることがわかる。1991年までには、さらに7件のRCTsが報告され、ロゴで示された結果は一層顕著なものとなった。すなわち、未熟児合併症で死亡するリスクは、副腎皮質ホルモン治療により、オッズ比で30%ないし、50%少なくなっている。

 1989年までは、このような臨床試験を系統的にレビューした結果は発表されていなかったため、ほとんどの産科医は、この治療法がこれほど有効であるとは認識していなかった。その結果、未熟児1000人中10人が、余計に死亡したものと推測される。ヘルスケアに関して、RCTsの系統的レビューを怠ったために生じた、人的/経済的損失はこれ以外にも数多くあり、ここに示したものはほんの一例に過ぎない。

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 3.Archiebald Cochrane

 コクラン共同研究の名称は、英国の医師Archiebald Cochrane(1908−1988)の名に由来している。彼は、1972年に出版された著書「Effectiveness and Efficiency: Random Reflections on Health Services」のなかで、多大な影響を与えたことでよく知られている。彼は、同著の中で

  • すでにあるランダム化比較試験から、

  • よりよいものを選りすぐって、質の悪いものは除いて、

  • それらをまとめて、

  • 遅れなく、

  • 必要な人に届ける、

ことが大切であると力説している。

 特に彼が強調したのは、RCTsから得られた結果を用いることの重要性である。その理由は、RCTsは他のいかなる方法で得られた結果よりも、この方がはるかに信頼性の高い情報を提供するからである。コクランのこの明快な提案の重要性は、医療の専門家だけでなく、一般の人々からも広く認識されるようになり、速やかな支持を得たが、その考えを実現する作業は遅々として進まなかった。これは、ヘルスケアの効果に関して、得られた確定的な知見が、しばしば種々の既得権を脅かすことにもなるという一面を反映したためであった。しかし、これよりももっと大きな問題は、こうした知見を治療方針決定のために知りたいと思う人々が、その情報に容易にアクセスできないという点にあった。

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 4.システマティック・レビュー
 コクラン共同計画を始めた人は、Lain Chalmerというイギリス人の産婦人科医である。彼は、コクランの弟子で、1992年に正式にコクラン共同計画を始める前に、10年以上システマティック・レビューを周産期領域で行っていた。

 システマティック・レビューの具体的な方法は、下記に示すステップとなっている。

  1. 研究テーマの選定:回答可能(answerable)なリサーチ・クエスチョンを立てることが大事
  2. 研究を漏れなく収集:出版されていないトライアルも含めて
  3. 各研究の妥当性の評価
  4. アブストラクトフォームに要約
  5. メタ・アナリシスによる統計学的解析
  6. 結果の解釈
  7. 編集と定期的更新

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 5.コクランライブラリー

 コクラン・ハンドブックを、システマティック・レビューにおけるいわばinputのためのツールとすれば、できあがったoutputとなるのが、CDSR(The Cochrane Database of Systematic Reviews)である。このCDSRをメインとしたCD-ROMが、コクランライブラリー(Cochrane Library)と呼ばれるものである。定期的に改訂されている。このコクランライブラリーは、「Effective case in Pregnancy and Chldbirth」という周産期医学についてのプロダクトが母体となっている。

  • 1992年 「The Cochrane Collabolation Pregnancy Childbirth: CCPC」として、FDで発行。

  • 1995年 周産期医学以外も含むすべての領域を対象とした現在の形のCD-ROMとなり、年2回のreleaseとなる。

  • 1996年 4月に、CDSRの他に関連する情報を含んだCochrane Libraryという形になり、年4回のreleaseとなる。

 このCD-ROMは、コクラン共同計画が行ったレビューの結果のほか、コクラン以外による総説、システマティックレビュー論文のデータベース、現在登録されている臨床試験のデータベース、システマティックレビューの方法論についての論文集が含まれてる。以下に内容を示す。

The Cochrane Database of Systematic Review (CDSR)
The York Database of Abstracts of Reviews of Effectiveness (DARE)
The Cochrane Controlled Trials Register (CENTRAL/CCTR)
The Cochrane Review Methodology Database (CDMD)

1.The Cochrane Database of Systematic Review (CDSR)

 コクラン共同計画の中核となるデータベースであるが、系統的な方法で徹底した情報収集を行い、批判的吟味をし、一定の基準を満たした論文をベースに、治療、予防効果をそれらの論文結果の指標を統合したオッズ比(相対危険)の形で提供している。最新のバージョン(1999, issue 4)では、663のシステマティックレビューが利用でき、624の計画中、あるいは進行中のレビューがある。1年に4回の改訂が行われ、改訂のたびに大幅な内容の追加が行われている。

2.The York Databae of Abstracts of Reviews of Effectiveness (DARE)

 英国のYork UniversityのNHS Center for Reviews and Disseminationで一定のふるいにかけられた総説、メタアナリシスの論文のデータベースで、現在2,470の論文がデータベース化されている。そのうち、1,333は抄録で見ることができる。構造化抄録(structure abstract)の形をとっている。

3.The Cochrane Controlled Trials Register (CENTRAL/CCTR)

 比較対照研究のデータベースで、最新バージョンでは250,798の論文が登録されている。この中にはMED-LINEだけでなく、EMBASEやそれ以外のものも含まれており、治療についてのデータベースとしてはMED-LINEより網羅的なデータベースとなっている。そのうち、CENTRALとは、ランダム化比較試験(RCT)の可能性がある論文がひとまず登録されるデータベースで、RCTであることが確認されると、CCTRに登録される。

4.The Cochrane Review Methodology Database (CDMD)

 Systematic Reviewに関する方法論の論文の書誌情報のdatabaseである。About the Cochrane Collaboration

  • Cochrane Collaboration

  • Collaborative Review Groups-CRGs

  • Fields

  • Methods Working Groups-MWGs

  • Networks

  • Cochrane Centers

  • Sources of Supports などの解説。

 このうち、About the Cochrane CollaborationのCRGsをクリックすると、トップに出てくるSummary of CRG outputは、終了した[Review]や、現在進行中の[Protocol]のリストで、一度目を通しておくと、browsingできて全体の理解が深まる。

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 6.コクランライブラリー入手方法

 BMJ出版部(FAX +44-171-383-6662)、Update Software社(FAX +44-1865-516918)に直接申し込むほか、日本では、南江堂洋書部(TEL 03-3811-9957、FAX 03-3811-5031)が代理店となっており、そこからも入手できる。インターネット接続によるオンライン版とWindows対応のCD-ROM版がある。価格は、南江堂洋書部からの購入で、4回バージョンアップを含め、36,000円である。

 Mac版は、1996年以降販売されていないが、1999年度よりAries Systems社が別の検索エンジン(Knowledge Finder)を搭載したハイブリットCD-ROMを販売している。南江堂洋書部より購入可能であるが、価格が63,600円と割高である。いきなり購入はちょっとという人には、インターネットで各レビューの抄録までを見ることができるほか、抄録の日本語訳もJANCOCのホームページで見ることができる。コクランのインターネット関連のURLを以下に示す。

コクランライブラリーホームページ http://www.update-software.com/cochrane/cochrane-frame.html
抄録の日本語訳のサイト http://www.nihs.go.jp/dig/cochrane/jp/revabstr/jp/abidx.htm
JACOCのホームページ http://cochrane.umin.ac.jp/
コクランマニュアル http://www.york.ac.uk/inst/crd/cochlib.htm

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 7.参考文献
  • 矢野榮二編.医療と保健における評価.南江堂,195-217,1999
  • 別府宏圀,津谷喜一郎.コクラン共同計画資料集 Version2.0, September 1997:医薬品治療研究会,1997
  • 縣俊彦.EBM 医学研究の方法論:中外医学社,2000
  • 名郷直樹.コクランライブラリ:EBMジャーナル1(3),90-91,2000
  • 名郷直樹.ベストエビデンスと構造化抄録:EBMジャーナル1(4),104-105,2000
  • 津谷喜一郎.コクラン共同計画とは:わかりやすいEBM講座:厚生科学研究所,120-135,2000

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