Teikyo University Centre for Evidence-Based Medicine


■申請者

帝京大学医学部衛生学公衆衛生学教授 矢野榮二

■プロジェクトの概要

 最近のがんの検診と治療を巡る議論にみられるように、医療行為の有効性については、その根拠が必ずしも普遍的に認められていないものがあり、経験や習慣、あるいは薬理作用だけで採用されている治療方法が多い。しかし、これらの中には後に無効、あるいは、有害であることが明らかになったものもある。今や患者の意識の高まりや医療資源の制約の中で、医学・医療においてもその有効性を、厳密に対照をおいた研究や、実際の患者での実施結果(アウトカム)の総合的な分析により示すことが求められるようになった。Evidence Based Medicine (EBM=エビデンス医療)と呼ばれるこうした動きは特に欧米で盛んで、臨床医学のみならず、予防医学あるいは医療政策まで含めて、EBMが強調されるようになっている。しかし、わが国では未だ関心を持つ個人が欧米の動きを紹介する形で発言したり、集まって勉強会を行っている程度で、安定した組織を医学教育機関の中に作ろうとするのは初めてのことである。

 帝京大学は、EBMに基づく保健・医療そして医学教育を行うことの重要性を認識し、昨年、世界の指導的な立場の英米の研究者を招き、国際シンポジウムを主催した。帝京大学はEBMの研究と実践が盛んな米国ハーバード大学、英国ケンブリッジ・オックスフォード両大学と以前より提携関係にあり、若手研究者を派遣しての教育訓練・交換講義・共同研究等で人的、実質的な結びつきが強い。わが国のEBM研究発展の中で、上述の国際シンポジウムは転機となる非常に重要なものであったが、これをさらに発展させ、本学のみならず、わが国の医療内容の改革につなげるため本プロジェクトを実施することになった。共同研究者のSackett 教授の指導するOxford 大学のCentre for Evidence-based Medicineは、このような研究と教育・普及活動の世界的なセンターになっているが、それに範をとり、同センター及びケンブリッジ、ハーバード大学とも共同で、わが国の状況の中でEBMの研究と教育を行う。


[目次へ戻る][トップページへ]