ご 挨 拶
日本臨床微生物学会のすべての会員の皆様に、第9回総会へのご参加を心より歓迎申し上げます。
近年数々の先進医療技術が臨床へ導入され、悪性腫瘍をはじめとする重篤な疾患の予後は著しく改善されつつあります。しかし、その反面、先端医療によって産み出された易感染患者の増加とともに、日和見感染症の問題が深刻化に向かうという新たな状況が生じております。
日和見感染をはじめとして最近私達が遭遇する感染症の原因菌は益々多様化する傾向にありますが、なかでも真菌が占める比重は増大の一途を辿っていると考えられます。近年における医真菌学の進歩・発展は実にめざましいものがありますが、真菌症への対策は、残念ながらすべての面で細菌感染症のそれにくらべて大きく立ち遅れていると言わざるを得ません。現行の抗真菌化学療法の臨床的有用性が必ずしも充分でないことを考え合わせますと、真菌症対策としては適切な検査に基づく的確な診断を行うことこそが最も重要であります。したがって、真菌症発症患者は無論のこと、高い発症リスクをもつ多くの易感染患者の医療管理の成否は、まさしくlaboratory
diagnosisを担当される多くの本学会会員の方々の手に委ねられているといっても過言ではありません。本総会のメインテーマとして「真菌症」が選ばれた背景と理由は充分お分かり頂けるものと存じます。
この観点に立って、本総会のプログラムの骨格となる特別講演と2つのシンポジウムを真菌関連のトピックスで固めました。なかでも特筆すべきは、全国1,000ヶ所以上の施設を対象に実施された酵母様真菌検査、分離状況に関するアンケート調査の報告であり、わが国の真菌検査の現状をうかがい知る上でまたとない貴重な資料となることは疑いありません。この紙面をお借りして、快くご協力頂いた各施設の会員の方々に厚く御礼申し上げます。
このように真菌症を骨格とするプログラムではありますが、これに加えて感染症または検査の全般を通してとくに重要と考えられる今日的テーマについても最適任の講演者を得て特別講演、教育講演または公開講座として組み入れることができ、一段と充実したプログラムとなりました。さらに、モデル検査室や多数の真菌標本など実地に即した展示・供覧も用意いたしました。
会員の皆様には、一般演題のご応募と併せて多数ご参加下さいますようお願い申し上げますとともに、本総会が多少なりとも皆様の今後の感染症検査とくに真菌症検査のお役に立ちますことを心より念願いたしております。最後になりましたが、本総会に快く協賛して下さいました企業・団体各位に対し厚く御礼申し上げます。
第9回日本臨床微生物学会総会
会 長 山 口 英 世
副会長 森 伴 雄
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