私は現在,第3回International Observership in Hepato Biliary Pancreatic
Surgeryの留学生として,現在Mayo clinic, Rochesterに留学させていただいております,名古屋大学器官調節外科(第1外科)の北川雄一です.このprogramについて,これまでに経験したことを,きわめて個人的ですが,述べさせていただきたいと思います.
まずこのprogramの全体的な特徴について説明したいと思います.内容は完全に臨床のみのprogramです.臨床といっても,米国の医師免許のない我々には実際のpracticeはできないため,手術の見学と臨床研究ということになります.これは訪問する3つの施設に共通です.SeattleとLos
Angelesでは膵臓外科の臨床になりますが,Rochesterではいわゆる一般外科・肝臓外科・鏡視下手術・腫瘍外科なども選択可能です.米国への留学が,通常基礎研究であることを考えると,これはきわめてuniqueなprogramといえるでしょう.日米間には保険制度・手術適応,実際の術式,術後管理におおきな「差」があります.良くも悪くもアメリカがひとつの「世界標準」と考えられていますので,そのアメリカとの「差」を理解することは,日本に帰ってからの臨床に役立つと考えています.また臨床研究の結果は,自分の業績として学会・論文発表することができますので,これもおおきなadvantageでしょう.
SeattleのVirginia Mason Medical Centerでは,PPPDで有名なDr. Traversoのもとで膵臓外科の臨床を学びます.ここがmainの受け入れ先になり,1カ所目の留学先となります.ここでの研修が3カ所中もっとも厳しいかもしれません.レジデントと早朝に回診し,その後6時半からconference(毎日)があります.その後,月・水は7時半から,金は8時半から手術,他の2日は9時から外来見学になります.手術または外来の終了後,Dr.
Traverso と回診します.Dr. TraversoがOn-Callの日には,ERでの臨床も学べることでしょう.夕方,手術・外来のあき時間あるいは週末を使って,臨床研究をすることになると思います.テーマはDr.
Traverso から与えられますが.最初に何に興味があるか聞かれますので,自分の興味のあるテーマが選べるかもしれません.Seattleでの6ヶ月間には英会話・医学英語のlessonも受けることになると思います.これは個人lessonであり,先生方各自のlevelと上達速度にあわせてlessonが組まれますので,英語のことで留学を躊躇する必要は無いと思います.
Los AngelesのUCLAでは,Dr.Reverのもとで膵臓外科の臨床研修を行います.ここでも週3日の手術見学と2日の外来見学を行います.ここでは早朝回診がないため,比較的余裕のある生活ができると思います.
Mayo clinic, RochesterではDr.Sarrの所に留学しますが,Dr.Sarr自身は肝胆膵の手術は現在行ってみえません(obesityの手術と消化管運動の基礎研究をやってみえます).このため膵臓・肝臓・鏡視下・腫瘍外科などを選択し,それぞれの専門家のもとで研修することになります.臨床研究のテーマも,この中から選択可能と思います.
Seattle以外の2施設では,ある程度,自分で時間を調節することが可能ですので,米国の国内学会や国際学会に参加したり,日本で行っていたprojectを継続して行うことも可能だと思います.
このprogramの利点を挙げてきましたが,最後に私の感じた問題点を挙げておきます.現時点での最大の問題は,費用の大部分が自費だということです.第2にはビザの問題(J-VisaをとるかB-Visaをとるか)があります.しかしこの問題は,現在日米の関係者が努力してくださっており,早期に解決すると思われます.
最初にも述べたように,米国の臨床を複数の施設において経験するprogramはきわめてuniqueなものです.もし機会が有れば,先生方もぜひapplyされることをお勧めします.
(事務局宛に連絡してくだされば,より詳細な内容についての質問にお答えしたいと思います.)
北川雄一