はじめに

最近、ジェネリック医薬品という言葉を耳にするようになりました。後発医薬品とも言います。ジェネリック医薬品は、「承認医薬品と有効成分が同一であって,投与経路,用法・用量,効能および効果が同一である医薬品である。通常,先発品である既承認医薬品の再審査期間および特許期間経過後市場に出される」と定義されています。一言で言えば、ジェネリック医薬品(後発医薬品)はブランド医薬品(先発医薬品)と薬剤として同一ではないということです。

薬剤は有効成分以外にもさまざまな成分が含まれています。たとえば、錠剤を例に取りますと、1個の錠剤に含まれる有効成分は1 mg以下の場合もありきわめてわずかです。それにもかかわらず、直径がたとえば5 mm、厚みが2 mmもあるのは、味をよくしたり、吸収を高めたりさまざまな工夫を凝らすために必要な成分が大部分を占めているからです。ジェネリック医薬品(後発医薬品)は定義上、主成分が同一であれば良いので、それ以外の成分は異なってもかまいません。ジェネリック医薬品(後発医薬品)の価格は先発医薬品に比べて安価ですが、有効性や安全性について同一なのでしょうか。この点が今問われていると思います。信頼できる研究もまだ少ないのが現状ですが、このサイトでは信頼できると思われる研究結果を紹介してゆきたいと思います。

資料としてはヒトを対象にした医学研究であり、最も客観性がある無作為化比較対象試験(RCT)の論文を原則として選びました。単なるうわさや、権威者の意見などではなく、一定の手続きを踏んで実施された客観的な医学研究です。昨今医療方針の決定には経験や勘ではなく、客観的な根拠を基にしたEvidence Based Medicine (EBM)の必要性が叫ばれています。参考にしたい論文はEBMの資料としても使用できる水準であれば良いのですが、対象患者数が各薬剤群につき100名以上および試験期間がその薬剤の本来の投与期間に比較して短すぎないことなどとエントリーの基準を厳しくしますと条件を満たす研究はほとんどなくなってしまうので場合によっては上記の条件を満たしていない研究も掲載しました。この点については個々のコメントを参照してください。

一人の患者としてブランド医薬品(先発医薬品)を選ぶかジェネリック医薬品(後発医薬品)を選ぶかは、有効性、安全性、経済性が判断基準になるとおもいます。薬理学的に見て有効性と安全性について両者に差があるのか否かを主に検討してゆきます。また、わが国のジェネリック品を対象にした信頼できる研究は残念ながらまだ非常に少ないのが実情です。ここにご紹介した研究のうち、外国の論文はこれを直接わが国の状況に当てはめることはできません。このサイトでは判断の参考資料を提供しているとご理解ください。したがって、いずれを選択するかは自己責任ということになるのが現状です。

帝京大学医学部薬理学 中木敏夫

ブランド品とジェネリック品の比較
1)ブランド医薬品(先発医薬品)のほうが勝っている例
2)両者同等の例
3)ジェネリック医薬品(後発医薬品)のほうが勝っている例

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最終更新:Friday, 24-Aug-2007 16:21:27 JST