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現在のラボはきわめて国際的です。 もちろんアメリカ人が中心ですが、 それ以外にもアジア (韓国、中国、日本。 アメリカ人同僚の中にも、お母さんが中国人のChinese American、 さらに前述のバングラデシュが母国の人もいます) ヨーロッパ・旧ソビエト(ドイツ、ウズベキスタン)と多彩です。
お昼時になると、時間があるときには何人かで一緒に食事をします。 といっても外食に出かけるのではなく、 大学または病院の食堂でランチを買ってきて、 ラボの廊下に置いてあるテーブルを囲んで食事をするわけです。 当方にとってアメリカに来た時、まず抵抗があったのはこのことでした。
廊下で食事をする、 たとえ屋内とはいえ人が騒がしく往来するなかでの食事は落ち着きませんでした。 当初は「両親から 『外での立ち食いや歩きながら食べるのはみっともないからやめなさい』 と教育されてきたからかな?」 と思っていましたが、 どうもそれだけではないようです。
周囲を見ていると、 中国人の同僚は他のラボの中国人と一緒に別の場所で食事をとっていますし、 バングラデシュ出身の人も廊下ではあまり食事をとっていません。 どうもアジアの人間にとってはアメリカの人たちと比べて 「食事はpersonalなもの、プライベートなもの」という意識が強いようです。 どうしてでしょうか。 これは食事の形態を考えてみるとわかるかもしれません。 ひとつ質問をしましょう。 日本料理というと何を思い浮かべますか? 「お寿司、天麩羅、しゃぶしゃぶ、すきやき・・」
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では中国料理ではどうでしょう。 インド料理はどうですか。 みなさんすらすらとお料理の名前が浮かぶことと思います。 では、アメリカ料理は? 当方考えていても思い浮かびませんでした。 アメリカ料理ってなんだろう?わからなければ聞いてみるしかありません。
ラボの同僚バニーにこのホームページのこと、留学便りのことを説明し、 食事のことをテーマに書くつもりなんだけどアメリカ料理って何?と聞いてみました。 「うーん、そうね・・ ホットドッグ、アップルパイ、ハンバーガー、 ピザ(ちなみにピッツアではありません、ピッツアはイタリア料理です) ・・健康的なものはなんにもないわね。あとバーベキューもそうかしらね。」
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アップルパイはともかくとして、 この答えの中にヒントがありそうです。 アメリカ料理(日本人からすると料理とは言えないのでアメリカンフードとしましょう) もといアメリカンフードはつまりは「食卓を囲んで食べる」ような代物ではないのです。 外で食べる、歩きながら食べる、そういったスタイルのものなんですね。 この辺はアメリカの国の歴史が関係していると思います。 アメリカはこの3−400年という短期間での発展を余儀なくされました。 というより、 何にもない土地に白人が「ここ僕たちの国」と決めて作った国です。 もちろんその土地でスパイスなどの香辛料がとれなかったのも一つの要因かもしれません。 しかし、食事を単なるエネルギーの補給手段と考えいわゆる"quick and bite"といったもので済ませる、 ただただ全速力で走ってきた歴史の中で、 ゆっくり時間をかけて楽しむような食事は発展してこなかったのかもしれません。 バーベキューにしても、開拓時代に外でとれた肉や野菜をそのまま焼くだけ、 というのが原形でしょう。 時間をかけて料理を作る、時間をかけて料理を味わう、 という習慣は本質的にはアメリカに存在しないのです。 成功したアメリカ人が他の文明をまねて食事を楽しむふりをするだけで、 しょせんアメリカ人には 「食事はゆっくり味わうものである」 という遺伝子情報はないように感じます。 家庭の食事にしても家族の団欒のための手段に過ぎず、 本当に食事を楽しんでいるわけではないと思います (母親が時間をかけて料理をしたとしても、 おいしい料理を作るのが目的ではなく 「母が家庭のために料理をしている」 という事実が重要なだけだと思います)。 物質的な繁栄をみるようになった現代アメリカにおいて snobなレストランでデイナーをと気取っても、 今までの歴史、文化を変えられるはずもなく、 結果として「おいしいデイナーにはイタリアンそれともチャイニーズ またヘルシーな日本料理はいかが」となるわけですね。 さて先日、その「ランチ・トーク」で愉快な論争がありました。 いわゆる「げてもの」の話題です。 きっかけは「中国料理には猿ののうみそ、というメニューがある」とことからでした。 このことに始まり 「バングラデシュには牛の脳みその料理がある(各種スパイス、野菜と一緒に炒めるそうです)」 「ドイツには腸のスープもあるし、ソーセージだって腸に血を入れてつくるものもある」 「日本人は朝ご飯に生卵たべるけど (これ、アメリカ人からするとげてものに入るらしいです、ちなみに納豆もげてものだそうです)」 「Korean barbecueでは、胃、小腸、心臓、横隔膜、子宮とか食べるよね」 「僕、横隔膜と子宮は好きだな」 (当方のコメントは斜め文字にしてあります) ・・・アメリカ人の同僚のコメントは 「大体そんなもの、食べる必要のないものだろ、栄養あるのか?食べるための部分じゃないだろ」 それに対する反論 「食事するときにいちいち栄養のこと気にするか?おいしいから食べるんだろ!?」 「じゃあ、そんなものが美味しいのか?」 「食べたことないなら美味しいのかわからないくせに」 ・・アメリカ人の中には「メキシコ料理にも牛の胃を料理したスープがあるし、おいしいもんだよ」 (彼はユタ出身、西部にてメキシコ料理などには大変馴染みがある)という意見もありましたが。 さてそんななか、 当方にとって「これは、日本よりアメリカの方が安くておいしいな」と思うものがありました。 それは・・サラダ、フルーツ、アイスクリームです。
![]() ま、素材そのまま、手をかけないもの、ってことでしょうか。 アメリカの食事について先日従姉と話す機会がありました。 従兄がマウイ島で結婚式をあげた時招待してくれたのです。 当方がアメリカで生活を始めてから会うのはこの時が初めてでしたので話ははずみました。
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目からうろこが落ちるとはこのことでした。 そういえば、一緒に寿司バーにいった時ラボの同僚はワサビはだめだって言ってたっけ ・・カレーみたいなスパイシーなものは食べられないって言ってたっけ ・・そういえば、去年学会でローマに行った時ラボの同僚が言ってたっけ ・・「イタリアのピザってまずいな、アメリカのピザの方がよっぽど美味しいよね」 ・・げっ、勘弁してよ、そんなわけないだろ、 ぶあつくてgreasyなだけのピザがピッツアより美味しい訳ないだろ と思ったけど、 その時は「そうだね、ま、全く別の食べ物だね」とごまかしたっけね ・・そう、アメリカ人の舌は日本人の子供の舌とおんなじなんですね。 そう考えると、ふふ、と笑ってしまいました。 2001.5 |
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