今回は「コーヒー」についてです。
日本人こと当方にとってはアメリカのコーヒーは率直に言うと、
「まずい」の一言です。
これはボクだけの感想ではないようで、
隣のラボにいる台湾からの人たちも「アメリカのコーヒーは薄くておいしくないわ」と言ってました。
日本でも「アメリカンコーヒー」と注文すると、
少し薄めで廉価なコーヒーが出てくるように感じます。
当方のいるWMRBという研究棟の5階には、外科と皮膚科の研究室があります。
その外科の研究室のうちのひとつが(当方が働いている)移植免疫研究室です。
そのフロアには外科オフィスのひとつがあり、
外科の助教授、講師7人とその秘書さん達が席をかまえています。
そのオフィスの中に小さなキッチンがあり、
電子レンジ、オーブントースターと並んでコーヒーメーカーが置いてあります。
ラボで働く人たちはみんなそこでコーヒーを作って飲んでいます。

コーヒーは、ポット一回分の挽かれたコーヒー粉がすでに袋詰めされていてそれをもとにコーヒーを作りますが、
当方が飲むときには1袋では少々薄くて物足りないので1袋半くらい使ってコーヒーを入れるようにしています
(それでも美味しくはないのですが)。
さて、ではなんでアメリカのコーヒーは「おいしくない」のでしょうか。
当方の(独断による)考察は以下の通りです。
1)生物学的側面
白人と有色人種(ことアジア系)ではカフェインの代謝または感受性が違うような気がします。
ラボの同僚(白人、過去をたどればドイツ系移民と推察される)のコメントは以下の通
りです・・

「コーヒーはさ、午後に飲むときには量を減らすんだ、
カップに半分くらいかな、
一杯飲むと夜眠れないからね。
夕方以降にはコーヒーは飲まないよ。
だいたい普通のコークを夜飲んだだけでも目がらんらんとして全然眠れないからね、
カフェイン・フリーじゃないとだめだ。
クリス(注:当方のラボのボスです)だってそうだよ、
手術の前にはコーヒーはカップ1/3って控えてる。
一杯飲むと血管吻合の時に手が震えるって言ってたぜ。」
一方、当方のまわりのアジア系の人はみんな
「アメリカのコーヒーは薄い」
「別に夜コーヒー飲んでも不眠に悩まされることはない」
と言っています。
当方も同じです。

また、疲れている時に眠気覚ましのコーヒーを飲んでその後に顕微鏡下の手術をすれば、
たしかに手が震えることもありますが、
普段は気にかけたこともありません。
こう考えると、
人種間でカフェインの代謝、感受性に差があるように感じてしまいます。
ちなみにその反対の例はアルコールです。
こちらの若い人たちはまさに「浴びるように」お酒を飲みますが、
全く酩酊する様子はありません。
赤ら顔にもなりません。
当方もアルコールは弱いほうではありませんが、
何度かparty(こちらでは若者のpartyは夜9時くらいから夜通し朝まで続きます)で一緒にお酒を飲んでみて
「こりゃあ勝負にならんわ」と感じました。
当方はハイピッチについていけず途中からジンジャーエールを飲んでいました。
「白人だからカフェインに弱い、とか、アルコールに強い」
っていうのは politically incorrectだ!と言われそうですね。
当方はそうは思っていません。
たとえ「その傾向がある」だけでもそれはそれで生物学的事実ですし、
いたずらに「PC (politically correct)」をふりかざすことこそ正しくない(incorrect)ことと考えています。
2)社会的側面

以下、2)3)は、当方の親友の一人である「コーヒー事情通」によるコメントです
(ご協力ありがとうございました)。
アメリカは1960年代にキューバ危機を経験しました。
その後もベルリンの壁およびソ連邦崩壊まで約30年間東西冷戦の構図は続いたわけです。
そのなかでアメリカは、
中南米諸国の中から「第二、第三のキューバ」の出現を恐れ、
貧しい国々に経済的な支援を行いアメリカ側にひきいれようと試みたそうです。
その一環が、中南米でとれた粗悪なコーヒー豆を輸入する、
という政策だったそうです。
この流れが現在も残っているのではという分析でした。

3)気持ちの問題
アメリカは自己責任の国です。
健康管理も自分の責任です。
極端に言えば、
たまたまガンになったとしても「できる限りの予防手段を講じなかった本人の責任」です。
そこには、運命をうけいれるという受動的な姿勢は存在しないように感じます。
こと健康に関するそのような自己管理の機運はここ10年くらいアメリカでブームのようです。


前述の親友の言葉を借りれば「-less」ブームだそうです。
たしかにその通り・・
カフェインレスのコーヒー・コーク、
fatlessのハム、
牛乳もfat-reduced milk、
sugar-lessの甘味料やアイスクリームなどなど・・

そのブームの中で自然とカフェインを否定する風潮となり、
薄いコーヒーしか飲まれなくなったんじゃないか・・
これは当方「その通りだ」と同感しました。
前述1)の同僚のコメントも、
当方からすれば「そりゃ、おまえ気分的な問題じゃない?!」ていうのが本音です。
「コーヒーはカフェインがあるから美味しいんであって、
カフェインが嫌ならコーヒーなんて飲まなきゃいいじゃん、
なんでカフェインレス・コーヒーなんて飲むわけ?」
これは当方の正直な感想です。
でも、この意見に同意してくれたのはラボの中でアジア出身の御友達だけでした。
ーーとまあ、ぶつぶついいながらも今日も仕事の合間にコーヒーを飲んでいるわけです。
ただ、一袋半使って濃い目のコーヒーを入れてもやっぱり美味しくないんですね。

なんか違うなと感じて、はたと気づきました。
「コーヒーの素敵な香り」が存在しないんですね。
こう考えるとアメリカの食事には「いいにおいだな!」と食欲をそそられるようなものがありませんね。
いいにおいがする御料理はやっぱり、アジアン・エスニックであったりイタリアンです。
コーヒーも含めてアメリカ料理には微妙なスパイスがないのかもしれません。
スパイスがないのはアメリカ文化全体に言えるかもしれませんね。
--------------------
あとがき;その1
アメリカでコーヒーが日本人にとって美味しくない理由、
また、アメリカンコーヒーという名前が日本でいつごろから、どのように出て来たのか、
ということに関してご意見お持ちの方がいらっしゃったら御便りください。


あとがき;その2
アメリカにもスターバックスコーヒーがあります。
スターバックスのコーヒーは当方にとっても大変美味しいものです。
ただ少なくともアトランタの物価水準からすると、
スターバックスのコーヒーは少々高価に思います
(日本ではそうではないでしょうね)。