最終回

ふうりがん日記

>>>「アメリカのワールドカップ事情・決勝戦観戦」<<<

三位決定戦のトルコ・韓国戦、とってもイイ試合でした。
審判も素晴らしかったですし、トルコ、韓国ともフェアプレーで、内容もわくわくする試合でした。
トルコは強かったですね。
今大会のトルコは日本がそう易々と勝てる相手ではなかったように思います。
何人かの選手がヨーロッパ各国で活躍しその他の選手が国内リーグで戦う、
また身体能力や戦術面も含めて、
日本が目標にすべき点はいくつもあるように感じました。
 さらに、試合が終わってすぐ韓国の選手に歩み寄り、
みんなで肩を組んで観客席へと挨拶に向かう姿、大変好感が持てました。

ちがった見方をすれば、
ヨーロッパ、ロシア、アジアに挟まれた国として歴史を持ち、
さらに移民労働者としてヨーロッパで多くの人が働く、
トルコの人々ならではの「生活の知恵」かもしれません。
でも素晴らしいことじゃないですか?
われわれに多くのことを教えてくれたような気がします。

さて、今回は決勝戦をアメリカからレポートします。
何分ライブの迫力には欠けますがその点御容赦のほどを。

(1)

----- 6月30日早朝、アトランタ、のび太のおうち -----

目覚ましで起きた時間は朝5時半。
日本とは13時間の時差です。
今日は決勝戦をラボの友人、ニコス君(ドイツ人フェロー)の家で観戦です。
決勝戦はちゃんとアメリカ3大ネットワークのひとつのABC放送でライブでやるんです。
 ちなみにトルコ・韓国の三位決定戦はABC放送では録画でした。
でも後述するスペイン語の放送局ではきちんとライブで流していて、
ボクはこっちで観戦しました。
 さて、今日の放送は朝6時半からです。
ボクはアルゼンチンジャージに着替えて出かけます。
途中で差し入れのコカコーラを買ってニコス君の家へ。
うーん、コカコーラ社のCM戦略に見事に嵌まってますねえ・・・

(2)

----- 同午前6時半、ニコス君のおうち -----

ニコス君はまだ寝ていました。
ニコス君はドイツ人とギリシア人のハーフです。
ほかのドイツ人のお友達、マーチン君に言わせると
「彼はGreek ancestersを持ってるから、けっこうルーズなんだよね。」とのこと。
この辺、ドイツ人同士ですが、面白いですよね?
 さて、彼の家でABC放送をつけます。
ニコス君はドイツの国旗のバッチを付けて臨戦態勢です。
たしかキックオフはこちらの午前7時から。
じゃあ、試合前のセレモニーから観れるかなと思いましたが・・
 あれっ?
ABC放送では番組は始まっていたのですが、
つまらん解説や今までの総集編を流していて一向に日本からのライブ映像に変わりません。
どうなっとるんじゃい?
ボクはもう一つのスペイン語の放送局にチャンネルを替えました。
 このスペイン語の放送局は「UNIVISION(ウニビシオーン)」という名前で、
アメリカ国内に沢山いるヒスパニックの人たちのための放送局です。
ボクの家のケーブルテレビは最近調子が悪く、
ABC放送やワールドカップを放送しているもう一つのチャンネルESPNがキレイに映らないので、
アメリカに戻ってからはこのウニビシオーンで試合観戦していました。
ボクはもちろんスペイン語はからっきしだめです。
でも、サッカーの試合を観るのには言葉は必要ないですよね。
あと、このチャンネルのもう一つの楽しみ、それは、、、

試合で得点が決まると、実況アナウンサーは必ず

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
             オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
                         オオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーール!」

と一分以上叫ぶのです。
ちょうど得点を決めた選手が小躍りしてスタンドに向かい仲間の選手と抱きあってガッツポーズする間、
バックでは観客の歓声に混じって
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーール!」
しつこいですね!?すみません。
でも、ゴール、と大声で怒鳴っているわけではないのでとっても雰囲気出てますよ。
ボク、大変気に入ってます。

さてさて、チャンネルを替えるとウニビシオーンでは、
試合前からきちんと競技場を中継していました。
天皇陛下とキム・デジュン大統領が映っています。

すると、ニコス君が尋ねてきました。
「どうしたんだ?」
「うん、ウニビシオーンにチャンネル替えた。」
「ゴオオオオーーール!かい(笑)?でもいったいどうして?」
「ABC放送ではつまらん解説をやっていて試合前のセレモニーを放送していないんだ。」
「ESPNはどうだ?」
「ん、やってない。」
「まったくどうなってるんだ!」
「そういえば、ABCもESPNもワールドカップの試合はキックオフ5分前からしか放送してなかったよナ」とボク。
「It is ridiculous!! 試合前の選手の入場やnational anthemがまたイイんじゃないか!!」

その通りなんです。
ボクらにとっては試合前にFIFA 2002 World Cupのテーマに載って各国の選手が入場してくるところから
鳥肌がたつんです。
それに、いろんな国のnational anthemを聞くのも、
その国々の特徴があってとても楽しいんです。
でもアメリカのワールドカップ放送にはそれがない。
もしかして45分間の試合中にCMを一回も挟めないから?
試合前はCMばかり流さないとスポンサーに怒られるから?
とも思いましたがどうも違うようです。
だって、ABC放送では試合前30分間に、
しょーもない解説と総集編を流していたのですから。

「おいニコス、お前、アメリカの試合、テレビで観たかい?」
「うん、観たよ。」
「どうだった?やっぱりnational anthemなどのセレモニーをカットしてたのかい?」
「いや、ちゃんと流してたよ。」
ボクらはウニビシオーン・チャンネルで試合前のセレモニーを楽しみました。
ブラジルの国歌はマーチみたいに軽快です。
ドイツの国歌は対照的に厳かなものでした。
ニコス君に聞いたところハイドンが作曲したものだそうです。
 しかし、つくづくアメリカという国は不思議ですね。
ほかの国の国旗や国歌はテレビで放映しないんでしょうか?
自分が大好き自分が一番、
それはそれで結構ですが、なにもねえ・・・・

(3)

----- 午前7時、キックオフ -----

ボクはドイツを応援していました。
ニコス君の手前、というわけではありません。
個人技だけで突破して点をとってしまう今回ブラジルチームのサッカーよりもドイツのサッカーの方が好きだったからです。
でも、やっぱりブラジルが勝ちましたね。
ドイツは決定力に欠けていました。
一方ここぞという時にはリバウド、ロナウド、クレベルソンなどは素晴らしいプレーを見せますね。

ボクには試合終了後のカーンの表情は印象的でした。

「残念だったね。」
「あー、悲しい結果だ。」
「まあ、4年後があるじゃない。」

このあとボクらは、
さっさとなんの余韻もなく通常の放送に戻ったABCからウニビシオーンへとまたチャンネルを替えて、
試合終了後のセレモニーを楽しみました。
ブラジルの選手はとっても嬉しそうでしたね。

TシャツにJESUSの文字が踊っているのがまた印象的でした。
自分もがんばったけど神様チャンスをくれてありがとう、
といったところでしょうか。
また、ドイツの選手のTシャツには
「2006年ドイツで会いましょう。」とあり更に、
日本語で「ありがとう、日本」、
ハングルで(おそらく)「ありがとう韓国」
と書かれていました。

(4)

----- 午前11時、のび太宅 -----

家に帰ってきてからもウニビシオーン・チャンネルを観ていました。
ここではさらに試合のダイジェスト、
試合前のセレモニー、

試合後の各国各地のブラジル応援団の歓喜の沙汰を延々と放送していました。
 ここで日本の家内から電話です。
「ね、試合観た?」
「観た観た。ブラジル勝ったねえ。」とボク。
「うん、ブラジル強いねえ。」
「うーん、ここって時にはロナウドだもんなあ。」
「大五郎ね。」
「ん?だいごろう?」
「ほら、あの髪形よ。『しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん・・』」


画像をクリックすると大五郎がハッキリわかります。

「あー!?大五郎って、あの、、、」
「うん、でもね、あの髪形ブラジルで今、人気らしいわよ。」

「うそでしょ!?」
「うそじゃないってば。あたしも信じられないんだけどね。アメリカではあの髪形なんて言ってる?」
「Idiotだって。」
ま、そりゃそうだよね、普通じゃないもんね。
「そっちでは試合、どうだったの?」とボク。
「うーん、病院ではドイツ応援してる人、
多かったかな?終わってからのカーンの表情、
印象的だったね。

そうそう、試合後のセレモニーも観たの?」
「うん、観た観た。」
「あの折り鶴も観たの?」
「ん?銀紙がひらひら舞ってたやつ?あれ、ただの銀紙じゃないの?」
「途中からスタジアムに舞ってたのは、全国から送られてきた折り鶴なのよ。」
へえ、そんなのあったんだ。
早速JAWOCのサイトをチェックすると「夢の翼プロジェクト」とありました。
けっこう素敵なこと、やってるのね。
「試合前のセレモニーも観た?あの、富士山が出てくるのとか。」
「あー、ダイジェストでね。しかし、出て来たねえちゃんみんな着物来てたよね。

あーゆう演出するとまた外国の人は『日本ではみんな着物来て、、』なんて誤解するのよねー。」
「いいじゃない?ひとつの民族衣装なんだから。」
「ま、楽しかったな、この1ヶ月。4年後ドイツ、行こうねん。」
「休みとれるかしら?!」

ほんとにこの1ヶ月は楽しいものでした。
サッカー自体をこれだけ深く楽しんだこともありませんでした。
そしてなによりも、
いろんな世代の人、いろんな国の人とサッカーを通じて楽しく話が出来たのが一番の思い出です。
そこには偏った感情はありません。
日本外国を問わずお互い違う文化背景を持った人と人とが、
ワールドカップというチャンスを利用して素直に理解を深めようと交流していたのです。
ビジネスという損得を含んでいない分、
ボクがアメリカで経験してきたものよりもピュアで貴重な経験でした。
 さてさて、次は3年後のアジア予選です。
日本でのホームゲームはともかくとして、ドーハ、ジョホールバル、ウズベキスタンなどなど、
アウエイのゲームへ応援に行くのか?
どうする、のび太?!

2002.7.4