発生の区分には,幾つかの分け方がある.たとえば,
embryo:胚子 = 妊娠 2か月
fetus :胎児 = 3か月以降 出生まで
妊娠 → 全38週(臨床産科では 40週
①受精~第3週 前胚子期
受精 → 着床 → 胎盤形成 → 原腸形成(外・内・中胚葉の三胚葉の形成)
②第4 ~8週 胚子期(器官形成期)
さまざまな臓器が形成される
※ この時期が奇形発生に最も感受性が強いため 妊婦への投薬や感染症は注意が必要
③第9 ~38週 胎児期
組織・器官の成熟と体の急速な成長
【 ちょっと詳しく 】
★発生起源の概要
眼の起源は大きく2つある.
外胚葉
・神経外胚葉:網膜・視神経(前脳),虹彩毛様体上皮,瞳孔括約筋・散大筋,第二次硝子体
・表層外胚葉:水晶体,角膜上皮,結膜上皮,眼瞼皮膚,睫毛(付属腺を含む),Meibom腺,涙腺
間葉組織(結合組織 ≒ 中胚葉
・沿軸中胚葉:外眼筋(横紋筋線維),血管(内皮),脈絡膜・強膜・角膜の一部,
・神経堤(外胚葉由来):角膜実質・内皮,強膜,脈絡膜,隅角・線維柱帯,虹彩毛様体実質,毛様体筋,第一次硝子体,ぶどう膜・皮膚の色素細胞,眼輪筋,瞼板(Müller筋を含む),平滑筋をふくむ血管周囲細胞,Schwann細胞,結膜下結合組織,眼瞼・眼窩の脂肪結合織,軟骨・骨組織
★臨床的側面 先天異常あるいは形成異常
1)無眼球~小眼球:胎生2〜3週,眼胞の形成異常による.
2)小眼球~先天囊胞眼:胎生4週ころの眼杯の形成異常による.
3)先天白内障
・胎生4週ころの水晶体胞形成から12週ころの核形成時期あたりの異常.核消失から線維形成あたりの異常.
・第4〜7 週の風疹罹患によるものも重要.
4)先天無虹彩:眼杯先端の分化障害.同時に眼杯内層(黄斑形成,など)の分化も未完.
5)虹彩欠損・脈絡膜欠損:6週ころの眼杯裂の閉鎖失敗.
6)硝子体動脈遺残:9か月には消失している.
7)瞳孔膜遺残:マクロファージの貪食により8か月には消失している.
8)生理的陥凹~朝顔症候群~乳頭低形成(視神経乳頭部の形成異常
乳頭部では硝子体動脈とグリア組織の消えた跡が陥凹となる.グリアの遺残(例えれば,胎児期のままであるの)が Bergmeister乳頭である.これらにより,血管系の形成が混乱していることがある.
時に軸索の伸展失敗(神経節細胞の軸索は乳頭をめがけて伸びていく.方向を誤ると視神経にならない),篩状板のサイズ(神経線維を通す面積),等の不揃いから,コロボーマ,乳頭低形成,視神経低形成,小乳頭となる.
9)PAX6変異:
そのた
★PAX遺伝子(ペアードボックス遺伝子)
動物に共通するホメオボックス遺伝子(PAX=“PAird homeoboX”).PAX遺伝子ファミリーと呼ばれ,paired box という領域をもつ遺伝子である.元はショウジョウバエの paired変異に関する遺伝子研究からマウスに相同遺伝子が発見され,多くの動物種に共通する塩基配列として研究された.
PAX遺伝子は,発生上で重要な役割を担う遺伝子ファミリーである.哺乳動物では9つのファミリーが報告されている.また構造により,group 1 (Pax 1と 9),group 2 (Pax 2, 5 と 8),group 3 (Pax 3 と 7),group 4 (Pax 4 と 6) の,4つのサブファミリーに分類される.これらは,発生の胚において組織の発達や細胞の分化の制御,細胞増殖の促進,細胞系統の規定,移動性,生存を制御する.
なお,ヒトでは PAX,動物では Pax のように表記する.
■ PAX2 遺伝子:10q24領域にある.
PAX2異常は,視覚器,聴覚器,中枢神経系のミエリン形成化障害を引き起こし,同部位の形態・機能異常の原因となる.眼球では主に,胎生裂閉鎖不全による視神経・網膜の異常を示す.
腎コロボーマ症候群 human PAX2 mutation syndrome(旧;renal coloboma syndrome)は,小児期に(末期)腎不全に至る可能性のある代表的疾患の一つである.視神経コロボーマ乃至朝顔症候群の形態が多いようである.
■ PAX6 遺伝子:11p13領域にある.
PAX6は,神経外胚葉,神経堤細胞,小脳の発生を含む中枢神経の発達などに関与する.眼では,眼杯,神経網膜,水晶体,角膜上皮で遺伝子が発現する.これにより,
PAX6異常では,主に神経堤細胞の移動不全により,角膜・前房隅角・毛様体・水晶体・黄斑部などに原発病変をきたす.これらが
先天無虹彩,黄斑低形成,前眼部形成不全,瞳孔形成異常,家族性角膜ジストロフィ,先天白内障,などである.なお,虹彩異常では軽症型あるいは異型ともいえる僅かな萎縮のみなど,幅広い表現型を示すとのことである.また先天眼振についても視力不良や黄斑低形成による続発症状ではなく,原発性に発生したものとされる.研究者は,眼球運動の制御機構が円滑に形成されない,と説明する.
先天無虹彩では 片アリル の機能喪失によって機能遺伝子量が半減
(ハプロ不全)・不足することで発症.両アリルが異常であると胎生致死になる,とのことである.
✓ ホメオボックス:生物に共通する単一の発生制御システム.他の遺伝子の働きを抑制するマスター遺伝子.転写調節因子
加齢とは誕生以降の成長・成熟・老化といった一連の累積を指す.ただし世間一般では 加齢≒老化 ということで使われることが多い,かもしれない.sene には
『
ということで,
定型的な加齢変化は以下のようである.
【
病理 では 】
*涙 器: | 腺実質細胞が萎縮し,涙液分泌量が低下する. 排泄能が低下する. |
*結 膜: | 瞼裂斑 pinguecula =結合織の増殖変性 palisades of Vogt の消失(角膜幹細胞の機能減退 |
*角 膜: | 老人環(輪部混濁 arcus senilis・gerontoxon =リン脂質沈着.輪部血管の透過性亢進による. limbal girdle of Vogt(3時9時の線状混濁.上皮下の弾性線維変性 色素線(褐色線 Hudson᠆Stähli's line =鉄沈着 実質の薄層化(特に輪部では senile furrow という)・混濁. Descemet膜の肥厚 内皮細胞 =密度の減少,大小不同(形の不揃い),ポンプ機能の減少 倒乱視化.知覚低下.など |
*強 膜: | 黄色化 =脂質 含水量の減少,弾力性の低下(硬性の増加 |
*瞳 孔: | 縮瞳 senile miosis =副交感神経の相対的優位状態.EW核に対する中枢抑制の減少のため? 散大筋の萎縮(括約筋より有意に影響が出る (焦点深度を大きくして老視をカバーする,とも解釈されている. 虹彩の菲薄化(血管閉塞 ? |
*毛様体: | 組織的には筋線維は萎縮し結合組織に置き換わる.毛様体輪の径が縮小し収縮力低下を補うことで,機能低下はわずかとされる. 調節力の低下 presbyopia は,主に水晶体の硬化による. 無色素上皮細胞基底膜肥厚により,房水産生が低下する. |
*前 房: 房 水: |
前房深度・容積は減少する.狭隅角化する.(水晶体厚の増加と前方移動による) 線維柱帯の色素沈着・コラーゲン線維の肥厚により房水流出抵抗が増加する. (病的な加齢変化の加速が緑内障ともいえる) |
*水晶体: | 前後径の増加,囊弾力性の低下,着色・自家螢光物質・含水量の増加,核の硬化・混濁 cataract |
*硝子体: | 液化 liquefaction と収縮 syneresis ・後部硝子体剝離 → 【第六章】硝子体 |
*網 膜: | 杆体が減少(80代で30%の減少)する(暗順応機能の低下).錐体のほうが目減りが少ないらしい 神経節細胞が減少(70代で50%の減少)し,中心窩陥凹が浅くなる. 基底膜(内境界膜・Bruch膜)が肥厚する. 神経細胞内にリポフスチン顆粒が増える. |
*網膜色素上皮: | 数(密度)の減少,不整形化,リポフスチンの増加,メラニンの減少(豹紋化 乳頭周囲萎縮(輪状コーヌス 耳側コーヌス 血液関門機能の低下(これだけでは臨床的にはあまり問題にはならない 網膜→脈絡膜への水の輸送の障害 Bruch膜:コラーゲン・エラスチンが変性し弾性が低下する.ドルーゼンが増加する.Drusen=塊 の意で,消化・通過しきれない細胞残渣・色素上皮細胞の崩壊産物が蓄積したもの. → 【眼底検査】眼底の加齢所見 OCTではRPEⲻBruch膜複合体のラインは,菲薄化ないし不明瞭化をきたす. |
*脈絡膜: | 毛細血管減少,メラノサイトが外層へ移動(豹紋化に関わる 硬化性変化 → 内腔狭窄・血管層菲薄化 → 血流減少 |
さて,
わが国の「視能矯正」の歴史は,1960年代が黎明期といわれます.
当初,
(ずいぶん昔だ)
視能つまり視覚機能の増強訓練を目的としたのが視能訓練士
(視力回復センターとの違いはすぐに実感することになるので心配することはない)
国家資格としては,1971年に小児に対する弱視や斜視の検査と訓練を主とする職種として制定されましたが,現在では,眼科領域での唯一の専門医療技術者として業務の守備範囲は眼科領域全般に亘り,一般眼科検査・集団検診・ロービジョン者への補助具の指導など広範な検査業務に従事することになります.
視能訓練士なくして眼科診療業務は成り立たないといっても過言ではありません.
今,
私たちは眼科の世界の扉を開けました.
ここまでの「解剖学」では,構造 structure のほかに,一部の機能
2学年以降の生理学・機能学・検査学・疾患学への礎になるでしょうか ?