( 補足資料 3)

緑内障性視神経乳頭・網膜神経線維層変化判定ガイドライン


  1. 1.眼底検査法

    視神経乳頭部や網膜神経線維層の観察においては,事情が許す限り十分に散瞳をし,十分な光量を用いて行うのが基本である.

     1)検眼鏡法
     視神経乳頭の観察には十分な拡大が必要であり,その意味で検眼鏡による観察で推奨されるのは直像鏡法である.中間透光体混濁が強く直像鏡での観察が困難な場合を除き,14Dあるいは20Dのような倍率の低いレンズによる倒像鏡検査は乳頭像が小さくなりすぎ観察には不向きである.

     2)細隙灯顕微鏡法
     視神経乳頭や網膜神経線維層を立体的に観察することは重要である.この場合,細隙灯顕微鏡下に眼底観察用レンズを用いて行う.
     直接法としては,Goldmann面鏡等の中央部分を用いて細隙灯顕微鏡下に行う.スリットビームにて陥凹の拡がりと深さを強拡大で観察する.
     間接法としては,78D,90Dなどの前置レンズを用いて行う.この場合,像は倒像となるので注意する.

     3)眼底写真撮影法
     眼底変化の観察と経過の記録に有効な方法の1つは写真撮影することである.立体写真の撮影が望ましいとされている.
     撮影は乳頭を中心とし,乳頭部の記録には画角30度程度,網膜神経線維層の記録には画角45度以上の撮影が適している.

     4)無赤色眼底観察法
     網膜神経線維層の観察は日本人の眼底の場合,これまで述べてきた方法で充分観察可能ではあるが,視神経線維層の僅かな欠損の検出には無赤色光による眼底撮影が推奨される.高解像度の白黒フイルムを使用し,無赤色光にて眼底撮影する.無赤色フィルターが附属していない眼底カメラでは,最大透過率が 495nm付近にあるフィルターを用いて撮影する.

     5)次元眼底画像解析法
     次元画像解析法を用いた緑内障診断は広く臨床に応用されている.現在はOCTを用いるのが最も般的と考えられる.通常,乳頭周囲の網膜神経線維層厚を測定するプログラムと黄斑部における網膜神経節細胞複合体(GCC)厚,あるいは網膜神経節細胞層と内網状層(GCIPL)厚を測定するプログラムがあり,これらの結果を総合して診断する.

     OCTでは,緑内障においてもっとも早期から変化が⽣じる部位の1つである⻩斑部の網膜神経節細胞層を中⼼とした網膜内層の変化が検出できることから,OCTを⽤いて初めて診断できる緑内障も増えてきた.特に臨床的に検出できる視野障害が出現する以前の段階の緑内障性視神経症,いわゆる前視野緑内障においては, 画像解析装置による診断が主体となる.しかしながら,画像解析装置においても測定精度の限界があり,また様々な測定状況によりアーチファクトの出現も少なくない.また,画像解析装置で異常が⽰されるのは緑内障に限らない.したがって,測定結果を鵜呑みにせずに,最終的な判断はあくまで様々な検査結果を総合してなされなければならない.

  2. 2.視神経乳頭および網膜神経線維層の観察ポイント

    視神経乳頭や網膜神経線維層に緑内障による変化が生じていないか,前項で挙げた5つの眼底観察法を適宜用いて判定する.最近では, Spectral DomainOCT (SD-OCT)による判定法の⾼い有⽤性が認識されている.判定法は大きく,(1)質的判定と, (2)量的判定に分かれる.以下に,それぞれの判定の基準となるポイントを挙げる.

      1)質的判定
     ・視神経乳頭の形状
     ・視神経乳頭陥凹(以下,陥凹)の形状
     ・視神経乳頭辺縁部(neuroretinal rim.以下,リム)の形状
     ・視神経乳頭出血(以下,乳頭出血)
     ・乳頭周囲網脈絡膜萎縮(parapapillary atrophy:PPA)
     ・網膜神経線維層欠損

     (1)視神経乳頭の形状
     視神経乳頭外縁は, 検眼鏡的に観察される乳頭周囲の⽩⾊の強膜リング(Elschnigの強膜リング)の内側と規定される.視神経乳頭の形状は様々であるが,通常やや縦長で,縦径は横径に比べて 7~10%程度長い.般に8D以下の近視眼では,乳頭形状その他に正常眼との明らかな差はみとめないが,-12Dを越える近視眼では,縦長の程度が強くなると報告されている.乳頭形状は,年齢,性,体重,身長とは関連しない.
     視神経乳頭の大きさ,すなわち乳頭表面を面としてみた場合の面積は定ではなく,個人差が非常に大きい.小さい場合では,約0.8mm² から大きい場合は6mm² までのばらつきがある.日本人における平均面積は,ハイデルベルグレチナトモグラフを用いた多治見スタディの報告では2.06±0.41mm² と報告されている.視神経乳頭の大きさは,約10歳以降は年齢と相関しなくなる.性別,身長,体重,屈折異常との関連については,報告によって異なり,定の見解は出ていない.しかし,屈折との関連については,少なくとも±5D以内では,乳頭面積は屈折度に相関しない.ただ,近年ではSD-OCTを用いることにより,解剖学的に真の乳頭縁であるBruch膜断端の観察が可能となった.これまで検眼鏡や眼底写真で判断していた乳頭縁とは異なるとの報告もなされていることから,今後乳頭形状に関する知見が変化していく可能性はある.

     (2)陥凹の形状
     視神経乳頭内に観察されるへこみの部分を陥凹と呼ぶ.陥凹外縁は,⽴体的観察では視神経乳頭外縁で境界された視神経乳頭部の中で,陥凹が始まる番外側部分と規定され, 検眼鏡的には細い乳頭内⾎管の⾛⾏を追い,その屈曲部位の頂点が通常陥凹の外縁と致する.陥凹は,陥凹外縁で境界された範囲の内側の部分と定義される.陥凹の拡大は視神経乳頭にみられる緑内障性変化における最大の特徴のつである.パラー(pallor)と呼ばれる乳頭の蒼⽩部だけを観察して乳頭陥凹を判定しないように注意する必要がある.正常眼の陥凹は,やや横長の広がりをもち,その位置は視神経乳頭の完全な中央ではなく,やや上方に偏位する.また,正常眼では陥凹の大きさは乳頭の大きさに比例し,大きな乳頭ほど大きな陥凹を持つ.陥凹の広がりを観察するには立体観察が最適であるが,それができない場合は,乳頭内の血管走行で判断する.網膜血管は,陥凹壁に沿って這い上がり,陥凹緑まできたところで,走行を変化させる.平面的に観察すると,血管の走行が屈曲して見えるところが陥凹外縁と判断できる.方,SD-OCTでは,陥凹の外縁は,Bruch膜断端あるいは網膜色素細胞層断端が観察されるレベルと定義されていることが多い.

     緑内障において,陥凹の拡大が生じる場合,それは次元的な拡大と次元的な深さの拡大とが平行して生じる.すなわち,すでに存在する陥凹はより深くなりながら新たな陥凹が生じていく.陥凹が急速に拡大していくと,本来陥凹緑の内側にそって走行する小血管がその拡大に追いつけず,拡大した陥凹の底部あるいは,陥凹のスロープ中に取り残され露出した状態が生じる.これを bared vessel(露出血管)と呼ぶ.このような血管の存在があれば,陥凹の拡大が進行していることを示す重要な所見となる.陥凹の拡大に伴う乳頭内の血管の変化としては,このほかに網膜中心動静脈の乳頭鼻側への偏位が挙げられる.この変化は比較的目立つものなので,眼底写真などで乳頭陥凹を経過観察する場合,変化を示す指標として役立つ.陥凹の深さの程度は,陥凹底を通して篩板孔が透見できるかどうかによって,およそ知ることができる.篩板孔が透見できれば相当深いと考えてよい〔ラミナドットサイン,laminar dot sign〕.ただし,この所見は緑内障性の変化だけに特異的なものではなく,生理的な陥凹でも,時に観察されることがある.

     (3)リムの形状
     リムとは,検眼鏡的には乳頭陥凹の外縁と乳頭外縁との間の部分であり,乳頭部において神経線維が存在する部位である.般に大きな乳頭ほどリム全体の面積はより大きくなる.ただ,これは般的な傾向であり,実際には神経線維数,神経線維密度,篩板の構築,グリア細胞の数の個人差により,結果的にリムの大きさにも多くの個人差が存在する.
     般的に正常の視神経乳頭はやや縦長であり,逆に乳頭陥凹はやや横長であることから,リムの形状はこの乳頭陥凹の形態との関係で様々に変化する.欧⽶⼈の眼では通常リムの番広い部分は,乳頭下方であり,ついで乳頭上方,乳頭鼻側の順で薄くなり,番薄いのは乳頭耳側部分である(ISN'Tの法則).⽅、久⽶島スタディの健常者 2210 眼を対象とした研究では ISN'T の法則が当てはまるのは 4.4%に過ぎないことが明らかにされた.このことから,乳頭耳下方の神経線維層の視認性は通常高い.この傾向はしかし大きな視神経乳頭ではあまり明瞭ではなくなり,リムは全周にわたって比較的均等な幅をもつようになる.また,近視眼では,耳側乳頭部のリムが番薄く,番広い部分は通常,鼻側乳頭部である.

     緑内障性変化を生じた視神経乳頭では,陥凹は乳頭全周方向に浅く均に拡大するが,多くの場合,陥凹の拡大は乳頭の上下方向どちらかにより強く生じる.これに伴い,乳頭の上極もしくは下極あるいは両極でリムの進行性の菲薄化が生じる.さらに進行すると,浅く陥凹した部分は深みを増し,陥凹とリムの境界はより明瞭になり,リムの局在性の菲薄化,すなわち切痕(ノッチング)が生じる.この変化は,網膜神経線維欠損が存在することを示唆する重要な所見となる.病期が進行すると初期病変として観察された切痕部はさらにその幅と深さを増し,血管は乳頭縁で強く屈曲するようになる.このとき,血管走行が銃剣状に屈曲してみえる状態を bayoneting と呼ぶ.さらに進行すると陥凹は最初の切痕部と対側にあたる方向にも伸展し明瞭な縦長の陥凹となり,リムは上下耳側で消失する.この時期になると視野障害は上下に弓状暗点を示すようになる.後期に至ると陥凹は乳頭全体に拡大し,リムは通常,鼻側の部を除いてほぼ全周消失する.

     (4)乳頭出血
     視神経乳頭出血は,緑内障性変化を持つ視神経乳頭にかなり特異的に生じ,健常者ではまれで(0~0.21%),特に反復してみられた場合は病的意義が高い.乳頭出血の頻度は他の緑内障眼に比して正常眼圧緑内障眼において高い.また,リムの切痕部や網膜神経線推層欠損の存在する部と致して出現しやすく,乳頭出血の約80%は網膜神経線維層欠損部に致するか,その近傍に観察される.これらの結果は,乳頭出血と乳頭の局所的障害の関連性を裏付けるものであるが,必ずしも緑内障眼に特徴的な所見とは言い切れない.いずれにせよ,乳頭出血はそれが観察された段階でリムの切痕や網膜神経線維層欠損の存在を示唆されるものと考えてよい.さらに特に正常眼圧緑内障では,乳頭出血が観察された症例ではそうでない例に比して視野障害進行の割合が高いことも知られており,臨床上重要な所見であるので注意する.

     (5)乳頭周囲網脈絡膜萎縮(peripapillary / parapapillary atrophy:PPA)
     乳頭周囲網脈絡膜萎縮すなわち PPA は,健常者に比して緑内障眼で高頻度に観察され,面積も大きい.原発開放隅角緑内障(広義)眼においては,いわゆるPPAβ域は約80%にみとめられ,その面積は視野指標のMD(mean defect)値,CPSD(corrected pattern standard deviation)値のいずれともよく相関する.PPAが生じる原因と緑内障の進行とが直接結び付いているか否かはまだ証明はされていないが,緑内障の進行とPPAの存在の有無が有意に関連し,また視野障害の進行と伴に PPA の大きさも拡大することが知られている.したがって,緑内障性視神経乳頭障害にかならずしも特異的な変化ではないとしても,視神経乳頭部の何らかの脆弱性を示唆する所見として意味があると考えられる.近年,これまでPPAα域とPPAβ域に分けられていたPPAに加え,PPAγ域の所見が組織学的に報告されている.このPPAγ域は緑内障性変化に関連するとされるPPAβ域とは異なり,強度近視眼(長眼軸長眼)に関連するものとして注目されている.臨床的にはOCTを用いて同定可能である.

     (6)網膜神経線維層欠損の有無
     網膜神経線推層欠損は,乳頭陥凹拡大や視野欠損に先行して生じる場合も多く,早期に生じる緑内障性眼底変化といわれており,その所見は重要である.正常眼においては,検眼鏡的に網膜神経線維層は耳下方で最も視認性が高く,次いで耳上側,鼻上側,鼻下側の順になる.乳頭直上,直下,耳側,鼻側は,検眼鏡での確認は難しくなる.この網膜神経線維層の視認性は年齢とともに減弱し,これは140万本近くある神経線維が加齢により減少(年間4~5,000本)することと致する.通常の臨床の場では,細隙灯顕微鏡で,78Dか90Dの前置レンズを用い,無赤色フィルター光にて最もよく観察できる.神経線維束は,白銀色の筋としてみられる.視神経乳頭から約2乳頭径離れると,網膜神経線推層は薄く刷毛状になり徐々に見えなくなる.ただし,網膜神経線維層欠損の検出においては,現在では検眼鏡あるいは眼底写真などよりも,時にSD-OCTを用いた観察のほうが有用であることも多い.
     網膜神経線維層において,網膜血管径より細いスリット状,溝状,あるいは紡錘状の,見欠損に見える変化は正常眼でも観察される.しかしながら,網膜血管径より太いスリット状,楔状欠損が観察される場合は,緑内障性変化である可能性が高い.この場合,その部分の網膜は視神経乳頭外縁から延びる暗い帯状の変化として認められる.網膜神経線維層欠損が検出され且つ, 視神経乳頭にも緑内障性変化を伴えば,緑内障性視神経障害の存在はほぼ確実となる.方,網膜神経線維が菲薄化してくると,網膜血管周囲の神経線維層が薄くなり,血管壁はより明瞭に観察され,神経線維の上に浮き上がったように見えるようになる.このような変化も,網膜神経線維層の欠損を示唆する重要な所見となる.
     また,網膜神経線維層欠損はリムの萎縮がみられる部位に多く観察され,さらには,すでに述べたように,これに近接してリムから隣接する網膜上に及ぶ乳頭出血のみられることがある.
    網膜神経線維層⽋損の同定にも OCT は有⽤である.⻩斑部網膜内層の菲薄化が緑内障性であるかどうかの判定には temporal raphe sign が有⽤である.

     (7) OCT による篩状板観察所⾒
     スペクトラルドメイン OCT の EDI 法やスウェプトソース OCT を⽤いると,乳頭深部に存在する篩状板を描出することが可能である.これらにより,緑内障眼では⾼頻度に篩状板に部分的な⽋損所⾒(lamina cribrosa defect)を認めることが明らかになってきた.正常眼圧緑内障眼や乳頭出⾎既往眼, 視野障害進⾏例で多く認めるとされ,緑内障の速い進⾏との関連も⽰唆されている.強度近視の緑内障眼では⾼頻度に認めるが,近視眼の場合には必ずしも速い緑内障進⾏と関係しないとの報告もある.また,OCT による乳頭深部の撮影によって,篩状板の後⽅変位や後⽅湾曲が眼圧依存性に変化することも観察可能である.しかしながら,現在のところ篩状板の観察⽅法や所⾒の定義は標準化には⾄っていない.

     2)量的判定

     (1)検眼鏡、細隙灯顕微鏡、眼底写真撮影法による量的判定
     視神経乳頭, 網膜神経線維層の半定量的把握には, 陥凹乳頭径⽐(cup-to-disc ratio:C/D比), リム乳頭径⽐(rim-to-disc ratio:R/D比)が⽤いられる.

     a)C/D比の定義
     視神経乳頭陥凹の最大垂直径と最大垂直視神経乳頭径との比を,垂直C/D比と定義し,陥凹の水平径と水平視神経乳頭径との比を,水平C/D比と定義する(図 1).緑内障性変化有無の判定には,垂直径がより有用である.C/D比には,乳頭径と陥凹径を同線上で判定する方法もあるが,本ガイドラインでは,Glosterらの判定法を採用した.
     正常眼では,その分布は正規分布ではなく,多くの場合C/D比は0.3以内であり,0.7を越えるものは全体の1~2%である.しかしながら,立体視を用いて行われた評価では,C/D比は正規分布しており,平均0.40.7以上は5%であったと報告されている.また,正常者では陥凹は左右眼で対称的であり,水平C/D比の左右差が0.2を越えることは,成人,乳幼児ともに正常者の3%以下にしか認められない.したがって緑内障診断的にはC/D比は個人内の左右眼の差において臨床的意義がある場合も多い.

     b)R/D比の定義
     リム部の幅とそこに対応して乳頭中心を通る乳頭径との比(図 2)をR/D比と定義する.放射状に乳頭のすべての部分でR/D比は算出できる.比の値がゼロに近いほど,リムは薄いことになる.

    図 1・2

     c)乳頭黄斑距離 / 乳頭径比( disc-to-macula distance/ disc diameter ratio:DM/DD比)の定義

     大きな視神経乳頭では生理的陥凹は大きく,小さな乳頭では陥凹が明瞭でない場合もある.したがって,乳頭陥凹が緑内障性か否かを判別する際には,乳頭サイズを念頭に置きながら判定することが重要である.視神経乳頭中心から黄斑部中心窩までの距離はおよそ定であるので,視神経乳頭径(DD)と乳頭中心から中心窩までの距離(DM)の比をとることにより,およその乳頭のサイズを知ることができる(DM/DD比).通常この比は,2.4~3.0の間であるので,それより小さい場合は大きな乳頭,大きい場合は小さな乳頭であると言える(図 3).

    図 3

     d)視神経乳頭の量的判定による緑内障診断基準
     以下に,垂直C/D比とR/D比の判定結果をもとに,Fosterらが提唱する診断基準を参考に作成した緑内障診断基準を示す.しかしながら,最終的な診断は,質的,量的所見を組み合わせて総合的に判断するべきである.
     ⅰ) 信頼性のある視野検査結果で視神経乳頭形状,網膜神経線維層欠損に対応する視野異常が存在する場合の判定基準:
    垂直C/D比が0.7以上,あるいは上極(11時~1時)もしくは下極(5時~7時)のリム幅が,R/D比で0.1以下,あるいは両眼の垂直C/D比の差が0.2以上,あるいは網膜神経線維層欠損が存在する.
     ⅱ) 乳頭所見のみから緑内障と診断してよい場合の判定基準(ただし,明確に緑内障性視野障害が否定されればこのかぎりではない):
    垂直C/D比が0.9以上,あるいは上極(11時~1時)もしくは下極(5時~7時)のリム幅が,R/D比で0.05以下,あるいは両眼の垂直C/D比の差が0.3以上.
     ⅲ)緑内障疑いと判定する場合の基準:
    次のような所見,すなわち ①垂直C/D比が0.7以上であるが0.9より小さい,②上極(11時~1時)もしくは下極(5時~7時)のリム幅が,R/D比で0.1以下であるが0.05より大きい,③両眼の垂直C/D比の差が0.2以上であるが0.3より小さい,④網膜神経線維層欠損が存在する,が単独もしくは複数存在しながら,視野検査の信頼性が低い,あるいは視野結果を参照できない,あるいは,視神経乳頭形状,網膜神経線維層欠損に対応する視野欠損が示されない.

     (2) OCTを⽤いた量的判定
     SD-OCT による量的判定では, 乳頭周囲網膜神経線維層厚や⻩斑部網膜内層厚の測定値が⽤いられる.通常,全体あるいはいくつかのセクターごとに平均厚を数値化でき,画像解析装置それぞれに搭載された正常眼データベースと⽐較して厚みが有意に異なる部分を視認できる.撮影画像の質やアーチファクトによって計測値は影響を受けることに,通常の正常眼データベースには強度近視眼は含まれていないことには注意が必要である.また,異なる機種では厚みの測定値は異なるため,異なる機種間では測定値の⽐較はできないことにも留意する必要がある.

  3. 3.緑内障診療における OCTアンギオグラフィーの意義

    OCTアンギオグラフィーを⽤いて網膜表層あるいは深層の⾎流を⾮侵襲的・簡便に評価可能であり,進⾏した緑内障ほど網膜表層⾎流が低下していることが知られる.また,視神経乳頭周囲の深層⾎流脱落所⾒が緑内障の進⾏と関係することが注⽬されている.ただし,現時点で実臨床での活⽤⽅法として標準化されたものはない.

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2021

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