視神経萎縮

optic atrophy

§ 視神経萎縮

.病 態

網膜神経節細胞の軸索に何らかの障害が生じると,検眼鏡的に蒼白な視神経乳頭となる.般に視路の不可逆的な萎縮を示し,機能喪失視力障害はかなり強いものの,検眼鏡所見の蒼白程度と視力とは必ずしも平行しない.
検眼鏡的に見た視神経乳頭の退色が主であり,退色は血管(血流)の減少とグリオーシスによる.OCTでは乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL;circumpapillary retinal nerve fiber layer)などの菲薄化として描出・定量化されて示される.
病理学でいう真の萎縮とは,軸索すなわち視神経線維が変性脱落・消失し,microglia細胞の浸潤結合組織増殖により空間を補填した状態,をいう.この意味合いでは,リム部の蒼白化を指す.
通常,うっ血乳頭を含む視神経症の末期状態で,通常か月以上の経過を示唆する.

  1. )単性萎縮 (simple optic atrophy)

    平坦で境界鮮明,軸索が萎縮・消失し篩状板の網目が見える.陥凹は浅い.
    球後視神経炎のほか,視神経の直接圧迫すなわち外傷(周囲組織の浮腫・視神経管骨折)や腫瘍,循環障害,脊髄癆,薬物中毒,など球後の視路障害による逆行性変性,網膜中心動脈閉塞症などの広域な網膜障害からの順行性変性が挙げられる.

  2. )炎性萎縮 (post-inflammatory optic atrophy)

    乳頭内のグリア(星状膠細胞)増殖+結合組織増殖を伴うため黄味を帯びた混濁・境界不鮮明.種の続発萎縮.
    視神経乳頭炎やうっ血乳頭の末期が典型.その他,ぶどう膜炎,虚血性視神経症,

  3. )網膜性萎縮 (retinogenous optic atrophy)

    網膜色素変性が代表.その他,汎網膜光凝固後,網膜循環障害後,・・・・・・・・
    網膜血管の狭小化にも注意.

  4. )緑内障性萎縮 (glaucomatous optic atrophy)     こちら

    視神経軸索の組織学的消失と篩状板のたわみによる特異的な陥凹で,乳頭縁でえぐれ,陥凹底では篩状板の網目が見える.辺縁 rim部は菲薄・部分消失があるものの残存部は般に正常色調である.
    乳頭周囲網脈絡膜萎縮や神経線維層欠損を伴うことで評価される.

  5. )遺伝性萎縮 (hereditary optic atrophy)     こちら

    Leber遺伝性視神経症:LHON

    常染色体優性視神経萎縮(Kjer型視神経萎縮):optic atrophy type 1

     両者は異常DNA部が違うが,ミトコンドリアを介する点で共通点がある.萎縮範囲の違いに特徴がある.

    そのた

  6. )帯状萎縮 (band optic atrophy)     こちら

    分節的な乳頭萎縮をいう.通常,視交叉以降の病変に於いて交叉線維・非交叉線維のそれぞれの障害が,特徴的な乳頭所見を示すことになり,OCTでは乳頭周囲神経線維層厚(cpRNFL)の変化として描出される.

    • 視交叉(正中)病変(視交叉症候群)
    • 視索病変(視索症候群)

.他の分類法では

  1. )原発萎縮
    ミトコンドリア遺伝性,代謝性(神経毒・栄養障害
    球後腫瘍性病変
  2. )続発萎縮
    虚血性・炎症性・浸潤性
    慢性腫脹腫瘍・偽腫瘍
  3. )緑内障性萎縮

.萎縮の進行方向
➊上行性(順行性)萎縮 ∷ 眼球(端末機)から外側膝状体方向(上流)へ萎縮が進む.比較的急速.
  緑内障のほか,網膜中心動脈閉塞症,網膜色素変性,Behçet病,乳頭浮腫,など
➋下行性(逆行性)萎縮 ∷ 上流から眼球(網膜)方向へ萎縮が進む.比較的鈍速.
 下垂体腫瘍のほか,髄膜炎,視神経管骨折,球後視神経炎,メタノール中毒,脊髄癆,SMON,など

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2022

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