網膜の病態

part

§ 視神経病変  neurogenic

視神経とは,網膜神経節細胞の軸索(神経線維)である.眼底では網膜神経線維層を指したり,視神経乳頭を指したりする. 【 乳頭部の写真 】

図 01 正常① 図 02 正常② 図 03 正常③ 図 04 正常④
  1.  加齢変化 
     aging
    1.  視神経線維
      年間に0.40.5%ほど減少する.
    2.  乳頭循環
      加齢により減少するという報告と影響を受けないとする報告がある.定の血流を維持する機構があると考える研究者が多い.
    3.  乳頭形状
      陥凹 cupping が拡大するとか辺縁 rim area が減少するとの報告があるが,個人差が大きく確実な経過観察に限界がある.
    4.  機能
      透光体の影響のほうが大きかったりする.
  1.  乳頭部先天異常    チョッと 詳しく
     congenital deformities

    形状の問題だけでは,一般に視機能とは直接には関連しない.

    1. 無形成aplasia / 異形成dysplasia
    2. 大きさの評価乳頭径の大小のほか,形状の異常として観察される.
    3. 欠損disc coloboma / 低形成optic(nerve)hypoplasia / ピットpit
    4. 傾斜乳頭 tilted disc / 下方コーヌスcrescent / 下方ぶどう腫staphyloma
    5. 異常隆起偽視神経炎・偽乳頭腫脹 / 乳頭部ドルーゼン(hyaline bodies)
    6. 近視と縦長乳頭近視の度が強いほど縦長乳頭の割合が増す.緑内障の危険因子に連続する.縦長が目立つのは未熟性を示唆する,との研究者のコメントがある.
  2.  視神経症()    チョッと 詳しく
     optic neuropathy(optic neuritis) 

    軸索の器質病変による視神経障害.視神経萎縮へ移行する.

    1. 特発性よーするに原因不明,どうやら本態のほとんどはニューロンあるいは髄鞘を傷害する自己免疫性(≒脱髄性)視神経症のカテゴリー.膠原病による視神経炎を含むが,血管炎では次の虚血性とオーバーラップする.
    2. 炎症ぶどう膜炎・自己免疫性炎症,感染あるいは真正炎症
    3. 循環障害特に,虚血性視神経症
    4. 遺伝Leber遺伝性視神経症 / 常染色体優性視神経萎縮
    5. 腫瘍・そのたの圧迫によるもの慢性副鼻腔炎 / 視神経髄膜腫,IgG4関連視神経症
    6. 外傷通常は,視神経管骨折を指す.ときに物理的変形が認められなくても視力障害を示すものがある.
    7. 代謝障害 metabolic optic neuropathies中毒性視神経症
    8. 小児の視神経炎
    9. 近視性視神経症眼球伸長によって生じる緑内障類似の視神経症
  3.  うっ血乳頭 と 乳頭浮腫    チョッと 詳しく
     disc swelling

    腫脹の直接原因は軸索流の停滞である.軸索流の停滞は篩状板の前で起こり,乳頭は盛り上がる.

    1. うっ血乳頭頭蓋内圧(髄液圧)の上昇による視神経の軸索流が障害され生じる非炎症性・受動性の乳頭腫脹のことで,通常両眼性.
    2. 乳頭浮腫視神経症(炎症,虚血もあり),高血圧性乳頭浮腫,ぶどう膜炎,眼窩腫瘍,まれに低眼圧で生じる.
      これらにより,うっ血乳頭と区別する.
  4. 図 05 萎縮
  5.  視神経萎縮    チョッと 詳しく
     optic atrophy

    退色,蒼白化,視機能障害.

    1. 単性萎縮 ( simple atrophy
    2. 炎性萎縮 ( postinflammatory atrophy
    3. 網膜性萎縮 ( consecutive atrophy
    4. 緑内障性萎縮 ( glaucomatous atrophy
    5. 遺伝性萎縮 ( hereditary atrophy
    6. 帯状萎縮 ( band atrophy
  6.  眼底乳頭部色素性腫瘍 図 06 色素細胞
    1. 眼底乳頭部黒色細胞腫:悪性黒色腫の発生は極めて少ないが,周囲脈絡膜を含め,鑑別を要する.

  7.  視神経交叉とその近傍の疾患
    1. 視神経腫瘍

      ○視神経膠腫(視路視床下部毛様細胞性星細胞腫)神経膠腫(glioma)は脳・脊髄の神経膠(glia)細胞から発生する.グリア細胞のうち星細胞から発生するgliomaが星細胞腫であり、そのうち毛様細胞性星細胞腫は悪性度は最も低い.小児におけるgliomaでは最も多く,視神経,視交叉,視床下部,視索,内包,視放線のどこでも発生しうるが,小脳が最多となる.
      視神経膠腫では,視覚障害・視神経萎縮・眼球突出を生じるが,乳幼児では斜視・眼球突出・眼振・発達の遅れが主訴となることが多い.MRI画像が特徴的で,眼窩内発生は摘出,頭蓋内では化学療法となる.神経線維腫症1型 NF-1による膠腫は長期間視力が保たれる事が多く,治療の必要性は少ない.

      ○視神経鞘髄膜腫

    2. 下垂体腫瘍

      ○下垂体腺種通常,下垂体腺腫は下垂体前葉から発生する.大きく,ホルモンを過剰に分泌するもの (ホルモン産生腺腫)とホルモンを分泌しないもの (非機能性腺腫)に分けられ,ホルモン分泌の種類により下記のごとく分類される.
       成長ホルモン産生腺腫
       プロラクチン産生腺腫
       副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫
       甲状腺刺激ホルモン産生腺腫
       性腺刺激ホルモン産生腺腫,および
       非機能性腺腫,である.

      ○頭蓋咽頭腫 craniopharyngioma

      ○蝶形骨髄膜腫

    3. 脳動脈瘤

  8.  外側膝状体の疾患:血管病変が多い
  9.  視放線,後頭葉の疾患
  10.  その他
    1. 眼-中枢神経系白血病の浸潤

  11.  視覚誘発電位 visually evoked potentials:    こちら
  12.  disc or  disk :    こちら

と,いうことで, おわり

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2020