補足解説

とは とは ??

「光そのものには色は付いていない.」(Sir Isaac Newton )・・・・・ということで,
視覚を起こすとは,波長380nm  780nm の放射電磁波であった.これが可視光である.ちなみに,
300nm くらいまでが近紫外,2500nm くらいまでが近赤外,となる.
波長の差によって種々のを感じる.従って,ふつうに言うとはいろいろな波長成分の混合である.

色の認知

可視光線の波長(エネルギー)に対応した錐体の反応強度が演算され,脳にて色を認識する.原色とは般的なヒトの錐体色素の構成種類に基づく理論であり,生物全体でいえば錐体色素の数に応じて原色数が決まるはずである.

.目に入る(色が見える元となる)光によって,①光源色,②物体色,③開口色,に分ける.

①.光源色光源自体の色.LEDとかディスプレィ面など.()波長・輝度・純度であらわす.

②.物体色光が当たることで発する色.色相・明度・彩度であらわす.

  1. 表面色:反射して生じる色.身の回りにある物体のほとんど,絵の具とか花の色など.不透明物体の表面で吸収された波長の残り成分が反射する.

  2. 透過色:透過して生じる色.映画のポジフィルムとかステンドグラスなど.特定の波長が吸収されるため.

図02 加法

③.開口色小孔を通して見る色.対象物体の形や大きさ,距離の要素がない.(心理的影響を排除したもの )

■光源色太陽・白熱灯・蛍光灯などの光源の出す光(の色.発光色 emmision color
(レッド red)・緑(グリーン green)・青(ブルー blue)が光の原色である.加法混色に従い,色混合ではとなる.太陽光は原則フルレンジであるが,人工光源は波長により青みがかったり、赤みがかったりする.

図01 減法

■物体色物体に白い光を当てたとき感じる,その物の色.物体色 object color
反射して見える波長以外は吸収される.残り引き算,ということで,反射がない状態では となる.減法混色である.
赤紫(マゼンタ magenta)・黄(イエロー yellow)・青緑(シアン cyan)が色の原色である.マゼンタは緑,イエローは青,シアンは赤のそれぞれの波長をから吸収し,反射した残りの光を感じている色,ということである.

なお :
物体が吸収する波長に対応する色と吸収されないで反射した光に対して我々が感じる色は,補色の関係にある,という.この 色表現 に従えば,各原色について補色は,赤紫⇔緑,黄⇔青紫,青緑⇔赤,ということになる.
原色での「青」を「青紫」とするのはベターではあろうが,「青」とて誤りにはなり得まい.とは言うものの,緑⇔赤を単純に 補色 としてしまうのはダメかもしれない.

(Grassmann法則):「すべての色は原色の組み合わせで再現される」
色覚の色説によると,R・G・Bの3色の混合量を変えることであらゆる色を表現できる(混色がベクトルの加法に対応する).すなわち

C≡ x R+ y G+ z

●連続性(グラスマン第法則):「色は連続して変化する」

.色の認知(知覚色)は,われわれ個人個人の大脳にて感覚が生じたものである.従って,隣人が見ている物体色が自分と同じとは限らない(たぶん違う).これを標準化するために,①色相,②明度,③彩度,で表現する.色の属性である.

Munsell表色系では,色相・明度・彩度の属性・パラメーターが用いられる.

.色相()hue(色みの違い)
赤・緑など,いわゆるを示す.
基本は,赤R・黄Y・緑G・青Bの四色.可視光短波長端の紫Pと長波長端赤Rをブレンドすると赤紫(RP非スペクトル色)が得られ,中間の四色(YR,GY,BG,PB)を加えた十色が最も単純な色相配列・色相環となる.原本は各領域をさらに十等分して 100 hue で表わす.
20 hue ないし 40 hue が実用的である.白黒はNで表す.

5R 5Y 5G 5B 5P
(赤・黄・緑・青・紫の明度・彩度のイメージ)

.明度()value ,あるいはbrightness あるいは強さintensity(明るさの度合い)
般にはマンセル明度のことを単に明度と言う.
明度はマンセル色空間の中心軸で,最上部に明度9の白を下に明度0の黒を置き,その間に知覚的に等歩度になるように各明るさの灰色を配置する(gray scale 灰色の濃度とも説明される).黒というのは光を全く反射しない物体表面,白はすべてを反射する表面の明度を示し,反射率の大小を尺度化したもの.言い換えると,明るさとは光の物理エネルギーを表わす.
有彩色の明るさもこのスケールに準じる.

図08 マンセル

.彩度()chroma,あるいは飽和度saturation(あざやかさの度合い)

白の混ざり具合を示す,鮮やかさ.白が混ざると飽和度が低下する.
0 から??段階ある(色相・明度により差があり,最大値は決まっていない)
無彩色は N で表し,彩度が 0 のことである.

物体色は HVC で表わすことができる.
例えば「 6.5PB3.4/17.8 」とすれば,色相は 6.5PB ,明度は 3.4 ,彩度は 17.8 の色である.このチャートにより色の表現が規格化・普遍化される.

色度
発する光ベクトルの方向は原色の比(R:G:B)で表わされる.
原点は,R(1:0:0),G(0:1:0),B(0:0:1)であり,白色点W(1:1:1)である.RGBで作る色角形(単位面)上に表わされた色を「色度」という.
光の場合,ほとんど「色度」で表現される.
波長ごとにベクトルの方向を決めて,単位面上に投射するとスペクトル色度軌跡となる.

⑨色度図1 ⑩色度図2 ⑪色度図3

●色度図(CIE色度図
角の座標を直角角形に変換したもの.
色の比率の合計を1とすると,赤の相対明度をX軸,緑の相対明度をY軸として,緑と赤の比の次元グラフですべての色が表わされる.原色として通常,赤 = 700 nm緑 = 546 nm青 = 436 nm の単色光を用いる.これは測定用光源の都合だそうだ.白色光は原色の混合で表わし,その比率を1:1:1,つまり原色が均等に混ざると「白」になるということで,W:白色点で示してある.ここに近づくほど飽和度が低くなる.

なお視感度を加味すると,100%赤の明るさ(緑0%・青0%)は100%緑の半分ほどだそうである.100%青はもっと暗く感じるとのことである.

図12 色度図

●色度図の混色法則
色度図上の点にある色を混合した色は,その点を結ぶ直線上にある.
補色とはある割合で混合すると白色になる色で,W:白色点を通る両側にある.言い換えると点を結ぶ直線がW点を通るとき色は補色関係にある.
可視光線のスペクトルは赤 780 nmすみれ 380 nm であるが,492 nm ⇔ 570 nm の補色の相手は非スペクトル色である.これは赤紫線で示される.

☆純紫軌跡
CIE(Commission International de l’Eclairage;国際照明委員会)色度図のスペクトル軌跡の両端を結ぶ線のこと.
赤紫線.この線の上の色は,380 nm と780 nm の光を混合したものを表し,スペクトルにはない.

☆反対色
色相・明度・彩度の三属性それぞれで対立する性質をもつ色同士. 色相では,補色や補色に近い関係の色を指す. 明度・彩度においても高低の関係を指す(無彩色では,白⇔黒)

色 覚color sense 図13 三錐体

錐体には視物質に依り短波長・中波長・長波長を担当する種類があり,光を吸収すると強度の異なった信号を発する.例えば,波長600nm の光が網膜に当たったとすると,種類の錐体は光量子吸収に応じ R=0.7/G=0.4/B=0.2 のような強さの電気信号を発する.同様に波長500nm では R=0.4/G=0.5/B=0.3 のような信号強度になる.この時点で波長情報は消えてしまい,錐体にそれぞれ吸収された光量子数の比率(相対的強度)として,色情報が明暗の情報(応答比)に置き換わることになる.
強度信号が唯の情報であることで,変数の原理principle of univariance と呼ばれる.この符号化信号は視覚中枢にて演算され色が認識される.それを我々は「橙」や「緑」と称していることになる.
(長波長感受性錐体に吸収された光が「赤」と認知されるわけではない,というより光に色が付いているわけではない.)
色覚について,いわゆる L 錐体,M 錐体,S 錐体が,それぞれ(単色光)を認識する,と考えると大きく 誤解 する.

●色覚の機序 色説( trichoromatic theoryYoungHelmholtz)
ヒト網膜には,スペクトル吸収率の異なる種類の錐体がある.420(〜440)nm(),530(〜535)nm(黄緑,簡易的には緑),560(〜570)nm(黄橙,簡易的には赤)にピークを持つ種類でそれぞれ,短波長感受性錐体(S錐体,青錐体),中波長感受性錐体(M錐体,緑錐体),長波長感受性錐体(L錐体,赤錐体)という.
光受容体レベルでいう要素説である. ☞☞ 錐体

  ・ S short wave
  ・ M middle wave
  ・ L long wave

図14 色チャンネル

●色覚の機序 対立色説(反対色説 opponent theoryHering)
双極細胞よりも上位側では,赤・緑,黄・青の反対色関係で情報処理されると考えられている(red-green pathway と blue-yellow pathway).これに黒・白の輝度信号( luminance pathway )が加わる.これらの信号チャンネルユニットで,視覚領まで伝達される.

赤緑チャンネルは midget神経節細胞経路,青黄チャンネルは small bistratified(小型層性)神経節細胞経路,輝度チャンネルは parasol神経節細胞経路である. 【 ☞☞ 神経節細胞

●色覚の機序 段階説(stage theoryVosWalraven)
3種類の錐体による信号を,演算により反対色空間の感覚(信号)に変えて脳に伝えている.
(赤緑感覚・青黄感覚・輝度感覚) 【 ☞☞ 視中枢

図 補 ●補色 complementary color
補色とは,色相環で正反対に位置する関係の色の組合せのことをいう.色相配列(10色)での補色関係は,赤⇔青緑,橙⇔青,黄⇔青紫,黄緑⇔紫,緑⇔赤紫,となっている.
色度図では 両者の線がWを通ることで,おのおのを定の比率で混合すると光では白色に,絵の具などでは黒色になる.

●色の認識 color perception
1種類の視色素では色情報は発生しない.また色の順応により例えば赤を見ていると相対的に緑の感度が上がる.これにより赤を見続けた後に赤が消えると緑が見える.
画面内にカーソルを置くとカラーネガ(反転)画像となる.20秒間,中央の ● を固視したのちカーソルを外してみよう.モノクロ写真が着色している様に見える.錯視~色の残像である.

⑮錯視

■色覚異常の発生

色覚異常は,長波長感覚・中波長感覚・短波長感覚のいずれかの減弱ないし欠損である.
長波長感受性視物質に問題があるのが第異常(1型色覚),中波長感受性視物質に問題があるのが第異常(2型色覚),短波長感受性視物質に問題があるのが第異常(3型色覚),1型と2型を合わせ先天赤緑色覚異常である.
長波長感受性視物質に対応する補色波長の 495 nm 付近,もしくは中波長感受性視物質に対応する補色波長の 500 nm 付近が無彩色(飽和度が0)となる.中性点 neutral point という.中性点をはさんで長波長側は黄色,短波長側は青色と認識する.

色覚異常での大きな特徴は,正常では異なって見える様々な色が1つの同じ色に見えてしまうことである.
たとえば第色盲の人には,中波長感受性()錐体と短波長感受性()錐体に入る光の刺激値が同じであれば長波長感受性()錐体が感じるべき光の量に関係なく同じ色に見える.赤の光を使わなくても,緑と青の1直線に並ぶ.この線を混同色線( confusion line )あるいは等色線( isochromatic line )という.等色とは,複数の波長を混合することで,ある波長の光と致させることである.

■等色

1種類の色光ですべての波長の光と等色が可能なものを1色覚,2種類の色光で等色が可能なものを2色覚,3種類の色光で等色が可能なものを3色覚,という.
1色覚は杆体のみが機能する杆体1色覚と錐体のみの錐体1色覚がある.ほとんどは杆体1色覚である.2色覚は3種類の錐体視物質のいずれか1つが欠損している.3色覚は正常3色覚と等色比率の異なる異常3色覚があり,後者ではいずれかの視物質の最大感度波長が正常とは異なった状態である.

従来の呼び名にすれば,1色覚は全色盲,2色覚は色盲,異常3色覚は色弱,となる.

■混同色

色度図上では混同色線は平行ではなく,色度図のほぼ 1か所から放射状に分布する.この点は第色盲の場合は赤い単色光の付近,第色盲の場合はスペクトルを離れた仮想上の緑の点になる.第色盲の場合は紫の単色光の付近になる.

A.第異常(1型色覚)
下図中P線は,赤と白色点を通る.もし赤成分が無ければ,P線上の色は無色(灰色)となる.補色であるはずの 495 nm 付近(中性点;neutral point )の色も無色(白色)である.同様に,Rから発する混同色線上にある色(例えば,C1とC2)は区別がつかない.

⑯混同色 ⑰混同色

B.第異常(2型色覚)
混同色線はD線のようになる.y軸近くのスペクトル(中性点;neutral point )は 500 nm 付近が灰色になる.

⑱混同色軌跡:くりっく

色盲と第色盲の混同色軌跡(画像クリック)

混同色線を色度図の上の色の分布と比較することで,どのような色が見分けにくいかを判断できる.たとえば xy 色度図で緑は図の左上,波長で 500540 nm あたりに広がっている.この中で最も長波長の(黄みの強い暖色系の) 緑は第一色盲と第二色盲の赤や黄色を通る混同色線の上に来てしまう.したがってこの辺りの色あいは赤や黄色と間違えやすい.またその少し短波長側の緑は茶色を通る混同色線の上に来るので茶色と間違えやすい.なるべく青みの強い緑にすることで他の色と混同しにくくすることができる.
さらに波長を短くすると,緑と青緑の間に白を通る混同色線の上に来る点が存在する.この辺の波長は赤緑色盲の人には無彩色に見える(中性点).色盲の人に緑がグレーに見えることがあるのはこの関係を反映している.

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●色覚バリアフリー

 カラーユニバーサルデザイン機構  https://www.cudo.jp/

色覚検査

⑲検査

①仮性同色表

色覚異常では混同しやすい色相があり,それらの色で描かれた形を見せその読み方で判定する.
国際的にも「石原式色盲検査表」が有名(右図).確認のため,
TMC(東京医大)表やSPP(標準色覚検査)表を併用する.
本来,赤緑異常用ではあるが後天用SPP表もある.

②色相配列法⑳D15

色型色覚の混同色を利用した検査.後天用としても外来で重宝する.

正常色覚 型別の混同色の傾き 杆体色覚の scotopic
図21 ぱねる 図22 ぱねる 図23 ぱねる

③アノマロスコープ図24 あのまろ

赤色光と緑色光を混合すると黄色光になるが,色覚異常があると黄色光を得る(均等点)ための赤色光と緑色光の混合比が変わる.赤色光の感度に障害があれば赤の比率が多くなり,緑色光の感度障害でも然り.この混合割合の移動をみる(均等点が変わる)検査である.


色覚異常での見え方

異常異常異常
25 第一異常 26 第二異常 27 第三異常
スペクトル28 正常
異常29 第一異常
異常30 第二異常
基準表異常異常
31 正常32 第一異常33 第二異常
34 正常35 第一異常36 第二異常
37 正常38 第一異常39 第二異常
40 正常41 第一異常42 第二異常

加工にはVischeckを使用しました


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