3.循環障害

  1. 浮 腫

  2. 充 血

  3. うっ血

  4. 虚 血

  5. 出 血

  6. 血栓症

  7. 塞栓症

  8. 側副循環

§ 局所循環障害
    体重の約6070%は水で,細胞内に23,細胞外には14,残りの58%が血管内に存在する.
    血液の55%が血漿成分である(45%は赤血球、白血球である)

■浮腫 edema

細胞細胞間組織における水(組織液/間質液)の過剰な貯留のこと.通常,組織間隙に水分が貯留した状態で,細胞外液と血管外液が増加する.組織間隙液と血液とは水や栄養の交換がなされる.移動の方向は,静水圧(毛細血管圧と組織圧)の差と膠質浸透圧の差で決まる.すなわち,

①毛細血管内圧(静水圧)亢進,②血漿膠質浸透圧低下,③毛細血管透過性亢進,④組織圧低下,⑤リンパ流還流障害,⑥組織内Na貯留などで起きる.水腫.

  1. 静水圧の亢進過剰Naやうっ血によって生じる漏出

  2. 膠質浸透圧の低下血漿タンパク特にアルブミンの低下によって生じる漏出

  3. 透過性の亢進毛細血管内腔の拡張により血管内皮細胞間隙が広がることによって生じる.アレルギーを含む炎症の滲出液である.

    • 透過性亢進をもたらす因子ブラジキニン,ヒスタミン,アラキドン酸代謝産物, ・・・

    • 血管神経性浮腫(Quinckeくぃんけ 

  4. リンパ還流障害うっ滞性のリンパ水腫となる.通常限局性の浮腫となる.

  5. 組織圧の低下眼瞼浮腫 ・・・ 元来が低い組織圧であり,全身性浮腫の際に特に強く起こる部位.

  6.  漏出 transudate滲出 exudate の違い

    透明度 細胞成分 線維素 たんぱく量 比 重 原 因
    漏出液 透明 少~中 1.0061.015  静水圧・浸透圧の変化 
    滲出液 混濁 中等 1.0181.020  透過性亢進
図 補

■ 静水圧せいすいあつ  静水圧 】

静水圧 hydrostatic pressure末梢毛細血管内の内圧(水圧).当然,動脈側で高く静脈側で低い.動脈圧にかかわりなくほぼ一定に保たれているが,静脈側からの影響を受けやすい.これにより,静脈側のうっ血による毛細血管静水圧上昇で,水分は血管外へ移動する.流れのある水における水圧なら動水圧というが,どうして毛細血管圧は静水圧なんだろう? 赤血球と粘性?  Bernoulliベルヌーイ 先生,教えてください.
膠質浸透圧 plasma colloid osmotic pressureアルブミンやデキストランなどの高分子物質による浸透圧.組織間の水分を引き戻している.

■充血 hyperemia

流入する血液量が増加した状態のこと.小動脈が拡張して動脈血が能動的に流入する.
炎症による充血は,血管平滑筋が直接弛緩して起こる.
血管平滑筋の割合は細動脈で最も多い.

■うっ血 congestion

静脈血の還流がさまたげられて,毛細血管が拡張したもの.組織からの血液流出が減少しており,組織は暗赤色で静脈の拡張が目立つ.静水圧の上昇により,同時に浮腫が起こる.
静脈の血栓・塞栓・炎症など,あるいは周囲からの圧迫による内腔の狭窄ないし閉塞が原因となる.

■虚血 ischemia貧血

血流量の減少に伴う代謝エネルギーの枯渇のこと.通常は流入する動脈血液量が著明に減少あるいは停止した状態で,直接虚血という.持続すると阻血性壊死をおこし梗塞する.
  直接貧血 → 局所に流入する血液の減少
  間接貧血 → 流出する血液量が多いとき

*臨床で用いる貧血と混同しないために,虚血乏血とするほうがよいとのこと.

*血流が保たれていながら酸素不足によるエネルギーの枯渇は低酸素 anoxiaである.

■出血 hemorrhage

血液成分が血管外に出ること.

ただちに止血のために,

が,連続して起きる.
出血に対する緊急性のある止血治療は,般眼科では例外である.

*出血性素因(出血傾向):血液凝固の異常,血小板の異常,血管壁の異常,など

Rothろーと 斑:中心が白色の出血斑.白色部は凝固したフィブリンである.

■血栓 thrombus

血栓とは生体の心臓を含む血管内で生じる血液凝固のこと.
正常では血管内で血液は凝固しない.血管内皮が抗血栓となり,血流があること,凝固反応が起きていないこと,凝固系インヒビタが作用していることなどによる.
よって,血栓形成の条件は
 ①内皮の損傷,― フィブリン沈着
 ②血流の変化,― 血小板沈着
 ③血管収縮,― 血小板から放出されるセロトニン・カテコラミンなどによる
 ④血液成分の変化,― 凝固亢進で,血栓形成に傾く.

動脈では,内皮が変性しているアテローム潰瘍部に血栓を作りやすい.
静脈では,静脈炎で流速低下のため生じやすい.

赤血球が閉じ込められた赤色血栓と,血小板・フィブリン・白血球などからなる白色血栓とがある.
前者は血流がゆるい静脈系に,後者は動脈の内膜損傷で発生しやすい.
血栓は,破片が塞栓となることが多い.

以上により当該血管の支配領域において組織の虚血や梗塞を起こす状態が血栓症 thrombosisである(状況によっては遠隔部位にも影響する)

■塞栓 embolus

脱落した血栓や異物が血流やリンパ流に乗って産生部位から離れたところに詰まり,不完全あるいは完全に閉塞すること.
塞栓子の種類は,血栓,脂肪滴,空気,組織片,菌塊など.組織片は動脈硬化の破片や腫瘍細胞を含めて考える.

血液とともに流れてきたこれらの物質で血管が閉塞され障害を起こす状態が塞栓症 embolismである.血管を詰まらせる血管内遊離物が栓子,ということである.
眼科領域で血栓・塞栓による循環障害が主に問題になるのは,網膜を中心として中枢へ至る視覚路での発症である(動脈性塞栓症)

*器質化血栓が肉芽組織により置換し,血栓は吸収される.肉芽組織は漸次瘢痕組織となる.
*再疎通血流が部分的に回復した状態.血栓が器質化した肉芽組織内において新生血管が連絡し合う状態,あるいは閉塞血管自体の開通.

■側副路 collaterals

普段あまり機能していない血管や静脈叢などの吻合枝を利用して血液を送ること.特に,形態学的・生理学的に正常ではない経路が作られた状態.
終動脈などが何らかの原因で狭窄したり閉塞した場合に作られるバイパス,など.網膜静脈にも当てはまる.

§ 全身性循環障害内科疾患として

■脱水 dehydration

体液の減少した状態(摂取不十分あるいは発汗過剰,過剰利尿)で,細胞外液の浸透圧上昇により細胞内液が減少して発症する.長期の嘔吐・下痢ではNa喪失に伴う細胞外液の低張化により細胞内液が増加して発症する.
幸い,眼科領域での関連は薄い.

■ショック shock

血圧の低下に伴う,末梢循環血流量の不足と全身組織の酸素欠乏から生じる連の臨床症状(症候群)

■血圧

 ページ始に戻る 

2024