追加解説
§ 血管

1.血液を通し,組織の形成と維持に関わる.

2.組織反応に関わる因子血管内皮細胞(と,flt受容体ファミリー),平滑筋細胞,周皮細胞,血小板,マクロファージ,白血球, 増殖因子(VEGFファミリー)

3.血管内皮細胞血管内皮前駆細胞 ← 骨髄系幹細胞

§ 造血幹細胞 hematopoietic stem cells:HSC

図 補 造血幹細胞

 造血幹細胞は骨髄にあり,自己複製能と,赤血球,血小板,白血球(顆粒球,リンパ球,単球・マクロファージ),マスト細胞などの源となる多分化能を有する.

まず分裂すると,自己複製能のある元の幹細胞と,多分化能を示す多能性前駆細胞(multipotent progenitor:MPP)血球芽細胞の2つの細胞に分かれる.
MPPは,骨髄系幹細胞骨髄系共通前駆細胞(common myeloid progenitor:CMP)と,リンパ系幹細胞リンパ系共通前駆細胞(common lymphoid progenitor:CLP)に分化する.
骨髄系細胞は赤血球・巨核球系前駆細胞,単球顆粒球系前駆細胞,好酸球系前駆細胞,好塩基球系前駆細胞で,最終的にそれぞれ,赤血球・血小板,単球・好中球,好酸球,好塩基球に分化する.
リンパ系細胞はリンパ芽球を経て分化する.
これらには,stem cell factor,IL-3,IL-6,G᠆CSF(顆粒球コロニー刺激因子)などが作用する.

★白血球  white blood cells(WBC)leukocyte

末梢血の血球の中で核を有する細胞グループで,血管壁を自由に通過(血管外遊出)し,血管外でアメーバ様運動(遊走)をする.大きく,顆粒球60%・無顆粒球40%に分けられる.
顆粒球は好中球,好酸球,好塩基球の3種類である.組織中に存在するマスト細胞を加えると,顆粒球は4種類となる.無顆粒球はリンパ球,単球である.

図 02 白血球

§ 骨髄球系細胞

  骨髄で作られる血球 → 多分化能造血幹細胞の子孫

  1. 顆粒性白血球(顆粒球

    1. 好中球 neutrophil酸性色素(赤色;エオジン)と塩基性色素(青色;ヘマトキシリン)の双方に(わずかに)染まる中性顆粒をもつ.
      自然免疫系のエフェクター細胞で,遊走能により感染部へ最初に到着する.感染部でマクロファージなどが分泌するサイトカイン等の白血球刺激因子や細菌のペプチド鎖を認識して遊走する.顆粒は水解小体(ライソゾ-ム)で細菌・真菌・異物の貪食・消化を行なう.
      分解酵素により傷害組織を融解し修復を助けるが,分泌する酸化物質(活性酸素)のため組織傷害性にも働く(炎症).
      白血球全体の55%,ミクロファージ(小食細胞)とも言う.

    2. 好酸球 eosinophil酸性色素に染まる顆粒をもつ.
      I型アレルギーやアトピー,寄生虫感染で増加する.貪食のほかフリーラジカルを放出して細胞外の標的寄生体を破壊・殺菌する.血小板活性化因子を産生する.時に組織傷害性に作用する(病態が悪化・遷延化)方でヒスタミン・ロイコトリエンなどを分解しマスト細胞の分泌物を不活性化することで,免疫反応を減衰させる.
      特異顆粒タンパク(ECP・MBP,)の分泌.ほとんどが組織(例,上気道,消化管,皮膚,子宮)中に存在し,全体の2%.

    3. ► エオタキシン

    4. 好塩基球 basophil塩基性色素に染まる大型の顆粒(好塩基性顆粒)をもつ.
      ヒスタミンやヘパリン,セロトニン,ヒアルロン酸,酸性ムコ多糖などを含み,アレルギー反応の際このヒスタミンの放出(脱顆粒)により滲出反応(炎症の発生)が起こる.急性炎症応答(I)のほかIV型にも関与する.血液凝固を阻止する.全体の0.5%.IL-3を増殖因子として分化増殖する.
      好塩基球はマスト細胞とさまざまな重複する機能を共有しているが,好塩基球は骨髄に由来する顆粒球/単球前駆細胞集団内の前駆細胞から生じる造血系である.

  2. 図 免疫細胞
  3. 無顆粒性白血球(無顆粒球
    単細胞時代のアメーバの性質を残しているのだそうだ.進化した細胞が顆粒球で細菌レベルの異物処理を,さらに微小レベル(ウイルス等)の処理に進化したのがリンパ球.

    1. 単球 monocyte最大(直径1520µm)の白血球で,好中球につぐ強い遊走性・食作用がある.
      補体・リンホカインで遊走する.非自己(異物)を摂取すると,その抗原性物質を認識し,これをMHCタンパクとともに細胞表面に提示し抗原情報をリンパ球に伝える抗原提供細胞antigen presenting cell:APCとして働く.
      PGE2を産生し,ブラジキニンの発痛作用を増強する.全体の5%.
      炎症の際に血中から組織へ移行した単球がマクロファージ(組織球)である.樹状細胞 の前駆細胞ともなる.

    2. マクロファージ macrophage貪食能を有する大型細胞(大食細胞)で,全身臓器組織に広く分布し,異物侵入に待ち構えている.侵入物はマクロファージや樹状細胞に貪食される.マクロファージ内では殺菌が進むと同時にAPCとして作用し,TNF᠆α,IL-1βなどの多くのサイトカインを産生・放出する(プロセシング).これらにより好中球や単球が援軍のために末梢血から遊走してくる.またある段階になると細胞膜が破裂し細胞死に至る.特にマクロファージに感染した菌に対して増殖の場を消す反応と理解されている(パイロプトーシス pyroptosis パイロトーシス)
      発生過程のアポトーシスを含めた自身の死細胞についてもマクロファージにより除去され,生体の恒常性維持がなされている.
      M1マクロファージはTh1型の免疫応答を誘導し,強い抗菌あるいは抗ウイルス活性、抗腫瘍効果を示す.
      M2マクロファージはTh2細胞や好塩基球などの作用を受け,寄生虫感染、組織修復、血管新生、腫瘍増殖の促進、免疫抑制機能を示す.
      なお,待機している組織によって骨髄由来の単球のほか卵黄嚢や胎児肝を起源としている,とのことである.

    ► マクロファージ活性化因子(macrophage activating factor;MAF)インターフェロンⲻγ,マクロファージコロニー形成刺激因子(M᠆CSF),顆粒球・マクロファージコロニー形成刺激因子(GM᠆CSF),マクロファージ遊走阻止因子(MIF)などを総称してマクロファージ活性化因子という.

    ► マクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor;MIF)活性化Tリンパ球より分泌される最初のリンフォカインとして報告された.マクロファージの遊走を制御し炎症部位にマクロファージを集め炎症,免疫反応を惹起する液性因子で,炎症や免疫反応のイニシエーターであると考えられている.

    ► 組織球は多角形上皮の形質をもち,大組織球として肉芽腫性炎症の部分でみられる時には類上皮細胞とも呼ばれる.類上皮細胞は Langhans巨細胞,Touton巨細胞,異物巨細胞と呼ばれる合胞体として多核巨細胞を形成する.

  4. 図 補
  5. マスト細胞 mast cellマスト細胞はIgEを介したアレルギー反応の責任細胞である.前駆細胞は顆粒球/単球前駆細胞集団に派生して骨髄から末梢血中に放出され,気道・腸管・皮膚・神経などの組織に常在する細胞として成熟する.特に皮膚・粘膜などの上皮組織に多く,全身臓器・結合組織にも広く分布している.
    細胞膜表面上の IgE高親和性受容体(IgE᠆Fcレセプタ;FcεRI)に抗原が結合するとヒスタミン・ヘパリンなどの化学伝達物質が放出される(脱顆粒).プロスタグランジンなどの遊離に引き続いて,インターロイキン(IL)-3,IL-4,IL-5,IL-6,顆粒球-単球コロニー刺激因子(GM᠆CSF),腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor α;TNFⲻα)などのサイトカインが合成・放出される.
    好塩基球とさまざまな重複する機能を共有しているが,即時型アレルギーのほか免疫反応・炎症反応・創傷治癒などの種々の生体反応に関与する.

    ► 原語はドイツ語のmästen〈太らせる〉から.顆粒をかかえた大型の細胞で,肥満細胞ともいうが,貪食作用はない.

  6. 飲食作用 endocytosis細胞が細胞外の物質を取り込む過程の1つで,食作用(phagocytosis)と飲作用(pinocytosis)がある.
    食作用は,体内に侵入した細菌などの病原微生物を排除するための重要な生体防御機構のほか,獲得免疫の始動,死細胞の排除の機構である.ウイルスに関しては、一般に細胞に侵入する機構としてエンドサイトーシスを利用するといわれる.
    飲作用は全ての細胞で行われている取り込み機構であり,細胞の生存に必須の機構と考えられている.ヒトの場合は,主に脂肪滴の吸収のために起こるプロセスとされる.

    ► 食作用の強さ好中球>単球>好酸球>リンパ球>好塩基球

    ► 『プロフェッショナル』食細胞貪食作用が主要機能の一つである好中球・単球(未熟樹状細胞・マクロファージを含む)・好酸球 を指す.
    リンパ球の運動能は白血球のうちでいちばん弱く、貪食能は通常はみられない ・・・ ことになっているが,状況次第では貪食能を示す.好塩基球も貪食細胞としてが働くことができる.

  7. 白血球数49×10³ .リンパ球は,白血球の2040%を占める.単球は36%ほどである.

§ リンパ球系細胞

  1. リンパ球 lymphocyte直径810µm の球形細胞で,ウイルスや腫瘍細胞に対し,抗体産生・遅延型過敏反応・同種移植片拒絶反応などの免疫応答を担う.白血球グループの35%.
    (顆粒)リンパ球は自然免疫系のエフェクター細胞でナチュラルキラー(NK)細胞 と呼ばれる. 小リンパ球は適応免疫で活性化する細胞で,液性免疫(抗体)に関係するB細胞と,細胞性免疫に関係するT細胞に分類される.
    B細胞ではBCR(B cell antigen receptor)が,T細胞ではTCR(T cell antigen receptor)が抗原特異的受容体として働く.

  2. リンパ球の産生・分化・成熟の起こる組織が 次リンパ組織(中枢リンパ組織)で,骨髄(B細胞) と 胸腺(T細胞)である.
    成熟したリンパ球が免疫応答に関わる組織が 次リンパ組織(末梢リンパ組織)で,リンパ節,脾臓,扁桃,パイエル板などである.

  3. 図 補
  4. 骨髄内でのリンパ球系幹細胞は B細胞 になる.成熟過程で自己抗原に反応するB細胞受容体(膜型の免疫グロブリン)を細胞表面に発現するB細胞はアポトーシスにより排除されることになる.まだ抗原に出会っていない未熟ナイーブB細胞は骨髄から末梢へと移動し,主に脾臓やリンパ節などの次リンパ濾胞内で待機している.

    B細胞は抗体産生(液性免疫)にかかわる.抗原提示細胞の抗原とMHCに結合すると,ヘルパーT細胞(インターロイキン2)の存在下で活性化され,形質(プラスマ)細胞に分化し抗体(免疫グロブリン)を合成・分泌する.部がメモリーBとなる.

  5. 形質細胞 plasma cells 【 免疫グロブリン 】

    リンパ球から分化・成熟した細胞で,炎症の局所やいわゆるリンパ組織に分布する.顆粒球,リンパ球,マクロファージと並ぶ,炎症細胞の主役となる.
    B細胞の最終分化段階と理解されているこの細胞は,身体に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する作用を持つタンパク質(抗体=免疫グロブリン:Ig)を産生する.体細胞突然変異を経ていない短寿命形質細胞の産生する免疫グロブリンは,親和性は低いが初期の感染防御には重要な役割を果たす.その後,抗原に対して高い親和性を持った長寿命形質細胞が分化する.
    無数の抗原に対する抗体の多様性はB細胞の分化の過程で起こる遺伝子再編成による,とのことである.遺伝子再編成に関与する遺伝子はトランスポゾン由来の遺伝子ではないかと考えられている.
    B細胞はILⲻ4またはILⲻ13で刺激しないとIgE抗体をつくらない(Tfh細胞由来のILⲻ4に反応するらしい).IgEを作ってしまう状態が『アトピー性』である.

  6. 骨髄から胸腺内に移動してきたリンパ球系幹細胞は T細胞 になる.CD4陰性CD8陰性のDN細胞(ダブルネガテイブ)からCD4陽性CD8陽性のDP細胞(ダブルポジテイブ)を経て成熟し,最終的にはCD4陽性とCD8陽性とに分化し胸腺から出る.この過程で自己抗原には反応せず、かつ自己のMHCを認識できるT細胞が選択されることになる.

    抗原に接していないのが未熟なナイーブ naïve T細胞で,抗原に接し活性化されたのがエフェクター effector T細胞である.T細胞が抗原を認識(抗原提示細胞に接触)すると,CD4陽性細胞はTh1/2リンパ球に,CD8陽性細胞はTcリンパ球に分化する.
    いずれもchemokineケモカインと細胞接着因子の制御により,エフェクター細胞として炎症組織に浸潤,細胞間調節をおこなう.

    図 補

    ★ヘルパーT(Th細胞)は,免疫系のマクロファージ,樹状細胞,B細胞などの抗原提示細胞(APC)や細胞障害性T細胞の活性化や成熟過程に重要である.

    ★CD4陽性T細胞: サブセット

    ◙ Th1細胞活性化された樹状細胞がILⲻ12と呼ばれるサイトカインを産生した場合にはT細胞はTh1細胞へと分化成熟していく. Th1は IFNⲻγ・TNFα/β・IL-2を産生し,マクロファージの活性化を誘導し,細胞内病原細菌排除,抗ウイルス応答や抗腫瘍応答などに関与する.(1型免疫応答;細胞性免疫‥‥遅延反応,細胞傷害性T細胞やマクロファージ活性化)
    Th1反応は,StevensJohnson症候群やインスリン依存性糖尿病・慢性関節リウマチ・サルコイドーシスなど多くの自己免疫疾患を含む(Th1介在性).この型の疾患の多くは臓器特異的Th1により惹起され,組織障害の機序は遅延型過敏反応である.

    ◙ Th2細胞好塩基球からのILⲻ4やナチュラルヘルパー細胞の存在下でT細胞が活性化されるとTh2細胞へと分化する. Th2は IL-4/5/6/10/13を産生し,B細胞を活性化し,原虫・寄生虫・(I型)アレルギーに対する免疫グロブリンIgEに関与する.杯細胞や好酸球を活性化するほか,免疫IgGを作る(2型免疫応答;液性免疫)
    Th2反応は,主にアレルギー疾患を含むが,SLEや慢性移植片対宿主病などの抗体介在性自己免疫反応の原因とも考えられている.
    (反復するアレルゲンの侵入によって Th2 優位な状態がつくり出される)

    ◙ Th3細胞

    ◙ Th17細胞IL-6とTGFⲻβの両者のサイトカインの存在下では,Th17細胞と呼ばれる細胞集団が誘導される. Th17はIL-17,IL-17F,IL-22などのサイトカインを産生し,細胞外で増殖する細菌の排除や真菌の感染防御,好中球が関与する組織傷害性炎症(強直性脊椎炎など)・自己免疫疾患に関与する(3型免疫応答;)
    サルコイドーシスでは,Th1細胞は肉芽腫の形成にTh17細胞は炎症や線維化の進行に関与する可能性が示唆されている.

    ◙ 濾胞性T細胞(Tfh細胞IL-6あるいはIL-21の存在下で分化する.IgEの誘導など,液性免疫で本命視されている.follicular helper

    ◙ Th9細胞IL-4とTGFⲻβの両者のサイトカインの存在下で分化する.

    ◙ 制御性T細胞(Treg細胞)(サプレッサーTとかレギュラトリーTとも): 細胞障害性T細胞に遅れて出現し,過剰な細胞性免疫応答や抗体産生を抑制する.生体の恒常性維持にも必須,とのことである.
    Tregは内在性Treg(naturally occurring regulatory T cell;nTreg)と誘導性Treg(inducible regulatory T cell;iTreg)に大きく2つに分類される.内在性Tregは胸腺内で自然発生し,一方,誘導性TregはTGFⲻβの存在下における抗原刺激により末梢血中の naïve T細胞から分化誘導される.

    ◙ CD4陽性キラーT細胞

    ◙ Th1細胞は細胞性免疫にTh2細胞は液性免疫に関与するというように,互いを抑制するようなサイトカインを放出しあっている.これを「Th1/Th2バランス」と呼ぶ.なお,Th細胞は環境サイトカインに依り各サブセットへ分化するが,サイトカインが異なる環境下に於いてはサブセットを転換する可塑性を示す.複雑・遷延化するアレルギー炎症の病態などに関与すると考えられ,単純なバランスでは済まなくなっている.

    ★CD8陽性T細胞:

    ◙ TC細胞キラーT(細胞傷害性サイトトキシック;cytotoxic またはキラー;killer)・・・HLAクラスI分子と結合した抗原ペプチドを認識し,細胞傷害性に作用する.微生物(ウイルスを含む)感染細胞・腫瘍細胞・非自己細胞を破壊・排除する.移植細胞の拒絶にも関わる.サイトカインを浴びると増殖し,かつ感染細胞を破壊する力がアップする.

    γδT細胞:粘膜面

    ★ 炎症の終息により90%のエフェクターTは消え,残りがメモリーTとして残る.

  7. 自然リンパ球 ILCs;innate lymphoid cells:特異的な抗原受容体を持たない自然免疫系の要素のひとつで,抗原との反応に依らないサイトカインを産生する.成熟したリンパ球として定常状態の組織に常在する.
    ILCsは 3 グループ(ILC1,ILC2,ILC3)に分類され,Th細胞の機能に対応している.
図 補
●樹状細胞  dendritic cells(樹枝状白血球

➀胎生期細胞由来:ランゲルハンス細胞
➁単球由来:炎症性樹状細胞
➂樹状細胞前駆細胞:

造血幹細胞由来の非リンパ系細胞(単球由来・マクロファージと兄弟)で, TLRシグナル により制御されている.抗原を取り込むと微生物が産生する分子(リポ多糖など)や産生される炎症性サイトカイン(IL-1,TNFⲻα)により成熟する.侵入部位で反応するマクロファージに対し,樹状細胞は移動しながら成熟・活性化し,外界に面する部位(皮膚,鼻粘膜のほか肺,消化器)で貪食細胞・抗原提示細胞として所属リンパ節のT細胞を活性化する.
常時,MHCクラスI分子・MHCクラスⅡ分子・補助受容体(インテグリン)のリガンド(CD86)を多量に発現し,表皮の成熟樹状細胞(Langerhans細胞)はT細胞を活性化する.形質細胞様樹状細胞は大量のインターフェロンを産生する.
表面にMHC+抗原ペプチド複合体と補助刺激分子(CD80,CD86)を高レベルに発現し,感染の情報をリンパ球に伝える.活性化された樹状細胞はIL-5を発現し,NK細胞の増殖・分化・生存を亢進させる. 1週間ほどの短寿命の細胞だそうである.

樹状細胞の種類 種類 分布
T-細胞関連樹状細胞 骨髄系樹状細胞
myeloid dendritic cell (MDC)/DC1
全身に分布
形質細胞様樹状細胞
plasmacytoid dendritic cell
全身に分布
ランゲルハンス細胞
Langerhans cell (LC)
表皮
真皮内樹状細胞
dermal dendritic cell (DDC)
真皮
指状嵌入細胞
interdigitating cell (IDC)
リンパ節,脾臓,胸腺
ヴェ-ル細胞
veiled cell (VC)
リンパ管内
B-細胞関連樹状細胞 胚中心樹状細胞
germinal center dendritic cell (GCDC)
リンパ組織内のリンパ濾胞
(胚中心)
濾胞樹状細胞
follicular dendritic cell (FDC)
リンパ組織内のリンパ濾胞
抗原担送細胞
antigen᠆transporting cell (ATC)
リンパ管あるいはリンパ洞
●赤血球  red blood cells(RBC)erythrocyte

赤血球数 男 400520万, 女 370480万

●血小板  platelet

30万 ほどある無核細胞.巨核球細胞膜の断片.血栓形成に関与するほか,
セロトニンを濃染顆粒から放出する.アラキドン酸代謝産物を産生する.マスト細胞の脱顆粒を誘発する. 【  血液 では 】 

●細網内皮系 reticuloendothelial system

血流やリンパ流に接し,異物の貪食・消化にあたる細胞系.異物には侵入病原菌のほか老化した赤血球や自己細胞を含む.
細網細胞,内皮細胞,マクロファージなど.

●線維芽細胞 fibroblast

コラーゲンなどを合成する結合組織細胞.IL-1により増殖

► 線維芽細胞増殖因子 fibroblast growth factor
神経系,四肢,顎,心臓の発生などいろいろな組織の分化・増殖に関与し,現在では20以上のファミリーが分かっている. 強い増殖・分化活性を持ち,シグナル経路は厳密に調節される.FGFの発現と重複して抑制因子が発現するが,この経路の変異でシグナルがずっと流れっぱなしになるのが悪性腫瘍ということである.なお,塩基性bFGFには強い血管新生作用がある.

●血管内皮細胞 vascular endothelial cells と 血管新生因子 vascular endothelial growth factor

内皮細胞は,血管やリンパ管の内壁をおおう上皮細胞である.PGIなどにより血管内の血液凝固を抑制する.傷害時に白血球を接着させる.血管新生の誘導をする.通常の成体では,女性の性周期や胎盤に関連する組織以外での恒常的な血管新生は観察されない.  臨床 では 】 

血管新生の最も基本的な場のひとつは,発生・分化の器官形成過程で起きるプロセスである.血管内皮細胞と造血幹細胞は,hemangioblastと呼ばれる共通祖先中胚葉細胞から分化してくると考えられている.hemoangio blast というのは血液-血管前駆細胞 progenitor cellの意味合いで,angioblastによる文字通りに新しく血管が生まれる状態は 脈管形成 vasculogenesis 血管創生(引続く分化過程では angiogenesis 血管伸長)として,成体での 血管新生 neovascularizationと区別する.また,成人においても同系統の血管内皮前駆細胞が存在し,血管に分化し,損傷した血管を修復または補充することができるとされる.すなわち,新生血管 neovascularity は,前駆細胞から分化した内皮細胞と増殖した血管内皮細胞とが複合して形成されると考えられる.

般に血管新生を促進させる状態は,炎症低酸素である.糖尿病網膜症・加齢黄斑変性のほか,全身的には骨折治癒(骨の形成)・心血管疾患(心筋虚血において側副血行路を作る)・慢性関節リウマチ(滑膜炎と新生血管が軟部組織を破壊)・悪性腫瘍,などで誘導される.血管新生のすべてが悪者ではなく,亢進と抑制が共に必要であることがわかる.眼科ではほとんどの新生血管は悪者である.網膜虚血が急激に起こればグリア細胞も死滅するが,慢性に経過する状態ではグリア細胞が VEGF を分泌し,透過性亢進や内皮細胞の発芽・遊走が促がされる.

血管新生は,炎症の発生と回復における必須の要素である.①毛細血管内皮基底膜の破壊と血管内皮細胞の変形,②内皮細胞の遊走と再配列,③内皮細胞の増殖,④内皮細胞の管状構造化と血管網の形成,という経過をとる.単球/マクロファージ,Tリンパ球などの炎症細胞は,内皮細胞の増殖,生存,アポトーシスに関わる炎症性および抗炎症性サイトカインを分泌することによって,血管新生プロセスに深く関与している.

多くの増殖因子やサイトカインが血管新生作用を持つことが報告されており,これらには,
血管内皮増殖因子 vascular endothelial growth factor;VEGF/胎盤増殖因子 placental growth factor;PlGF のほか,塩基性線維芽細胞増殖因子basic fibroblast growth factor;bFGF,上皮増殖因子epidermal growth factor;EGF,血小板由来増殖因子plateletderived growth factor;PDGF,形質転換増殖因子transforming growth factor;TGFⲻβ,腫瘍壊死因子tumor necrosis factor;TNFⲻα,IFNⲻγ,ILⲻ6,ILⲻ8,ILⲻ1などが関与する.

VEGFは強い血管透過性を示し,マクロファージを活性化する.酸素投与にて減少する.神経節細胞には必要成分で,アポトーシスを抑制している.

対するエンドスタチンは内因性の抗血管新生ペプチドで,内皮細胞の増殖,遊走,管腔形成を阻害する.

vascular:ラテン語 vasculariusangio:ギリシャ語 aggeion (ἀγγεῖον

growth factor:増殖因子,成長因子の双方が使われる.