眼の充血 hyperæmiainjectioncongestion

§.概  念

般病理では,充血(あるいは 発赤 Hyperämie oder Rötung)とは血管拡張と局所血流量の増大のこと.

血管自体の拡張によるときは能動性充血 active hyperemia
血流流出が妨げられたとき(うっ滞 congestion)は受動性充血 passive hyperemia である.
眼科では,結膜の所見で赤い目 pink / red eye 状態が中心となる.多くは能動性充血 injection と考えられる.
なお赤い目は,結膜出血と混同しないことと,写真撮影時の瞳孔内が赤く反射(red reflex)することではないことにも注意.


図 01 充血

■充血はおもに反応する血管の場によって ❶結膜充血と ❷毛様充血を区別する.
視力低下の有無についても重要な情報となる.

  1. 結膜充血(右下 血管図A

    瞼結膜球結膜の充血.奥ほど強い.血管収縮剤の点眼により消失する.

    ・結膜炎での,自覚他覚所見で重要.
    ・瞼結膜球結膜のいずれか方のみの発赤充血の情報も,鑑別として重要である.
    ☞☞ 感染性結膜炎の可能性が否定できない時は,院内感染に注意を払いながら検査を進めることになる.

  2. 毛様充血(右下 血管図F

    上強膜を主とした輪部血管の拡張.深部血管であることで,個々の毛細血管は見えず輪部に沿いびまん性に発赤を認めるのみとなる状態.血管収縮剤の点眼で消失しない.

    ・角膜炎・強膜炎(輪部は角膜実質と同質の組織のため反応),
    ・ぶどう膜炎(毛様体に接する強膜の反応特に急性の虹彩毛様体炎で),
    ・眼圧上昇発作(眼内のうっ血による),
    などで見られる所見.

図 02 輪部血管

  1. 角膜周擁充血(右血管図D,E

    輪部の血管拡張で表層の毛細血管が観察できるものを,角膜周擁充血という.この場合,(狭義の)毛様充血と区別する.

    ・輪部の終端血管が周擁血管係蹄であり,ここを中心とした充血のはずであるが,教科書によっては毛様充血と同義に扱っていたりする.ここでは右の説明図に倣い,毛様充血を広義と狭義とした.

  2. 強膜充血

    輪部から離れた深部充血.

    ・強膜炎,上強膜炎(炎症性肥厚圧痛などを伴う.

  3. そのた

    ・結膜動静脈拡張(あるいは,うっ血)内頸動脈海綿静脈洞瘻,眼窩静脈炎,眼窩腫瘍,ときに大動脈炎症候群.
    ・頭痛群発頭痛(叉神経-副交感神経反射が主役で,副交感神経を介して縮瞳や結膜充血を起こす)
    ・出血結膜(下)出血.結膜血管の破綻だろうが,きっかけに心当たりがないのが普通というかほとんどである.通常,無害ということになっている(特発性).当然,出血性結膜炎や外傷の既往,全身疾患などがあれば別に扱う.

  4. ということで,

    ❶結膜充血は()結膜動脈系の反応,
    ❷毛様充血はぶどう膜血管(前毛様動脈)系の反応,による.

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2007