異常眼球運動

図 01 眼球運動の仕組み

眼球運動障害皮質中枢から外眼筋に達する眼球運動の神経経路の,いずれかの部位に病変が起こると,眼球運動は障害される.これは,注視対象から視線が外れる現象となる.

○障害神経:動眼神経,滑車神経,外転神経

○眼球運動障害

  1. 核上性眼筋麻痺

    1. 中枢性障害(皮質障害:追従運動障害
             (脳幹障害:注視麻痺,輻湊麻痺,開散麻痺

    2. 注視麻痺:共同運動が障害された状態である.

      1. 水平注視麻痺

      2. 垂直注視麻痺:Parinaud症候群,

    3. 輻湊麻痺

    4. 開散麻痺

    5. 核間麻痺:MLF症候群

    6. 異常神経支配:Duane症候群,

    7. そのた

  2. 核性・核下性眼筋麻痺(神経核または神経線維の障害≒末梢性障害

    1. 動眼神経麻痺

    2. 滑車神経麻痺

      先天性
    3. 外転神経麻痺

    4. 全眼筋麻痺

      眼窩先端部
  3. 神経筋接合部障害:筋無力症

  4. 筋性障害:ミオパチー(慢性進行性外眼筋麻痺,甲状腺眼症),筋炎,など

  5. 機械的眼球運動障害:眼窩腫瘍,眼窩骨折,眼窩出血,篩骨洞の炎症,など

眼球運動異常単眼運動( duction ひき運動)の異常と両眼運動( version むき運動)の異常がある.般に単眼運動の障害は神経核以下の病変で,両眼運動(共同運動)の障害は核上性(皮質中枢ないし中間中枢)の病変で起こる.結果は,斜視となる.
斜視 strabismus とは左右眼の視軸が同じ方向(固視点)でない状態(眼位の異常)で,共同性斜視と麻痺性斜視に分ける.麻痺性斜視は通常,眼筋麻痺という.

異常眼球運動は通常,眼振のカテゴリーとなる.

(詳しくは 視能矯正学の講義で

■眼振または眼球振盪 nystagmus

自分の意思とは関係ない不随意性で律動的な眼球の往復運動で,急速相・緩徐相があり,急速相の向きを眼振の方向とする.方向によって水平眼振,垂直眼振,回旋眼振などがある.
律動眼振(jerk nystagmus:jerky 衝動性とも)とは急速相と緩徐相がはっきりしているもので,振子様眼振(pendular nystagmus)とは急速相が無く両者の速度の差があまりないものをいう.
眼位によって眼振の程度に差があり,ある視方向で眼振が停止する(静止位).
発症時期から先天(乳児)眼振と後天眼振に分けられる.乳児期の視力喪失・白子・全色盲によるものは,振子様眼振となる.
なお,病的な動きは固視方向から視線がずれる緩徐相であり,急速相は修正方向である.

  1. 生理的眼振
    最端視眼振極端な速報視野垂直視での衝動性眼振,極位眼振
    視運動性眼振動くものを見るときに発現する衝動性眼振
    カロリック(温度)眼振外耳道の温・冷刺激により発現,迷路性誘発眼振(温度眼振,電気眼振)
    回転による眼振 rotation回転中眼振や回転後眼振.Frenzel眼鏡
  2. 病的眼振
    1. 先天性眼振:
      ・乳児眼振,
      ・周期交代性眼振(periodic alternating nystagmus;PAN:一見律動眼振にみえるが時間の経過とともに周期的に眼振の向き(急速相の向かう方向)が逆転する.意外に多いとのこと),
      ・潜伏眼振(laent nystagmus:片眼の遮蔽で誘発される.開放眼に向かう急速相),
      ・点頭けいれん(spasmus nutans)
      ・seesaw眼振
      など
    2. 前庭性眼振:半規管動眼反射の経路に異常
    3. 注視眼振:注視方向が維持されず,眼窩の中心に戻る(ドリフトする).
    4. 反跳眼振:側方視眼位を一定時間(20 秒位)保持した後,眼位を正中に戻した時に認められる眼振.rebound nystagmus
    5. 輻湊眼振

■眼筋麻痺 ophthalmoplegia

麻痺性斜視は,責任部位が外眼筋自体にあるもの(筋性)と神経性とに分ける.
神経性麻痺は核上性,核性,核下(末梢)性に分ける.核上性麻痺は,皮質性障害と皮質下性障害がある.皮質性障害は,破壊性病変では同側性に,刺激性病変では反対側に偏位する.共同偏視である.皮質下性障害は,PPRFの病変では健側への共同偏視と患側への水平注視麻痺を生じる.riMLFの病変では垂直(特に上方)注視麻痺を生じる. 核間麻痺は,側方注視の際の患側眼の内転障害,健側眼(外転時)の眼振,輻湊の保存がみられる.MLF症候群である.
核性・末梢性の眼筋麻痺は,動眼神経麻痺・外転神経麻痺・滑車神経麻痺などとなる.眼窩先端部病変は末梢性障害である.

筋性麻痺は,外眼筋炎・筋自体の障害(ミオパチー myopathy ),神経筋接合部の障害,その他がある.

■輻湊麻痺,開散麻痺 

核上性(中間中枢)の器質病変による非共同運動の異常という位置付けになる.

■筋性麻痺

図 02 異常眼球運動

■麻痺の程度
○麻痺paralysis
○不全麻痺paresis
○麻痺palsy  病名で用いるようだが・・

眼球の偏位による病変の特定(病変部の正常機能が障害されたとして考える)

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§例題

●右内側縦束の病変で障害されるのはどれか
  a 左眼外転
  b 左眼内転
  c 輻 湊
 ◎d 右眼内転
  e 右眼外転

2010