第12回の会議で帝京大学医学部病理で診断が困難、あるいは問題症例と考えられる成人慢性肝炎18症例を提示し、参加会員が臨床情報なしに診断(F1-F4)した。
その結果を第13回で開示して討論を行った。棒グラフはその診断結果(11名の病理医のみ)である。
なお 標本7,8は同一患者(HBV)からの検体である。
標本8(1983年)の症例に対しては11名のうちF4が9名、無回答が2名であった。標本7は15年後の1998年の再生検である。腹腔鏡はおこなわれず、肝生検の診断はF2であった。
会員の診断はF1が7名、F2が1名、F3が1名、無回答2名である。肝硬変が15年後に肝硬変でなくなったと考えられる症例である。
◆会議のまとめ
1,肝硬変の病理診断は線維隔壁の形成と再生結節の円形度に大きく依存している。
2,境界病変は存在するので病期をどれかに決定しなければならないことはない。
F2>F3,F2〜F3という診断もありうる。
3,F4の診断はインターフェロン治療の適応とならないので、慎重にする。
4,臨床的に明らかに肝硬変でも病理的には肝硬変とできない場合がある。
肝生検の限界性を臨床医に理解してもらう。
5,F3に関して組織の構築のひずみ(乱れ)が一部でよいか、全体に存在しなければ
ならないかは結論がでなかった。
6,肝硬変の場合に標本がばらけてとれてくることが少なくない。
標本のとれかたも考慮にいれ、所見の項で記載する。
7,可逆性の肝硬変が存在することについてコンセンサスが得られたが、病理診断とし
て可逆性か不可逆性かを判断するには今後、線維の質に注目していく必要がある。