14:膵臓の新しい手術:膵区域切除について

膵臓の切除手術は,長らく膵頭部の病変ではWhipple procedure(胃部分切除、全十二指腸切除、膵頭切除)と呼ばれる膵頭十二指腸切除術で代表されるように切除範囲が過大なものが行われてきました.これに対し、1970年代後半に入り、胃と十二指腸球部を温存するPPPD(Pylorus-preserving pancreatoduodenectomy; 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術)が行われるようになり我々もいち早くそれを取り入れてきました。いわゆる臓器温存手術であります。

その後、1980年に慢性膵炎を対象に十二指腸を温存したDPPHR(十二指腸温存膵頭切除術)が登場しました。これは膵頭の部分切除であるため、腫瘍性病変には適応とならなかった。1980年代後半に,我々は十二指腸を温存して、さらに膵頭を全切除する術式(十二指腸温存膵全切除術)を工夫し発表いたしました。主膵管内の乳頭腺癌症例ではこの術式ですでに10年生存経過している症例も経験しています。この術式は、膵区域切除といえるものであります。

  その後、膵鈎状突起の腫瘍には、膵鈎状突起切除を、さらに、腹側膵の腫瘍性病変には膵腹側膵切除を行ってきました。また、膵頭の背側膵の病変には膵頭背側膵切除を工夫し、また、膵頸部や体部の病変に対しては中央区域切除を行ってきました。また、膵尾側切除でも通常は脾臓も同時切除してきたが、脾臓の免疫抵抗能力を考慮して、脾臓を温存した膵尾側切除も行っています。このように膵臓の手術におきましても,患者さんの生活の質,生命の質(QOL)を高めるべく努力を続けてきております.
  

これらの膵区域切除は、縮小手術ともいわれますが、特徴は、予後の良い腫瘍性病変に対して必要最小限の切除であるとともに、膵機能と消化管機能を温存する人にやさしい手術術式であることであります。


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高田忠敬 (E-mail:takada@med.teikyo-u.ac.jp)までお願いいたします。


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