15:膵臓癌に対するわれわれの研究の概要


 (A)助成研究、共同研究について、


(a) 厚生省班研究班員として『共通プロトコールに基づいた膵癌外科治療の評価法に関する研究』:これは、膵癌手術におけるリンパ切郭清の意義を明らかにすべく、拡大リンパ節郭清と標準的リンパ節郭清とをrandomized controlled study(臨床比較試験)を行い、膵臓癌に対する合理的な手術術式を明らかにしようとするものです。


(b) 文部省科学研究助成研究として『膵胆道がん切除後の栄養としての経腸栄養と経静脈栄養の比較研究』:これは、膵胆道癌の切除の基本的術式である膵頭十二指腸切除後の経過がどのような栄養投与によっていかなる変化をするか血中の各種因子を調べ、実際に合併症の発生について比較し、患者さんにとりよりよい方法を模索するものです。


(c) 放射線医学研究所との共同研究として『重粒子(炭素イオン)線による膵腫瘍臨床研究班としての臨床試験』:通常、癌に対するx線照射についてはある程度の知識を有していると思いますが、膵臓癌にたいしては、x線感受性が低いこと、x線が人体を通過する特徴を有し、また、周囲臓器を照射野から外すことが困難なため、効果をあげることができませんでした。一方、最近開発された重粒子(炭素イオン)は目標体積の深さに応じた深さで照射をとめることが可能で、また、その部で最大の線量となる特徴があります。生物学的効果の指標の一つである飛跡の単位あたりの平均付与エネルギーが通常の放射線より高いため従来の放射線抵抗性腫瘍にたいしても有効性が期待されます。そこで、手術前にこの重粒子を照射し、癌を閉じ込め、その後に切除を行うことで膵癌の治療成績を向上させようとの研究です。


(d) 膵臓財団研究助成研究として、『膵癌に対する新しい抗癌剤感受性試験を用いた化学療法の基礎的ならびに臨床的評価』:膵臓癌に対する抗癌剤療法には、まだ確定した一般的方法なものがなく、他の癌腫に用いられている薬剤をもちいても、効果がないだけでなく副作用だけが問題となっておりました。そこで、新しい抗癌剤感受性試験としてCD-DSTを採用し、選択的に効果が期待される薬剤をみつけだし治療効果をあげようとする研究です。


(B) われわれの研究グループでは、さらに肝臓膵臓胆道に関して各種の研究テーマを取り上げ研究し、よりよい医療を行うため努力しております。
1:膵臓癌ならびに胆道癌におけるmicrometastasisの研究:これは癌切除後の再発形式の一つである局所再発や肝転移が肉眼的、病理組織学的検索であきらかにされないものでも、遺伝子や生物学指標によって明らかにし、より根治的な成績向上を目指そうという研究です。

2:膵臓癌ならびに胆道癌の進展、転移に関する生物学的アプローチ:遺伝子や生物学的指標によって明らかにしようという研究です。

3:膵臓癌ならびに胆道癌における癌浸潤、転移のメカニズムに関する免疫組織染色を応用した電子顕微鏡を用いた微細構築

4:膵癌、胆道癌におけるリンパ流とリンパ節転移のメカニズムならびに、適切なリンパ節郭清の研究

5:膵癌、胆道癌における局所進展度(Local Stage)の設定と転移との関連

6:膵臓の区域切除ならびに縮小手術の開発と膵内外分泌ならびに消化管ホルモンの動態からみた意義:膵病変に対する必要最小限の手術の開発とその意義に関する研究。

7:閉塞性黄疽における胆汁の腸内還元による胆汁酸の変動に関する研究:閉塞性黄疽においてはわれわれの開発した経皮的胆汁ドレナージ(PTCD or PTBD)が一般的に行われているが、胆汁を対外に排泄するものと、胆汁を腸管内に誘導するものでは患者さんの生活の質(QOL) に差があります。そこで、実験的に閉塞性黄疽を作成し、その後、胆汁を対外に排泄するものと腸内に誘導するものでは根本的に違いがあると考えた。最も、大きな変動としては、腸肝循環をみる胆汁酸を中心とした研究が適していると考え研究。

8:重症膵炎における重症度判定とCT scoreによる予後ならびに治療効果判定に関する研究

9:重症膵炎における動注療法の積極的応用の効果

10:急性膵炎の治療における経腸栄養の効果を生物学的指標ならびに細菌感染予防の面からみた研究

11:実験急性膵炎における重症化因子に関するエンドトキシンの影響
12:実験膵炎における膵の微細血管の構築

13:胆石膵炎の発症メカニズムと適切な治療法の検討

14:肝臓癌における手術適応の拡大。特に、術前門脈塞栓術と動脈塞栓術の臨床的効果と生物学的指標の変動に関する研究

15:原発性肝臓癌と肝内胆管細胞癌の異同に関する臨床病理的ならびに組織学、生物学的指標に関する研究

以上の研究を臨床と合わせ行っております。皆様のご援助、ご協力をお願いいたします。


本ホームページ http://www.med.teikyo-u.ac.jp./~takada/index.htmlに関するお問い合わせは

高田忠敬 (E-mail:takada@med.teikyo-u.ac.jp)までお願いいたします。


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