第3回日本内分泌学会関東甲信越支部学術集会
2003年2月14日・15日
会長 高見 博

 

 このたび第3回 日本内分泌学会関東甲信越支部学術集会を2003年2月14日・15日に日本都市センター会館において帝京大学医師会、東京都医師会の後援のもと開催させていただきました。
 本支部は全国に計9ある日本内分泌学会の支部の一つであり、10都県からな り会員数は約2380名と大きなものです。日本内分泌学会全体の学術総会は主と して研究と臨床の両面から内分泌学を追及し、科学的事実に立脚した臨床の発 展をめざしています。しかし、医療の現場からみますと、今日の内分泌の臨床の水準を高め、さらに浸透、普及させていくには地域性の高い学術集会も必要であると考えられます。今年で3回目となり、支部長・事務局長もかねております不肖 私が主催いたしました。

 2月14日(金)はサテライトシンポジウムを開催いたしました。最初の講演は慶応大学 猿田享男理事長の司会で京都大学 中尾一和教授(前理事長)に「内分泌代謝学と展開医療(Translational medicine)」を、また今年度の日本内分泌学会会長 関原久彦教授の司会で神戸大学 千原和夫教授に「Somatopauseに対するホルモン補充療法は是か非か」について講演いただきました。2月15日(土)は学術集会では特別講演を大分の野口病院院長 野口志郎先生に「甲状腺分化癌の適切な手術法と予後」についてお話いただきました。多くの症例を詳細に分析され、説得力のあるご発表でした。また、本学術集会は各地域で行われている種々の研究会・懇話会などと同時開催し、合理化をめざしております。
 今回は副支部長の森昌朋教授のお世話で、第28回 北関東内分泌懇話会を同時開催させていただきました。
 今回の公募演題は一般演題43題、研修医部門15題、学生部門9題の計67題となり、1日で行うため3会場での同時発表になってしまい、その結果聞くことができない演題がでてきたことを申し訳なく思っております。また、午後には「実地医家とのクロストーク 生活習慣病にひそむ内分泌疾患:その診断・治療のコツ」のセッションを設けました。

 参加者は358名でした。研修医と学生の発表は聴衆に大いに受けました。彼らはもちろん参加費無料(学生は交通費支給)であり、100名近くの方が参加しました。特に、学生部門では友人たちを何人も引き連れてきて自慢げにしていたり、学生同士の質疑応答など私たちが想像していた以上に活発に、堂々としていました。これが本人にとり良き思い出になるとともに自信をもって医学の道を進むきっかけになれば私たちとしては大きな喜びです。また、研修医の先生にはこれを機会に内分泌にも興味を持ってもらえれば嬉しく思います。もう一つの驚きは、彼らの多くが読み原稿なくして、いわゆるフリーハンドで落ち着いて言いたいことをきちんと話していたことです。若い人たちには私には分からない新しいエネルギーというか潮流を感じました。帝京大学からも外科研修医1名、学生(5年生)2名のすばらしい発表があり、その積極的な発表が高く評価されていたのは発表後の拍手の多さでわかりました。一方、土曜日の午後の実地医家とのクロストークでは内分泌の診療にも従事されている、従事せざるをえない実地医療の先生にもお越しいただきました。内科 寺本民生教授にはご多忙のところ教育的講演をお願いいたしました。また、帝京大学からも幾人かの先生に座長・コメンテーターをしていただき、ここに感謝いたします。

 この学術集会は日本内分泌学会の会員であるか否かを問うことなくどなたでも自由に参加し、真に実地医療を勉強する会にいたします。そして、内分泌にも関与していく気になったときに入会していただければよいと思っています。日本の医学界は職業組織(ギルド)というよりは、研究組織として発展してきました。欧米のある種の学会のように一種のギルドとして社会に対して責任を持って会員である医師の育成や医療組織、医療施設の改善に努力していません。 むしろ、自らの組織拡大のために会員数を増やそうと努めてきています。この親団体の日本内分泌学会もサイエンス重視の学会で実地の臨床がおき去りになっている嫌いがあります。

 私はこのたび日本内分泌学会におきまして、2期目、5年目の理事選挙で幸いにも368票という過去最高の票数をいただきました。その意味していることを理解し、translational researchを基盤に、学会の敷居を低くし、究極は生きた臨床を追求する生き生きとした学会にする所存です。2年後の2005年には第78回日本内分泌学会学術総会の会長を外科系では初めてのことですが、務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。