●頸部・前胸部に全く傷を残さない

 「腋窩アプローチによる内視鏡下甲状腺・副甲状腺手術」

                                       教授 高見 博
         
                                  池田佳史

 

甲状腺・副甲状腺切除術にも内視鏡下手術が導入され、魅力的な術式として注目されつつあります。

私たちは内視鏡下手術を行ってきましたが、頸部や前胸部の手術創は人目にふれたり、人目には

ふれにくくても本人に見えるということで、違和感や抵抗感を感じることが多いと思います。  

このたび、私たちが確立しました「腋窩アプローチによる内視鏡下甲状腺・副甲状腺手術(TI法)」は、

頸部・前頸部に全く傷を残さず、患者本人にも手術創が見えないため、美容的、精神的にも十分に

足できる術式と評価を受けております。本術式の主な利点は以下の通りです。

 

1)頸部・前胸部に全く傷がない。

2)手術操作腔を小さくしたため、皮膚の触覚鈍麻、知覚異常が軽度で、皮膚のひきつれもおきにくい。

3)送気圧を4 mmHg以下と低圧にしたため、顔面や縦隔への気腫の進展はなく、頸部皮下気腫も極
  めて軽度である。

4)通常の内視鏡下手術では頸部・前胸部の手術創を可及的小さくするため、手術適応となる大きな
  腫瘤は摘出困難である。しかし、本法では腋窩の手術創を3cm程度にしても腋窩の疼痛、知覚異
 
常・違和感がなく、大きな腫瘤でも摘出可能となる。

5)本法は、開放手術と同様に甲状腺の側面より手術操作するため、視野が良く、反回神経麻痺、副
  甲状腺機能低下、術後出血などの合併症はおこりにくい。