フォーラム1
5月 13日 17:00〜18:00(第2会場) 【 司会 】 前川和彦 (東京大学救急医学) |
演題番号:F3 | 熱傷侵襲に対するサイトカイン産生抑制物質(JTE-607)の影響(第1報) |
佐々木 淳一、藤島 清太郎、篠沢 洋太郎、山崎 元靖、堀 進悟、相川 直樹 | |
慶應義塾大学医学部救急部 | |
コメンテーター | 遠藤 重厚 (岩手医科大学高次救急センター) |
熱傷・外傷受傷後,手術後,感染などの,いわゆる外科的侵襲下において,その病態修飾に多くのサイトカインが関与していることが明らかになってきており,我々も炎症性サイトカインのうち好中球遊走活性化能を有するInterleukin-8(IL-8),抗炎症性サイトカインのIL-10が熱傷受傷後の病態に関与していることを報告してきた.そこで熱傷受傷後の病態,特に活性化された好中球により惹起される肺障害に対して,これらのサイトカインを制御すること(cytokine modulation)がどのような影響をおよぼすのかは興味あるところである.
【目的】 動物熱傷モデルにおいて,サイトカイン産生抑制物質(JTE-607),ステロイド(prednisolone)によるcytokine modulationの熱傷侵襲におよぼす影響を検討する. 【方法】 雄性BALB/cマウス(体重23-24 g)を以下の4群に分類し検討を行った.Sham群(熱傷なし,n=10),Control群(熱傷のみ,n=10),JTE群(熱傷1時間前JTE-607,100 mg/kg腹腔内投与,n=10),Pred群(熱傷1時間前prednisolone,10 mg/kg腹腔内投与,n=10).熱傷侵襲はエーテル麻酔下にマウスの背部に作成した約50 %BS AのIII度熱傷とし,熱傷作成2時間後に生死判定,屠殺を行い,マウスにおいて好中球遊走活性化能を有するサイトカイン(macrophage inflammatory protein-2α; MIP -2α)の肺組織中濃度を測定した(R&D社製sandwich ELISAキット,測定限界10 pg/m l). 【結果】 受傷後2時間でSham群は全例生存,Control群は全例死亡,JTE群は生存2例死亡8例,Pred群は生存2例死亡8例であった.肺組織中のMIP-2α濃度は,Sham群 1873.5±923.8 pg/ml(mean±SEM),Control群 3424.2±982.0 pg/ml,JTE群 516.6±1 42.4 pg/ml,Pred群 2086.6±878.6 pg/mlで,Control群に比較しJTE群では有意に低値を示した(p<0.05). 【結論】 マウス熱傷モデルにおいて,サイトカイン産生抑制物質(JTE-607)は肺組織中のMIP-2α産生を抑制し,熱傷後の臓器障害抑制に有用となる可能性が示唆された. |