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フォーラム2  5月 14日 15:40〜16:20(第2会場)
【 司会 】 加来 信雄  (久留米大学救急医学)

演題番号:F4 広範囲熱傷時における血漿白血病抑制因子(Leukemia Inhibitory Factor, LIF)の動向
秋田 定伯、藤井 徹
長崎大学医学部形成外科
コメンテーター 猪口 貞樹  (東海大学救急医学)
  広範囲熱傷時に認められる,TNF-α, IL-1, IL-6に代表される各種炎症性サイトカインは,全身性の炎症を反映し,高度の急激な上昇は,予後を示唆する因子とも考えられている. SIRS(Systemic Inflammatory Response Syndrome) もしくは敗血症,敗血症性ショックでは,これらサイトカインの役割は特に重要である.白血病抑制因子(LIF)は,IL-6 familyに属し骨髄性白血病の抑制因子として分離同定され,その後多機能サイトカインとして,各種細胞,組織で発現されている.とりわけ神経―免疫−内分泌系のmediatorであり,LIFノックアウトマウスのendotoxic shock modelでは,副腎刺激ホルモン(ACTH)の有意な低下を認める.これらから,LIFの広範囲熱傷の際の動向を検討し,病態との関連について自験例で調査した.

【方法】 対象はBSA 35% 以上の,8例であり,うち6歳以下の小児は3例であった.血漿LIFはradioimmunoassay (RIA) のcompetitive binding assay法であり検体は2回検定し,感度は50 pg/mlであった.また、蓄尿中のコルチゾールも測定した。(BML社, range 38.7-174 microgram/day)

【結果】 小児例3例では,いずれも病悩期全般で,LIFは検出されなかった.死亡3例では受傷初期より,LIF値は高値をとり,最大350 pg/mlであった.救命し得た成人2例では,初期には軽度上昇を認めるにとどまり,経過中一時上昇したものの病状の回復と共にLIF値は下降した.

【結論】 血漿中のLIF値は,全身性障害が高度の場合熱傷初期でも有意に上昇する傾向があり、また、同一患者であっても、全身状態の悪化と共にLIF値も上昇し、尿中のコルチゾール値とも相関傾向にあった。

【文献】 Akita S., Malkin J., and Melmed S. Disrupted murine leukemia inhibitory factor (LIF) gene attenuates adrenocorticotropic hormone(ACTH) secretion. Endocrinology 137(7), 3140-3143, 1996

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