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フォーラム3  5月 14日 16:20〜17:00(第2会場)
【 司会 】 岡田 芳明  (防衛医科大学校救急部)

演題番号:F7 ブドウ球菌感染時に抗生物質を放出する創傷被覆材の開発
鈴木 義久、鈴木 京子、西村 善彦、谷原 正夫*、柿丸 好海**
京都大学医学部付属病院形成外科、奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科*、(株)クラレ、メディカル開発グループ**
コメンテーター 川上 重彦  (金沢医科大学形成外科)
【目的】 熱傷創では感染は高頻度に発生する。そこで細菌感染創でのみ抗生物質を放出する被覆材の開発を試みた。

【方法】 (1)細菌感染創浸出液中の酵素の測定:ラットの背部に黄色ブドウ球菌(S.A.)感染ポーチを作製し、浸出液に含まれる各種酵素活性を検索した。創傷被覆材(PVA-(linker)-GM)の作製:感染創浸出液中の酵素で特異的に切断されるペプチドリンカーを介して、ポリビニルアルコール( PVA )ゲルにゲンタマイシン(GM)を結合させた。
  (2)感染創浸出液によるゲンタマイシン放出試験:黄色ブドウ球菌感染ポーチあるいは非感染ポーチから採取した浸出液にPVA-(linker)-GM加え、24時間後放出されたGM量を阻止円法およびFPIA法で測定した。
  (3)in vitro抗菌試験:3.0×103の黄色ブドウ球菌液にPVA-(linker)-GMあるいはPVA(コントロール)を加え、24時間後の細菌数をカウントした。

【結果】 (1)細菌感染創浸出液中には、有意に高いトロンビン様酵素活性を認めた。
  (2)トロンビンで切断されるリンカーを用いて作製したPVA-(linker)-GMを感染創浸出液と接触させると、阻止円法、 FPIA法ともにMIC以上のゲンタマイシンの放出を認めた。非感染創の浸出液ではゲンタマイシンは全く放出されなかった。
  (3)PVA-(linker)-GMはin vitroで有意に細菌数を減少させた。

【結論】 以上の結果からPVA-(linker)-GMは感染創浸出液と接触した場合にのみ有効量のゲンタマイシンを放出し、抗菌効果を示すことがわかった。今回はブドウ球菌に対するcontrolled release systemを開発したが、他の菌についても固有の酵素を見い出し、それに対するリンカーを設計し、その菌に有効な抗生剤を結合させることも可能である。したがって、本デバイスは理想的な抗生剤放出システムを実現した創傷被覆材といえる。

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