フォーラム4
5月 14日 17:00〜17:40(第2会場) 【 司会 】 吉岡 敏治 (大阪府立病院救急診療科) |
演題番号:F8 | 広範囲重度熱傷に対する周術期CHDFの有効性 |
田中 秀治、島崎 修次 | |
杏林大学救急医学 | |
コメンテーター | 益子 邦洋 (日本医科大学附属千葉北総病院救命救急部) |
【背景】 広範囲重度熱傷に対する早期熱死組織除去が一般化するにつれ患者救命率は確実に改善された。しかしながら高度な侵襲が加わった直後にくり返して植皮手術を行うことはSIRSを引き起こし、しばしば呼吸不全が招来され治療に難渋する。熱傷早期からの侵襲とそれに続く創感染によってひき起こされる高サイトカイン血症の状態に侵襲の強いデブリードマン&植皮手術が行われることにより、Second insultが加えられ、その結果、肺でのBurstがおこることは想像にかたくない。これを予防する手段として、エンドトキシンやサイトカインブロックを起こすさまざまな薬剤投与が行われているが未だ明らかな結果はでていない。唯一の方法としてこれらのメディエーターを根こそぎ除去する持続血液濾過(CHDF)が有効であることが考えられるが、広範囲熱傷とくにSecond hitをきたす周術期における有効性は今報告されていない。
【目的】 本研究の目的は広範囲熱傷患者の敗血症期に周術期CHF管理を行い、呼吸循環に対する効果を検討すること。 【対象と方法】 体表面積30%以上の広範囲熱傷患者8例の熱傷後60日以内に行われたデブリードマン&植皮術前後においてCHDFを導入し、以下の項目を各手術前後で検討した。検討パラメーター:1)組織代謝、呼吸循環動態 2)炎症性サイトカインであるIL-6,IL-1,TNF-1,やEt,1-3betaD gurukan、3)肺でのBAL中炎症性サイトカイン。 【結果】 受傷後1週以内の超早期手術では循環動態や呼吸状態には大きな変動は認められなかったが、熱傷後2週に入ると呼吸循環動態は明らかに敗血症を呈し、SVRIの低下、CIの増加、VO2増加、RIの低下が認められた。CHDF導入後には血中サイトカインの低下と共に、脈圧の増加、SVRIの増加、CIの低下、VO2低下、RIの改善を認めた。とくに手術後に増加するBAL中のIL-6は感染期の手術では回数を重ねるごとに術後での上昇率が増加したが、CHDFの導入によってこの上昇は改善し、肺へのIL-6、IL-8等のサイトカイン集積を抑え、呼吸不全の発生を軽減していることが判明した。 【考察】 重傷熱傷の急性期手術はサイトカインの嵐を人為的にひき起こす侵襲の高い方法であった。安全に周術期を乗り越えるためにも敗血症期の手術はできるだけ低侵襲、短時間を心掛けると共に、持続血液濾過の積極的導入が効果的と考える。 【結語】 このようなさまざまな周術期管理の積み重ねの上にこそ超早期手術は安全かつ確実に行われ、広範囲熱傷の治療成績を改善するものと考えている。 |