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フォーラム4  5月 14日 17:00〜17:40(第2会場)
【 司会 】 吉岡 敏治  (大阪府立病院救急診療科)

演題番号:F9 重傷熱傷患者の骨格筋フェニールアラニントランスポート、骨格筋、皮膚蛋白代謝に対する持続的高糖質経管栄養および長期持続的インスリンの投与効果
桜井 洋一、Wolfe RR、Herndon DN
藤田保健衛生大学医学部消化器外科第3科、Galveston Unit,Shriners Burns Institute
コメンテーター 長谷部 正晴  (帝京大学救命救急センター)
【目的】 安定同位標識トレーサーを用い、血清中遊離フェニールアラニンの骨格筋細胞内へのトランスポートを空腹時、高糖質経管栄養投与時、長期持続的インスリン併用投与時において測定し、アミノ酸トランスポート、骨格筋、皮膚における蛋白代謝に対する効果を検討した。

【対象および方法】 重症熱傷患者(全身体表面積の30%以上の熱傷患者)9名に、胃管、十二指腸管より高糖質経管栄養溶液(Vivonex TEN)を一日当たりの安静時熱量消費量の1.4倍のカロリーを7日間にわたり持続的に投与した。これに加えてインスリンおよびグルコースを持続的にさらに7日間投与し、高糖質経管栄養単独の効果と比較検討した。経時的な他の臨床的パラメーターの影響を除くためこれらの治療期間の順序を無作為に行った。各実験期間の最終日に4時間の[15N]フェニールアラニン(Prime:2μmol・kg-1,Constant:0.05μmol・kg-1min-1)を持続微量投与し、three−compartment modelにより、各分画間のフェニールアラニンの各Flow(F)を算出した。FM,A(血清からのトランスポート)/Fin、(大腿動脈より流入するフェニールアラニン)比をフェニールアラニントランスポートとした。さらにこれらのデータにもとずいた筋組織における蛋白合成、蛋白分解速度も算出した。同時に4時間の[13C6]フェニールアラニン(Prime:2μmol・kg-1,Constant:0.05μmol・kg-1min-1)の持続注入も施行し、tracer incorporation法を用いて筋肉、皮膚組織における fractional synthetic rate(FSR)も算出した。

【結果】 骨格筋細胞内におけるフェニールアラニン出現率(RaM)は、FM,AとFM,O(蛋白分解)の総和であり、細胞内に取り込まれた遊離アミノ酸が蛋白合成に用いられると考えられ、持続的インスリン投与により、FM,A/Fin ratioは0.34±0.05と高糖質経管栄養単独投与時の0.19±0.05に比較し改善したが正常人の0.53±0.03より低値であった。筋組織、皮膚組織におけるFSRは高糖質経管栄養単独でそれぞれ2.62±0.32%/day、13.31±2.12%/day、インスリン投与では4.21±0.77%/day,22.75±5.49%/dayと持続的インスリン投与により筋組織、皮膚組織で蛋白合成速度が増加した。

【結語】 重傷熱傷患者ではアミノ酸トランスポートの障害が認められ、持続的経管栄養と持続的インスリン、グルコースの併用投与により骨格筋におけるアミノ酸トランスポートの障害が改善され、その結果、全身の蛋白バランスの改善がみられた。持続的インスリンの投与は骨格筋におけるアミノ酸、蛋白代謝改善に有用であり、臨床的に熱傷患者における骨格筋などのlean body massの保持、皮膚における創傷治癒の促進を可能にする有用な治療であると考えられた。

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