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一般演題:[病態生理]   5月 13日 09:00〜09:50(第1会場)
【 座長 】 島津 岳士  (大阪大学救急医学)

演題番号:A001 深達化における浸透圧勾配仮説
原田 輝一、黒田 徹、志賀 元、野村 智久、宮下 富士子、大森 達人、堤 晴彦、小林 正幸
埼玉医科大学総合医療センター 救命救急科
【目的】 高ナトリウム血症が熱傷創の深達化に与える影響を見るためにラットによる2群比較実験を行った。

【方法】 Wistar系ラットをネンブタールにて麻酔後、背部に直径2cmの2度熱傷創(70℃、5秒の金属プレートによる接触性熱傷)を作成した。高ナトリウム群には10ml、850mEq/lの食塩水を腹腔内投与して高ナトリウム血症を起こさせた。コントロール群には逆にその予防のために10ml、100mEq/lの食塩水を投与した。4日後に標本(各群N=10)を採取し、好中球が最も深く浸潤している深度を真皮全層に対する%で評価した。

【結果】 正常部との境界より5mm以内では高ナトリウム群が38.0%でコントロール群が9.5%、そこより10mmまでの範囲では64.0%と12.5%でいずれも有意差を認めた。

【考察】 高ナトリウム血症は好中球の浸潤層を深くし、熱傷創を深達化させる。その機序として浸透圧勾配仮説を提唱する。熱傷層は表面(凝固層)で乾燥の影響で浸透圧が最も高く、正常血流の残存する深部(充血層)で血液と同値になっていると考えられる。従って静止層では表層から深層にかけて浸透圧勾配ができていると考えられる。臨界点の浸透圧層で好中球は遊走能が抑制され停滞し、分画層を決定するのではないか。

【文献】 Kuroda T, Harada T, Tsutsumi H and Kobayashi M. Hypernatremia deepens the demarcating borderline of leukocytic infiltration in the burn wound. Burns 1997;23:432-7.

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