一般演題:[気道熱傷]
5月 13日 09:50〜10:30(第1会場) 【 座長 】 井砂 司 (東京女子医科大学形成外科) |
演題番号:A007 | 気管・気管支損傷型気道熱傷における初回気管支鏡所見と呼吸器合併症との関連性 |
井上 卓也、山下 勝之、鶴薗 浩一郎、藤芳 直彦、蒲原 隆、上山 昌史 | |
社会保険中京病院 救急科 | |
【目的】 気道熱傷を喉頭,気管・気管支,肺胞の3部位の損傷の組み合わせとして捉えると,急性期の病態把握および治療法選択上有用であると我々は主張し,気道熱傷急性期の病型分類を提唱してきた.今回はこのうち気管・気管支損傷型気道熱傷につき,気管支鏡検査上の異常所見とその後の呼吸器合併症および予後との関連性について検討した結果,若干の知見が得られたので報告する.
【方法】 対象は病歴より気道熱傷が疑われ,受傷24時間以内に気管支鏡検査を行えた138例のうち,初回検査で重症の気管・気管支損傷と診断された35例とした.気管支鏡検査上,発赤,腫脹,煤付着,喀痰の存在,びらん,蒼白化,出血,粘膜剥離を認めた場合,気管・気管支損傷有りと診断し,重症の診断基準は前4者のいずれかが高度に認められるもの,または後4者のいずれかが認められるものとした.35例において各異常所見が観察された頻度を検討した.また,以上の各異常所見と呼吸器合併症即ち,受傷後14日以内における気管気管支粘膜壊死脱落,気道閉塞,胸部X線写真異常陰影,喀痰からの非常在菌の検出の有無,挿管後から受傷後14日以内における低酸素血症(PaO2/FiO2<200)出現の有無,受傷後14日以内の死亡の有無,および最終転帰(生死)との関連性を検討した. 【結果】 35例における異常所見は「煤付着」が32例(91.4%)と多く,次いで「発赤」14例(40%)の順であった.呼吸器合併症との関連性については,気道閉塞は「腫脹」の所見があったものの41.7%に認められた.低酸素血症は「喀痰」が認められたものの71.4%に,「蒼白化」が認められたものの70%に認められた.気管気管支粘膜壊死脱落,胸部X線写真異常陰影出現,喀痰からの非常在菌検出については各所見間に差は見られなかった.予後との関連性については,受傷後14日以内死亡は「喀痰」が認められたものの42.9%に,「蒼白化」が認められたものの50%に認められた.最終転帰としての死亡は「喀痰」が認められたもの全て,「蒼白化」が認められたものの90%に認められた. 【結論】 気管・気管支損傷型気道熱傷においては,煤付着よりも腫脹,喀痰,蒼白化の所見が呼吸器合併症や予後の予測のために重要であると考えられた.気道熱傷の重症度の診断には煤を除去した粘膜面の観察が必要であり,重症と判断された場合はその後に予測される気道閉塞等の合併症を念頭に置いた呼吸管理を行う必要があると考えられた. |