一般演題:[スキンバンク]
5月 13日 09:00〜09:40(第2会場) 【 座長 】 青山 久 (愛知医科大学形成外科) |
演題番号:A013 | スキンバンクにおける新しいオプションとしての無細胞真皮マトリックス |
高見 佳宏、田中 秀治、和田 貴子、武田 多一、尾郷 賢、島崎 修次 | |
杏林大学医学部・形成外科、救急医学 | |
【目的】 演者らは皮膚全層欠損創の治療として、ヒト同種皮膚を加工した無細胞真皮 マトリックス(Acellular Allogenic Dermal Matrix:ADMと略)を、薄い自家植皮と同時に移植する方法を報告してきた。このADMは生着しうる代用真皮として、採皮すべき自家植皮片を可及的に薄くすることで、同一部位からの反復採皮や採皮痕を限りなく目立たなくすることに寄与しうるものと考えられる。演者らが作成しているADMは凍結保存同種皮膚を加工したものであり、今後ADMの使用が増加する場合、その供給源として新たにスキンバンクに依存する必要性も生じてくる。今回演者らは、ADMが代用真皮としてスキンバンクの一つの選択肢となりうるかどうか、またなるべきかどうかについて検討した。
【方法】 1 ADMの作成・保存法の評価:凍結保存したヒト同種皮膚をDispaseとDetergentで処理しADMを作成した。作成したADMは抗生物質加PBS中に冷蔵保存した。 この工程と費用について通常の皮膚保存法と比較し検討した。2 ADMの有用性の検討:ADMを7例の熱傷症例に試験使用した(杏林大学倫理委承認)。デブリードマン後の熱傷創(皮膚全層欠損創)にADMを貼付し同時に薄めの自家分層植皮でカバーした。最長1年までの観察にて、生着性と整容性を検討した。 【結果】 1 ADMは正常に近い真皮構造を有し速やかな血管新生を示した。ADMと薄い自家植皮は共によく生着した。1例で感染による壊死を生じた。長期間の観察でADMを用いたことによる整容的改善は明らかではなかった。2 ADMの作成は簡便で高度の技術を必要としなかった。費用は皮膚凍結保存にかかるものより安価であった。使用可能な保存期間は明らかではないが、6ヶ月冷蔵したものまでの生着は確認できた。 【結論】 皮膚全層欠損創に薄い自家植皮と同時移植しうるADMは、熱傷手術のひとつのオプションとなりうると考えられた。その作成工程は簡便かつ安価であり、スキンバンクのオプションとして常時利用可能な体制を作ることは価値のあるものと考えられた。しかし今後ADMの保存方法やADMが培養表皮の移植床となりうるかなどについてさらなる臨床的検討が必要である。 |