一般演題:[局所療法1]
5月 13日 09:40〜10:20(第2会場) 【 座長 】 田井 良明 (久留米大学形成外科) |
演題番号:A017 | ヒアルロン酸を基材としたジブチリルサイクリックAMP含有創傷被覆材の開発;動物実験評価 |
黒柳 能光、鈴木 修、石黒 匡史*、佐藤 明男*、内沼 栄樹* | |
北里大学医療衛生学部医療工学科・人工皮膚研究開発センター、医学部形成外科* | |
【目的】 皮膚欠損創の治療として生理活性物質含有軟膏の適用は優れた臨床効果を発現する。一例としてジブチリルサイクリックAMP(アクトシン)含有軟膏が優れた成果をおさめている。一般に軟膏療法は頻繁に包帯交換を必要とするため患者の苦痛ならびに医療従事者の負担が大きい。これらの問題を改善し、さらに治癒を効果的に促進できる新規の創傷被覆材の開発に焦点をおき、その有効性に関して動物実験評価を行った。
【方法】 発酵法で作製された分子量200万のヒアルロン酸の水溶液(1.5%、pH6)に分子間架橋剤(ジエポキシ化合物)を1/5モル濃度の割合で添加し、この溶液から凍結真空乾燥法によりスポンジを作成した。補強材とし中間層にナイロンメッシュを組み込んだ。動物実験1)SDラットの背部全層皮膚欠損創にヒアルロン酸スポンジ(直径3cm)を適用し、これにアクトシン粉末300mgを10mlの注射液に溶解した液を2ml含浸させ、この上にバイオクルーシブ(ポリウレタンフィルム製創傷被覆材)を適用して伸縮性包帯で固定し2週間後に創面を観察した。対照試験は、アクトシン非含有ヒアルロン酸スポンジとバイオクルーシブの併用およびソーブサン(アルギン酸カルシウム塩創傷被覆材)とバイオクルーシブの併用の2群を採用した。動物実験2)SDラットの腹部全層皮膚欠損創(直径3cmで中央に直径5mmの皮膚を温存)に、上述と同様にアクトシン含有ヒアルロン酸スポンジとバイオクルーシブを適用し、1週間後に被覆材を交換して、さらに1週間後(2週目)に創面を観察した。対照試験は、アクトシン非含有ヒアルロン酸スポンジとバイオクルーシブの併用あるいはバイオクルーシブ単独とした。 【結果】 ヒアルロン酸スポンジ創傷被覆材は、ナイロンメッシュが組み込まれているため創周辺との縫合が可能であった。分子間架橋剤との反応によりスポンジ自体は非水溶性となるが、極めて保水能力が高く生理活性物質の水溶液を保持するには最適な物性を示した。バイオクルーシブを併用することにより生理活性物質の水溶液を適度に創面に貯留させることが可能であった。動物実験1)の肉芽組織形成に関してはソーブサンよりもヒアルロン酸スポンジが優れ、さらに、アクトシン含有ヒアルロン酸スポンジが優れていた。動物実験2)の肉芽組織形成および表皮形成に関してはバイオクルーシブよりもヒアルロン酸スポンジが優れ、さらに、アクトシン含有ヒアルロン酸スポンジが優れていた。 【結論】 一般に生理活性物質は、不安定であるため予め被覆材に含浸させておくと、滅菌操作や長期保存の条件に耐えることが困難な場合が多い。それゆえ、本研究で試みたように滅菌したヒアルロン酸スポンジを創面に適用し、アクトシン粉末を使用時に溶解して、この溶液をスポンジに含浸させて適用する手法は、実用的なものと判断できる。ヒアルロン酸スポンジは、それ自身優れた創傷治癒能力を示した。しかも保水能力が優れているため生理活性物質の水溶液を保持するのに適していた。その上にポリウレタンフィルム製の被覆材を併用することにより、さらに優れた創傷治癒効果が発現できた。 |