一般演題:[人工真皮・人工皮膚1]
5月 13日 13:30〜14:10(第2会場) 【 座長 】 根岸 直樹 (東京女子医科大学形成外科) |
演題番号:A030 | 広範囲熱傷症例における真皮欠損用グラフトの有用性 |
松村 一*,**、Heimbach DM**、松下 博明*、田中 祝*、菅又 章*、渡辺 克益* | |
東京医科大学形成外科*、University of Wasington Burn Center** | |
【緒言】 広範囲熱傷の治療においては早期の創閉鎖が不可欠なことは言うまでもない。この際、一番問題となるのは、自家分層植皮片の採皮部の不足である。この採皮部の不足を補うため、BiobrenTMなどの人工物が用いられることもあるが、現時点では、同種皮膚移植を用いるのが、最も有効であるとされている。しかしながら、同種移植においても、その供給に問題があること、ウイルス感染のリスクが常に存在すること、創閉鎖は一時的で、最終的には薄い分層植皮で被覆しなくてはならず、機能整容に問題を残すことなどの欠点を有する。 IntegraTMは、真皮成分としての人工コラーゲンシートに一時的代用表皮としてのシリコンシートを組み合わせた二層性人工皮膚-真皮欠損用グラフトである。自家表皮移植・超薄分層植皮にて、その人工真皮上を被覆することで、機能・整容ともに優れた創閉鎖が可能とされている。今回、この真皮欠損用グラフトを広範熱傷症例に使用した機会を得たので、その臨床成績について報告する。
【対象・方法】 University of Washington Burn Centerにて1996.7-1997.6に経験したIntegraTMを使用した広範囲熱傷17例を検討した。これらにおいて、人工皮膚・超薄分層植皮の生着、合併症、早期の機能整容的予後を検討した。 【結果】 10-54%(平均33.2%)TBSAの広範囲熱傷症例に対して二層性人工皮膚を用いて創閉鎖を行った。二層性人工皮膚を移植後、自家分層植皮前に1例、自家分層移植後1週間で1例が原疾患により死亡した。二層性人工皮膚の生着は14例で良好に生着し、うち9例は1回の自家分層植皮にて創閉鎖した。合併症は自家分層植皮時の創感染が主体であった。感染のために、同種移植を併用して創閉鎖した症例は1例のみであった。6ケ月以上観察可能であった症例においては、機能的は問題はなく、植皮部の外観、質感とも良好であった。 【結語】 以上より、広範囲熱傷に対して、二層性人工皮膚を用いた治療は、整容、機面を含めて有用な治療法と考えられた。さらに、同種皮膚移植の必要症例を大きく制限できる可能性があると考えられた。 |