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一般演題:[人工真皮・人工皮膚2]   5月 13日 14:10〜15:00(第2会場)
【 座長 】 鈴木 茂彦  (京都大学形成外科)

演題番号:A034 自家パッチグラフトに対する人工真皮の被覆効果に関する実験的検討
吉本 剛、小西 淳、植松 健、早川 浩一、大崎 健一、川井 真*、勝見 敦*、山本 保博*
テルモ(株)研究開発センター、日本医科大学救急医学教室 高度救命救急センター*
【目的】 同種皮膚移植は、恵皮部の限られた広範囲熱傷患者において非常に有用である。また、自家皮膚との混合移植術においては、同種真皮成分が自家表皮の形成を促進すると報告されている。本邦でもスキンバンクの発足に伴い同種皮膚の供給システムが整備されたが、その供給量は依然として十分とはいえない。
 共同演者の川井らは、広範囲熱傷患者に対し、同種皮膚の供給が困難な局面において、自家皮膚と、人工真皮の“混合移植”を試み良好な成績をあげている。具体的には、早期切除後の広範囲熱傷創に自家メッシュグラフトまたはパッチグラフトを移植し、創面上を人工真皮で被覆したところ、自家植皮部の直上の人工皮膚は、融解・脱落するものの自家植皮部分よりの良好な表皮伸展効果を認めた(第6回日本熱傷学会関東地方会)。本検討では、これらの現象を実験的に再現し、組織学的に検討することとした。

【方法】 SD系雌ラットを用い、ネンブタール麻酔下で背部を剃毛後、中央付近に2×2cm程度の薄目分層皮膚をドラム式デルマトームにて採取した。上記採皮部を含めた背面に5×5cmの全層皮膚欠損創を作製し、創面に分層皮膚を小片としたパッチを等間隔になるよう移植した。人工真皮はテルダーミスを用いた。5×5cmにカットし1.5倍のメッシュエキスパンダーにかけスリット状とした後、拡張せずにパッチ片を移植した創面へ貼付した。対照として、シリコーン膜のみを同様にスリット状として、創面へ貼付した。人工真皮貼付群及び対照群共に経時的に剖検し、組織学的検討を行った。

【結果・結論】 人工真皮を貼付した群では、パッチ片で被覆できなかった部分も早期に真皮様組織化し、良好な母床となっていたのに対し対照群では、単なる肉芽組織しか認められなかった。人工真皮は、従来の真皮成分の補填効果のみならず、混合植皮時における有用性が示唆された。

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