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一般演題:[人工真皮・人工皮膚2]   5月 13日 14:10〜15:00(第2会場)
【 座長 】 鈴木 茂彦  (京都大学形成外科)

演題番号:A035 冷凍保存同種培養真皮と冷凍保存同種皮膚の肉芽組織形成促進効果に関する比較検討:ウサギを用いた動物実験評価
黒柳 能光、小早川 いづみ、石黒 匡史*、佐藤 明男*、内沼 栄樹*
北里大学医療衛生学部医療工学科・人工皮膚研究開発センター、医学部形成外科*
【目的】 広範囲重症熱傷患者の治療において自家植皮術までの繋ぎとして冷凍保存した同種皮膚の適用は救命に大きく貢献することからスキンバンクの活動が重要視されている。一方、同種皮膚の入手量に限界があることから、代替物の開発も重要である。本研究では、ウサギの線維芽細胞を用いて作成した培養真皮とウサギの全層皮膚を一定期間冷凍保存し、それぞれを解凍し全層皮膚欠損創に適用して肉芽組織形成過程を比較検討した。

【方法】 牛皮由来のアテロコラーゲンから構成したスポンジにウサギの線維芽細胞を播種して培養することにより培養真皮を作成した。スポンジの中間層には補強材としてナイロンメッシュ(300メッシュ)が組み込まれている。これを冷凍保存液に入れー152℃の冷凍庫内で保存した。ウサギの全層皮膚も同様な条件で冷凍保存した。3カ月間冷凍保存した後、解凍して動物実験に使用した。ウサギの背部に直径7cmの円を描き全層皮膚を切除した。切除後、皮膚欠損創の直径は9cmと広がった。この皮膚欠損創に解凍した同種培養真皮を適用し創周辺と縫合し、その上にバイオクルーシブ(ポリウレタンフィルム製創傷被覆材)を適用し、さらに直径9cmの滅菌パットを載せて、創周辺と縫合固定し伸縮性包帯で圧迫固定した。一方、解凍した同種皮膚も皮膚欠損創に適用して同様に圧迫固定した。伸縮性包帯による固定の際に外力による創の変形を防止するために滅菌パットの適用は重要である。1週後に、包帯交換を行い創面を観察して、再度、新しい同種培養真皮および同種皮膚を適用し、さらに2週後(3週目)に創面を観察した。

【結果】 コラーゲンスポンジ内にはナイロンメッシュが組み込まれているため移植操作が容易であった。特に創周辺との縫合固定が可能であった。3ヵ月間冷凍保存した培養真皮に含まれている線維芽細胞の生存率は約80%であった。同種皮膚を適用した場合、1週目では肉芽組織の形成はみられず、同種皮膚の融解が部分的に観察された。3週目では顕著な肉芽組織が形成されたが、同種皮膚の融解が著しく、融解物が肉芽組織内に取り込まれた状態となり良好な肉芽組織ではなかった。これに対して、同種培養真皮を適用した場合は、3週目において良好な肉芽組織が形成され、創周辺からの表皮化も観察された。新生組織がナイロンメッシュに食い込むこともなく容易に創面から除去できた。

【結論】 同種培養真皮は大量生産が可能であり、冷凍保存することにより必要時に即使用できる。ウサギの背部広範囲全層皮膚欠損創に冷凍保存した同種培養真皮を適用した場合は、3週目で良好な肉芽組織が形成され創周辺からの表皮化も顕著であった。動物実験系では冷凍保存同種皮膚よりも優れた被覆効果を示した。既に、われわれはコラーゲンスポンジを基材とした同種培養真皮の臨床試験を展開している(北里大学医学部病院倫理委員会承認)。本研究で開発したものは、解凍後の冷凍保存液を除去するための洗浄操作性、輸送および移植操作性を改良するためにコラーゲンスポンジにナイロンメッシュを組み込んだ。冷凍保存同種培養真皮は、冷凍保存同種皮膚の代替物として十分期待できる。

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