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一般演題:[人工真皮・人工皮膚2]   5月 13日 14:10〜15:00(第2会場)
【 座長 】 鈴木 茂彦  (京都大学形成外科)

演題番号:A036 自家植皮との同時移植を目的とした人工真皮の改良
植松 健、早川 浩一、吉本 剛、小西 淳、片倉 健男、中村 雄幸*
テルモ(株)研究開発センター、聖隷浜松病院形成外科*
【目的】 近年熱傷,外傷等により生じた深い皮膚欠損創に対し、人工真皮と自家分層植皮の併用による治療を行うことは、一般的治療法の一手法として認識されつつある。現状では植皮は人工真皮貼付後2週間程度経過し、人工真皮が植皮の良好な母床となった時点で行われるのが一般的である。これは広範囲熱傷等で自家植皮のためのリソースが極端に不足している場合の、時間的猶予として有利である。しかし自家植皮のリソースが豊富にある場合には、生着さえ確実ならば、人工真皮と自家植皮を同時移植した方が、単回手術かつ短期入院で治療が完了することになり、QOL上も医療経済性上も意義深いと考えられる。我々はテルダーミス(TD)の形状に改良を加え、動物で同時移植へのトライアルを行い、興味深い知見を得たので報告する。

【方法】 SD系雌性ラットを用い、ペントバルビタール麻酔下、背部を広範囲に剃毛し、右側より10/1000inchの分層植皮片を採取した後、左側にpanniculus carnosusを温存した2×2cmの皮膚全層欠損創を作製した。創面には2mm厚に調製したTDをそのまま、あるいは2mm径のトレパンにて36個の連通孔を作製した後に貼付し、その上に同時に植皮片を移植して周囲16ヶ所を縫合固定した。その後ドレッシング交換(術後2週間まではwet dressingを施行)及び肉眼観察を定期的に行い、途中一部ずつ屠殺して組織学的検討を行った。

【結果・結論】 TDを薄型化することにより、連通孔の有無に関わらず植皮片は全例生着した。しかし連通孔作製群の方が、創収縮が殆ど見られないなど、肉眼的に良好で、かつ組織学的にも極めて正常に近い組織が得られることが判明した。これは連通孔の作製により、植皮片への栄養供給などの点で、より植皮片の生着に有利な状況を作り出せた結果と考えられる。また、早い時期からTDと植皮片を接触させたことによって、植皮片に含まれる付属器等の持つ強い修復活性をTDの自己組織化に生かすことができたことが、正常に近い組織を得る要因の一つである可能性もあると思われた。

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