一般演題:[感染]
5月 13日 16:00〜17:00(第2会場) 【 座長 】 吉田 哲憲 (市立札幌病院形成外科) |
演題番号:A042 | 治療経過中ARDSを呈した熱傷患者の臨床的検討 |
鈴木 卓、安瀬 正紀、山本 康、荻野 浩希、森村 尚登*、杉山 貢* | |
横浜市立大学熱傷センター、横浜市立大学救命救急センター* | |
【目的】 一般にARDSは死亡率が高く呼吸管理に難渋することが多い。今回我々は熱傷患者におけるARDS発症の現状とステロイド使用について検討した。
【方法】 1990年1月から1997年12月末までの8年間での全入院患者335名のうち、ARDSの診断基準(AECC,1994)を満した全10名について年齢、熱傷面積、熱傷部位、ARDS発症時期、発症原因、ステロイドの使用の有無についてretrospectiveに統計学的検討を行った。 【結果】 発症率は3%で、平均年齢が50.5歳、TBSA、BI、PBIのそれぞれの平均値は55.4%、51.7、105.9であった。ARDSの発症時期は受傷後平均で23.4日目であり16日目から31日目の間に8例が集中していた。ARDSの原因としては肺炎が8例で、残りの2例は創感染からの敗血症と考えられた。熱傷部位としては全ての症例で背部・臀部熱傷がみられた。一方、気道熱傷合併例は6例であった。急性期にステロイドのパルス療法を施行した症例は6例あり、ステロイド使用により平均でP/F ratioが113.9から218.2、lung injury scoreが2.9から2.0へと使用後5日目をピークとした有意な改善をみた。しかし、予後改善効果は認められず、生存例はステロイドの使用群・未使用群それぞれ1名ずつであり、全体の救命率は20%であった。死亡原因としては8例とも敗血症で、7例までがMODSの状態であった。 【結論】 熱傷患者のARDS発症原因の多くが肺炎・敗血症であり、感染管理が不充分な症例はARDSの準備状態にあると考えられる。現在ARDSに対するステロイド使用については未だ議論があり、否定的な報告も多い。今回の検討では一時的ながら有意な酸素化能改善がみとめられた。また、当センターの最近の2例でパルス療法に引き続きステロイドの長期大量投与を行ったところ1名の救命を得ており、予後改善を含めたステロイド使用の是非は今後の検討課題である。 |