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一般演題:[輸液・栄養・代謝]   5月 14日 08:40〜09:20(第1会場)
【 座長 】 鈴木 幸一郎  (川崎医科大学救急医学)

演題番号:A043 高齢者熱傷の栄養管理 −個別栄養管理の効果の検討−
宮下 佳子、門馬 靖子、宮本 加奈子、加藤 チイ、青木 弥生、山田 直人*
北里大学病院栄養部、同救命救急センター部*
【目的】 高齢者熱傷患者の個別栄養管理の効果を検討した。

【対象】 平成6年6月から平成9年5月まで当院熱傷センターに入室した35例のうち、食事中心の栄養管理を行った8例。

【方法】 投与目標はCurreriの式または間接熱測定で安静時熱量代謝を測定し、算出した。70歳以上3例及び62歳で既往に脳梗塞があり咀嚼、燕下傷害を伴った1例の計4例(A群)と、50歳以下の4例(B群)に分けた。2群間で入室より3週間の経口摂取栄養量(エネルギー、蛋白質)、経口摂取に影響する症状(発熱、嘔気、食思不振、傾眠)、食事調整の内容(嗜好、水分補給、硬軟度への対応)、ICU在室日数、入院期間、Burn Index(BI)について比較検討した。

【結果】 1)BIはA群10.8±4.8、B群16.2±4.6とB群がやや高い傾向であったものの有意差は認められなかった。2)3週間の食事摂取エネルギ―量は基礎代謝量(Harris-Benedictの式)を100に対しA群103±15、B群143±19と両群に有意差(p<0.001)が認められたが、経腸栄養剤や特殊食品での補正でA群150±30となり、B群との差は無くなった。摂取蛋白質についても、A群は補正前0.98±0.25(g/kg/day)、B群1.40±0.27(g/kg/day)と両群間に有意差(p<0.007)が認められたが、補正後1.20±0.31(g/kg/day)とB群との差はなくなった。3)症状は、発熱は両群とも2例に見られ、口渇はA群で3例、B群で2例、傾眠はA群のみ全例に見られた。食思不振、嘔気はなかった。4)食事調整は、A群では嗜好対応を3例、水分補給を促す調整を1例、咀嚼機能にあった硬軟度の変更を1例行った。B群は食事量の変更を1例行った。5)ICU在室日数はA群25.5±9.1日、B群は13.5±7.0日、入院期間はA群121.8±75.4日、B群49.0±11.2日で有意差はなく死亡例はなかった。

【結論】 BIが同程度で早期から食事中心にした栄養管理例では、高齢者群の食事摂取不良が顕著であった。またその原因として全例に傾眠傾向が見られ、その他嗜好、咀嚼上の問題があげられたが、経腸栄養剤や特殊食品等による質や量的な補正により、栄養摂取量に改善が見られ、個別栄養管理の効果が認められた。ICU在室日数、入院期間に差はなく予後は良好であった。

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