一般演題:[植皮・手術]
5月 14日 08:40〜09:40(第2会場) 【 座長 】 内沼 栄樹 (北里大学形成外科) |
演題番号:A047 | 重傷熱傷救命率の向上による形成外科的治療の変化とその問題点 |
竹本 剛司、久徳 茂雄、土井 秀明、館 良昭、辻田 美樹、小川 豊、松原 峰生*、切通 雅也*、田中 孝也*、北澤 康秀** | |
関西医科大学形成外科、同救命救急センター*、岸和田市民病院救命救急センター** | |
近年、広範囲重傷熱傷に対する早期手術の有用性が認められ、広く普及しつつある。当院では1994年より熱傷医療チームを組織し、形成外科、救命救急センター、関連各科の連携のもと、綿密な周術期管理下に広範囲重傷熱傷に対し積極的に早期手術を行ってきた。昨年の本学会でも北澤らが報告したが、当施設における広範囲重傷熱傷の救命率は早期植皮術を行うようになってから格段の改善をみている(熱傷医療チーム組織前・後の広範囲熱傷各29例ずつの死亡率は41%から17%に有意差をもって減少した, p<0.05)。しかし、救命率の改善は再建外科医にとっては、多部位にわたる再建部位の多様化と採皮部位・方法の制限や入院の長期化に伴う様々な問題などより困難な状況下での機能的・整容的再建を強いられることになる。つまり、社会復帰までの形成外科的治療難渋例がより多く経験されるようになった。 1994年10月から1997年12月までに当院熱傷医療チームで経験した重傷熱傷は69例で、その内訳は男性:女性=41名:28名、平均年齢34.7歳、受傷原因は火炎熱傷30例、熱湯によるもの17例、その他22例、平均熱傷面積31.9%であった。われわれは1994年より、skin bankによる同種移植(4例)あるいは自家移植を用いた早期植皮を初期輸液による循環動態の安定した受傷後36〜48時間後に、中等度以上の気道熱傷がなく他に重篤な合併症を有しない予後熱傷指数60〜100の症例に対して、積極的に行ってきた。形成外科的に治療に難渋した代表的症例を供覧する。 【症例1】 80歳、男性。火災による火炎熱傷。65%TBSA (PBI=127)。48時間後にskin bankによる同種皮膚による早期植皮術を施行した。Allograftは6週目に脱落し、自家移植を追加した。術後、痴呆化が進行した。 【症例2】 44歳、女性。自殺企図による火炎熱傷。90%TBSA (PBI=134)。他施設で6回にわたるpatch graftを受けている。顔面深達熱傷と両手指欠損であり、ADLは著しく損なわれている。恵皮部は殆どない。 【症例3】 30歳、女性。フィリピン人。灯油引火による火炎熱傷。60%TBSA (PBI=90)。48時間後に自家植皮による約20%の熱傷創被覆を行った。その後、1週後、1ヶ月後に自家植皮を追加した。顔面頸部の拘縮が強度であり、採皮部位の選択に工夫を要した。 【症例4】 66歳、女性。火災による火炎熱傷。40%TBSA (PBI=91)。48時間後に自家植皮による約20%の熱傷創被覆を行った。眼球熱傷を伴う深達顔面熱傷に対し、眼球を温存しつつ、眼瞼顔面再建を行った。難治性の呼吸器感染と腎膿瘍のために、手術時期が遅れた。 |