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一般演題:[植皮・手術]   5月 14日 08:40〜09:40(第2会場)
【 座長 】 内沼 栄樹  (北里大学形成外科)

演題番号:A050 両側前腕橈骨動脈皮弁を用いて修復しえた熱傷後頭蓋部皮膚全欠損の一例
三野 浩也、稲田 有史、中村 達也、村尾 佳則、宮本 誠司
奈良県立医科大学救急医学
  今回我々は、頭部III度熱傷により生じた頭蓋部皮膚全欠損に対し、二度にわたり遊離血管柄付き組織移植術を施行し、修復し得たので報告する。

【症例】 84歳、男性。

【既往歴・家族歴】 特記すべきことなし。

【現病歴】 平成8年12月9日、ガスコンロの火が衣服に燃え移り、頭頸部、背部、両上肢に計30%の熱傷を受傷した。

【経過】 気道熱傷の合併もあり、経鼻気管内挿管のうえ集中治療室にて人工呼吸管理及び、輸液療法を開始した。全身状態が比較的安定した第10病日、両手背・頭部・頸部の壊死組織切除を行ったところ、頭部では皮膚の全欠損を認めたため、人工真皮(以下PVF)を貼付、他の部位は遊離分層植皮をおこなった。その後第16病日及び第30病日に、再度顔面・頸部に対して遊離分層植皮を施行し、頭部のPVFの交換を行った。第45病日には人工呼吸器より離脱。第52病日には一般病棟へ転棟となった。さらに頭部皮膚欠損に対し、第63病日に左側より前腕橈骨動脈付き筋膜弁移植及び植皮術を施行。第88病日には右側より前腕橈骨動脈付き皮弁移植術を施行した。これにより整容的にも満足な結果を得ることができた。

【結論】 頭頸部再建に前腕橈骨皮弁はよく用いられる方法であるが、その大きさは限られ、特に筋膜弁では頭部全欠損に対応しきれない。今回、両側の橈骨動脈を犠牲にして、結果的には修復し得たものの、高齢者の頭蓋部皮膚全欠損に対しての一期的治療は困難を極めると考えられた。

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