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一般演題:[症例報告]   5月 14日 09:40〜10:30(第2会場)
【 座長 】 木所 昭夫  (順天堂大学附属浦安病院外科)

演題番号:A055 両下肢の鋼線懸垂が局所管理に有効であった高度肥満の広範囲熱傷の一例
中野 実、加藤 清司、横田 和典*、提箸 延幸*
前橋赤十字病院 集中治療室・救急部、形成外科*
  精神遅滞を合併する高度肥満の熱傷患者において、両下肢の鋼線懸垂が局所管理に有効であった症例を経験したので報告する。

【症例】 症例は16歳の男性で、身長約170cm、体重130kgと高度の肥満であった。また、精神遅滞により精神発育状態は3〜4歳児程度であり、てんかんも合併しており内服治療中であった。平成7年4月2日夕、誤って追い炊き中の風呂に転落して、上腹部・背部・臀部・両大腿部前後面にかけて約40%の面積に、SDBからDDBの熱傷を受傷した。入院翌日より流動ベットで管理を行ったが、巨体のために四肢の一部はベットよりはみ出し、また流動ベットの流動もベット辺縁部では効果的でなかった。また、4月3日より経口摂取を開始し4月5日に排便がみられたが、高体重と精神遅滞による意思の疎通の困難から、排便処理に難渋した。そこで、4月11日にはデブリドメント術を行い人工皮膚で被覆したのみであったが、4月18日には上背部および前胸部より採皮し上腹部・臀部に植皮術を施行するとともに、排便処理の簡便化と植皮部の汚染予防および安静を目的に、両下肢に鋼線を刺入して、術後より両下肢の鋼線懸垂を行った。4月24日植皮部の生着を確認後、鋼線を抜去して鋼線懸垂を中止した。5月11日に再度の植皮術を行い、リハビリテーションの後、7月6日退院となった。

【考察】 小児や陰部の熱傷症例に下肢の鋼線懸垂は施行されるが、高度肥満の症例にも有効な手段であった。しかし、高度肥満の症例ゆえの問題点もあり、その点に注意を要して施行すべきであると考えられた。

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