一般演題:[統計・疫学1]
5月 14日 10:30〜11:10(第2会場) 【 座長 】 樋口 良平 (都立府中病院形成外科) |
演題番号:A059 | 国立病院東京災害医療センターにおける熱傷統計と災害発生時の検討 |
下田 勝巳、井砂 司、山路 仁、森田 尚樹、野崎 幹弘* | |
国立病院東京災害医療センター 形成外科、東京女子医大 形成外科* | |
立川に国立病院東京災害医療センターが開院し2年6カ月が経過した。当院は平成7年7月1日、旧米軍立川基地跡に国立立川病院と国立王子病院の統合により建設開院された。その目的は東日本における広域災害医療の基幹施設として、平常時には高度な救急医療および高度の総合診療を行うと共に、災害医療を中心とした臨床研究、教育、研修等の機能を兼ね備えた施設として開院された。
【目的・方法】 今回、開院後、約2年間に来院し、治療を行った熱傷患者のデータに関し統計処理を行い、その地域特異性を明らかにした。 【結果】 東京都熱傷救急連絡協議会等の報告と同様、1―3月期に最も患者数が多い。男女比では、ほぼ一貫して男性の方が女性に比べ多かった。受傷原因では、全体にscald burnが多い。次いで 、flame burn、contact burnと続く。東京都熱傷救急連絡協議会等の報告では最も多いのがflame burnであり、contact burnは少なかった。受傷原因を年齢別に検討しても、当院では、どの年齢層においてもcontact burnが多く見られ、これが当院の特徴と考えられた。 続いて、当院に来院した熱傷患者の受傷地域を府中、立川、八王子、青梅地区と4分割し、それぞれの患者数を比較したところ、各々、11%、57%、12%、16%の割合であった。立川以西の患者が全体の約85%と大部分を占めていた。以上の結果より、国立病院東京災害医療センターで取り扱う重症熱傷患者発生地域は、立川市を中心として立川以西の患者が主であることが明確となった。 【考察】 広域災害発生時においては、平時とは全く違った搬送経路をとる可能性もあると考えられるが、少なくとも、立川、八王子、青梅地区から多数の熱傷患者が当院に搬送されることが予想される。そこで事前に、広域災害時に当院に搬送されるであろう熱傷患者数を予測し、それを想定した準備を行うことが必要であると思われた。現在、関東大震災級の大地震が発生した場合、多摩地域の予想患者数及びその内の熱傷患者数に関し、東京都はシュミレーションを行っている。そこで今回、これに我々のデータを加え、広域災害発生時における多摩地域で発生する熱傷患者数、及び当院への搬送患者数等のシュミレーションを行ってみたところ、若干の知見を得たので報告する。 |