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一般演題:[小児熱傷]   5月 14日 14:00〜14:40(第2会場)
【 座長 】 阿部 清秀  (旭川赤十字病院形成外科)

演題番号:A067 自己血輸血を行った小児熱傷患者の一例
上野 孝、菅又 章*、渡辺 克益*
東京医科大学八王子医療センター形成外科、東京医科大学病院形成外科*
【はじめに】 同種血輸血には免疫的感作、輸血感染症、GVHDなどのリスクがあり、血液に対する検査や放射線照射によっても完全に避けられるものではない。そこで待期手術の場合は自己血輸血が推奨され、整形外科や循環器外科領域ではroutineに行われていることも多い。しかし、感染創を伴う熱傷治療の現場では今日まで積極的に取り入れられてこなかった。今回、小児熱傷患者に自己血輸血を行い、良好な経過をとった症例を経験したので報告する。

【症例】 7歳、女児、体重20kg。II度〜III度12%のflame burn 症例。受傷後32日目にデブリードマン、植皮術を施行。術前、鉄剤を投与し、自己血貯血を行った。貯血を行う際には、vital sign・熱型・Hb・CRP値などを参考にした。また輸血バッグの性状を観察し細菌汚染の有無を確認するとともに、貯血採血針から得られた血液の培養・細菌検査を施行し、輸血することが可能か否かを検討した。術中、術後に合計210mlの自己血輸血を行い、同種血輸血をすることなく、周術期にHb10mg/dl以上を保つことができた。

【考察】 広範囲熱傷や手背熱傷などでは早期手術が一般化しているが、II度・III度の混在した中等度熱傷では、保存的療法を一定期間行った後に晩期手術として待期的になる場合もある。輸血の可能性のある待期手術では自己血輸血が考慮され得るが、熱傷患者の場合は自己血輸血を行う際のいくつかの必要条件のうち、(1)安全に貯血できること、(2)細菌汚染を防ぐこと、の2点に特に問題があると考えられる。これらの問題点を解決するために十分な配慮を行えば、熱傷患者に貯血式自己血輸血を用いてもトラブルなく良好な経過をたどることを今回の症例で示した。つまり熱傷患者に対しても自己血輸血は有用な治療法の一つとなる可能性があり、特に小児では同種血輸血に伴うリスクの回避が望まれるため、しかるべき症例に対しては本法を試みる必要があると考える。

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