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一般演題:[小児熱傷]   5月 14日 14:00〜14:40(第2会場)
【 座長 】 阿部 清秀  (旭川赤十字病院形成外科)

演題番号:A070 金沢医科大学熱傷センターにおける小児熱傷例の検討 −最近10年間の統計的観察−
白石 尚基、畷 宗久、島田 賢一、石倉 直敬、川上 重彦
金沢医科大学形成外科
【目的】 近年の小児熱傷における病態,治療の動向を検討する目的から,金沢医科大学熱傷センターにおいて入院加療がなされた小児熱傷例について統計的観察を行い,開設前10年間の小児熱傷例(112例)と比較検討を行った

【対象および方法】 熱傷センターが開設された1987年3月から1997年12月までの約10年間における12歳以下の小児熱傷128例(男児78例,女児50例)を対象とした。これらの症例において受傷原因,受傷年齢,受傷範囲,受傷部位,年度・月別症例数,初期輸液法,手術施行例における手術時期・手術法,予後について統計的観察を行った。さらにこれらの観察事項について,開設前10年間における小児熱傷例を対象群として比較検討を行った。

【結果】 受傷原因としては,高温液体群が102例(80%),受傷年齢では,3歳以下が67%とそれぞれ多数を占めた。受傷面積は20%BSA以下が76%と軽症〜中等症が多く,その受傷部位には偏った傾向は認めなかった。年度・月別症例数をみると,年度や月別による著しい増減傾向は認めなかった。これらの結果は対象群とほぼ同様であった。初期輸液法では,対象群と同様,Baxter法に準じた投与法によってショック離脱がはかられていた。手術施行例は41例(32%)と,対象群の施行例88例(79%)に比して半減していた。これは深達性熱傷が対象群と比較して少数であったということではなく,深達性熱傷例に対しても保存的治療を適応される場合が少なくなかったためであった。手術時期では,受傷後日以内の早期施行例が近年減少していた。また手術法では,対象群で33例(30%)にみられた含皮下血管網植皮術施行例は1例しかなく,殆どの例に分層植皮術が施行されていた。死亡例は2例であった。

【考察】 今回の検討において対象群と明らかな相違を認めたのは,手術治療に関する事項であった。すなわち,近年においては比較的少範囲の深達性熱傷では手術療法より保存的治療が第一選択として適応され,手術施行例も早期手術例が減少し,手術法では分層植皮術が用いられていた。これら治療法が変遷した最も大きな原因は,瘢痕に対する再建手術として,tissue expander法が確立されたためと考えられた。植皮術による一期的再建より,tissue expander法による二期的再建の方が明らかに整容的に優れていることから,少範囲受傷例が多い小児熱傷では,将来の二期的再建を考慮した保存的治療が適応されたものと考えられた。

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